第14話 襲いかかる猟犬の群れ【3】

「あの坊やのおかげて、すっかり遅くなっちまったぜ…」
「ヨイショ達、ひょっとしたらカラス岳を越えてしまったかも知れねぇぜ?」
と、突然背後から銃声が!
「あ、あれ見てよ!」
ガンバ達が後ろを見ると…
「お兄ちゃんたちーっ、連れてってよーっ!」
ピョンが後を追って駈けてきている。しかも、その後ろからさっきの猟犬たちが迫って来ていた!慌てて、ピョンのもとに走るガンバ達。
彼らは、猟犬に噛み付いて必死に攻撃するが、力では敵わず振り落とされてしまう。しかも、今度は猟犬の群れに加えてハンターの銃弾が
襲ってくる!とにかく、猟犬から逃れようとボーボがとっさに穴を掘った。ハンターの銃弾は、ガンバ達やピョンを容赦なく襲う。そこへ…
「早く、早く!」
ボーボが、掘った穴にガンバ達を誘い込んだ。しかし、ガンバ達にはちょうどいい大きさの穴でもピョンには狭すぎた。必死に頭を穴の中に
押し込もうとするピョンの足元に、ハンターの銃弾が!ピョンは驚いて、そこから逃げてしまう。
「あっ、おいピョン…!」
ガンバが、追いかけようとするが銃弾には敵わない。彼らにはなす術なく、ピョンは猟犬に囲まれ、ただ震え上がるだけ。そして、ハンターは
ピョンの耳を掴むと泣き叫ぶピョンを連れ去ってしまった。ガンバ達は、危険が去ったのを確認して出てきた。
「チッ…ツイてねぇぜ!」
イカサマが、サイコロをパッと握り直しながら呟いた。
「さあ、行こうぜ!」
ガンバはどこかへ向かおうとする。
「行くって…どっちへ?」
イカサマの問いにガンバは
「サイコロを振って決めるまでもないさ!」
と、駈け出していく。
「ってえことでやんすかね。へへへ…」
イカサマ達も、ガンバの後に続いた。

その夜…
ハンターは、大型の車の横でたき火を焚いて休んでいた。その近くまで来ていたガンバ達のところへ、イカサマが帰ってきた。
「おい、どうだった?」
「へへ、安心しねぇ。まだ生きてるぜ、坊やは車の中よ」
「そうか!ようし、待ってろよピョン!」
ピョンの無事を確認したガンバ達は、作戦に移ることにした。まず、ガンバとイカサマが獲物であった雉を盗み出した。そして、ボーボと忠太が
車の下へ潜り込む。もっとも雉は、彼らの身体に余る大きさだけに、持ち出す時にガサガサと大きな音を立ててしまう。だが、これが彼らの作戦
だった。物音に気づいた猟犬達が吠え立て始めた。その声に、うたた寝をしていたハンターが目を覚ますと、何と獲物の雉が草むらの中に消えて
いくではないか。
「アッ…!」
ハンターは、車のドアを開け銃を手にすると表に出た。そのすきに忠太とボーボは、車の中に忍び込む。
「おーい、坊や…どこにいるんだよー」
なるべく大きな声を立てないように、それでも必死にピョンを探すふたり。すると、片隅でゴトゴト動くバスケットが…ふたりは、そこに近づくと
ほっと一安心。が、表では耳をつんざく銃声が…!
「ヒッ…!」
「ヒエッ…!」
ガンバとイカサマは頭や足元を掠める銃弾に、戦々恐々しながらも必死に雉を持ち去り何とか、その場を逃げ切った。
「……」
その一方、車に忍び込んだふたりは、バスケットを縛っていたベルトを齧り切ってふたを開けた。そして、中で脅えていたピョンを発見。
「あー、ありがとう。お兄ちゃん達が助けてくれると思ってたよ」
「さ、早く!」
彼らは車から脱出し、森の中へ消えていった。その頃、ガンバとイカサマはある程度離れた場所まで来ると、イカサマが紐の付いたサイコロを
木の枝に引っかけ、それを引っ張って枝を曲げた。
「早くしろよ、早く…」
そこへ失敬した雉をガンバが乗せる。タイミングを見てイカサマが手を放すと、雉は高く跳ね上げられた。それを見て、ハンターはすかさず
打ち落とす。そして、今にも飛び出さんばかりに吠え立てていた猟犬達を放った。森の中で、ガンバ達と忠太達が合流するが背後から猟犬達が
迫ってくる!
「遅れるなよ、忠太!あの犬達が追っかけてくるぜ!」
やや遅れ気味の忠太を、ガンバが叱咤する。そして、彼らの背後から猟犬たちがグングン迫ってくる…!
「あうっ…」
忠太は、途中で蔓に足を引っかけて転んでしまう。慌ててその場から逃げようとして、蔓を無理矢理ちぎったがその時、蜂の巣を引っかけて
落としてしまった。そこへ、猟犬達が突っ込んだからたまらない。彼らは、怒った蜂の大群に襲われて悲鳴を上げて退散して行った。
「忠太、でかしたぜ!」
怪我の功名から、何とか猟犬達を追い払うことができホッとしていた忠太に、ガンバがからかい半分に声をかけ、忠太も思わず照れ笑い。

夜が明けて…
「弱っちゃったなあ…分かってくれよ…」
「いやだ、いやだ、いやだったら、いやだーっ!」
ガンバ達に付いていくと言って泣いて聞かないピョンを前に、どう説得するか当惑していたガンバだったが…
「なあ、その代わりノロイをやっつけたら帰りに寄ってくからさあ…な?」
すると、ピョンは泣き止んで
「ええ、ホント?」
「うん、きっとだとも。きっと!」
「き…きっとだよ。約束だよ!」
何とか機嫌を直したピョンに、ガンバ達は別れを告げた。
「きっとだよーっ!ガンバのお兄ちゃーん!」
「ああ、きっとなーっ!」
遠ざかる彼らに、声をあげて手を振るピョンにガンバも足を止め、振り返って答えた。いよいよ、目指すは目の前にそびえるカラス岳。
その山頂で、ヨイショ達が待っているはずだ。

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