ピョンの無事を確認したガンバ達は、作戦に移ることにした。まず、ガンバとイカサマが獲物であった雉を盗み出した。そして、ボーボと忠太が
車の下へ潜り込む。もっとも雉は、彼らの身体に余る大きさだけに、持ち出す時にガサガサと大きな音を立ててしまう。だが、これが彼らの作戦
だった。物音に気づいた猟犬達が吠え立て始めた。その声に、うたた寝をしていたハンターが目を覚ますと、何と獲物の雉が草むらの中に消えて
いくではないか。
「アッ…!」
ハンターは、車のドアを開け銃を手にすると表に出た。そのすきに忠太とボーボは、車の中に忍び込む。
「おーい、坊や…どこにいるんだよー」
なるべく大きな声を立てないように、それでも必死にピョンを探すふたり。すると、片隅でゴトゴト動くバスケットが…ふたりは、そこに近づくと
ほっと一安心。が、表では耳をつんざく銃声が…!
「ヒッ…!」
「ヒエッ…!」
ガンバとイカサマは頭や足元を掠める銃弾に、戦々恐々しながらも必死に雉を持ち去り何とか、その場を逃げ切った。
「……」
その一方、車に忍び込んだふたりは、バスケットを縛っていたベルトを齧り切ってふたを開けた。そして、中で脅えていたピョンを発見。
「あー、ありがとう。お兄ちゃん達が助けてくれると思ってたよ」
「さ、早く!」
彼らは車から脱出し、森の中へ消えていった。その頃、ガンバとイカサマはある程度離れた場所まで来ると、イカサマが紐の付いたサイコロを
木の枝に引っかけ、それを引っ張って枝を曲げた。
「早くしろよ、早く…」
そこへ失敬した雉をガンバが乗せる。タイミングを見てイカサマが手を放すと、雉は高く跳ね上げられた。それを見て、ハンターはすかさず
打ち落とす。そして、今にも飛び出さんばかりに吠え立てていた猟犬達を放った。森の中で、ガンバ達と忠太達が合流するが背後から猟犬達が
迫ってくる!
「遅れるなよ、忠太!あの犬達が追っかけてくるぜ!」
やや遅れ気味の忠太を、ガンバが叱咤する。そして、彼らの背後から猟犬たちがグングン迫ってくる…!
「あうっ…」
忠太は、途中で蔓に足を引っかけて転んでしまう。慌ててその場から逃げようとして、蔓を無理矢理ちぎったがその時、蜂の巣を引っかけて
落としてしまった。そこへ、猟犬達が突っ込んだからたまらない。彼らは、怒った蜂の大群に襲われて悲鳴を上げて退散して行った。
「忠太、でかしたぜ!」
怪我の功名から、何とか猟犬達を追い払うことができホッとしていた忠太に、ガンバがからかい半分に声をかけ、忠太も思わず照れ笑い。
夜が明けて…
「弱っちゃったなあ…分かってくれよ…」
「いやだ、いやだ、いやだったら、いやだーっ!」
ガンバ達に付いていくと言って泣いて聞かないピョンを前に、どう説得するか当惑していたガンバだったが…
「なあ、その代わりノロイをやっつけたら帰りに寄ってくからさあ…な?」
すると、ピョンは泣き止んで
「ええ、ホント?」
「うん、きっとだとも。きっと!」
「き…きっとだよ。約束だよ!」
何とか機嫌を直したピョンに、ガンバ達は別れを告げた。
「きっとだよーっ!ガンバのお兄ちゃーん!」
「ああ、きっとなーっ!」
遠ざかる彼らに、声をあげて手を振るピョンにガンバも足を止め、振り返って答えた。いよいよ、目指すは目の前にそびえるカラス岳。
その山頂で、ヨイショ達が待っているはずだ。
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