流浪世界譚 06

〈5〉

 二人が目を覚ました時、日は既に西に傾きかけていた。随分と、長く眠っていたらしい。司は、頭に柔らかな感触を覚えて、慌てて頭を上げた。隣には微笑する皐の顔。
「ごめん皐ちゃん。膝枕、してくれてたんだね」
 通りでぐっすりと眠れたはずだ。司はそう思って赤面した。その顔を見て、皐がくすくすと笑った。
「気にしないでいいよ。さっきの戦闘だって、司くんの方がずっと疲れてた筈なんだから。膝枕は、そのご褒美」
「嘘をつけ」
 イシェトが突っ込むが、無視する事にする。どうせイシェトの声は、司には聞こえない。
「それじゃそろそろ、敵の本拠に向かおうか。クラッカーが痺れを切らせて待っているよ」

 皐の言葉に、司は頷いた。立ち上がり、それぞれの得物を手にする。目指すは大学部、管理棟だ。

「皐ちゃんは羽根、生やさないの?」
 試しに司が聞いてみると、答えはこうだった。
「歩きにくいもの。普段からそんなものくっつけて歩いたりしないよ」
「それもそうか」
 しかし美しかったな、あの姿は。司は先程の皐の姿を反芻していると、目指す管理棟の方で動きがあった。

「なんだありゃ、ロボットか?」
 司は見たままの感想を漏らした。

 それは確かに、ロボットというべき外観をしていた。四足で、車輪で走行しているらしい。大きさは人間二人分ほど。円を潰したような外観で、その中心部が明滅している。あれがセンサーだろうか。武器は頭の上に、ガトリンク砲を一門、装備していた。
 そいつ等が四体、管理棟の入り口から走り出してくるのが見えた。

「迎え撃つよ」
「うん」

 こちらの射程に入った瞬間、重火器の応酬が始まった。敵の銃弾は、どうせ当たっても通用しないのだが、わざわざ当たりに行く事もない。それに図体がでかいので押しつぶされたら厄介だ。向こうを見れば、ぞろぞろと同じような奴が出現してきている。物量作戦がお得意と見える。だが。
「まとめて消し去ってやる!」
 司がビームキャノンを構え直す。一番効果的な着弾地点を割り出し、発射。

 着弾。ロボットの群はその数を激減させていた。残りは皐が殲滅していく。
「こいつら、弱い!?」
 司が疑念を吐き出した。クラッカーの城下を守るにしては、たしかに弱すぎる。こんなに安易に殲滅されて、いいのだろうか。
「これで終わりじゃないみたいだね。と言うより、終わりがないんじゃないかな」
 皐の推測に、司も納得した。ぞろぞろと、またしても同じタイプのロボットが沸き出してきていた。
「直線に焼く」
 司が言った。管理棟の入り口から直線上の位置に司は陣取る。それを邪魔する奴は、皐が殲滅していく。重火器二丁程度で殲滅されるようでは、ガードとしては失格だろう。こちらが軽火器しかもたないというのであればともかく。

 司が配置についた。
「くたばれ」
 その想いを込めて、司はトリガーを引いた。強い燐光を纏って、光の弾がロボットを薙ぎ払っていく。その光景は、爽快とも言えた。
 残骸が風化して消え去ってしまうと、管理棟の廊下がストレートで見えた。今なら、邪魔も入らない。

「行こう、皐ちゃん」
「うん」

 どうせ校内に入った所で抵抗は目に見えている。司はビームキャノンを消し、代わりにビームライフルを取り出す。このくらいの創想術は、司は楽に使えるようになっていた。
 皐が感嘆する。
「すごいね。創想術なんて、集中しないとなかなかできない物なんだけれど」
「創想術という奴が、向いてるのかな」
「そうかもしれないね。私も司くんと同じ物、作ろうっと」

 皐の重機関砲も、ビームライフルに姿を変える。司の物とは、少し形が違うが、性能は似たような物だろう。実用に、問題はない。実射はまだだが、すぐにその機会はやってくるだろう。そして、すぐにやってきた。

 どういう原理か分からないが、天井や壁を走ってくる自走型のロボット。大きさは人間の腰ほどだろうか。先程でてきた奴を縮小したような形をしている。問題はその数だ。理事長室に辿り着くまで、一体何体とやり合わなければならないのか。考えるだけでうんざりしてくる。
 それでも、前へ進まなければ進めない。司と皐は、両腕に構えたビームライフルを乱射した。応射も飛んでくる。だが《契約》の護りに弾かれて、司達に実害を与える事ができないでいる。傍目には一方的な戦闘に見えるだろう。だが敵の数は多く、司達の歩みは遅々として進まない。

「くそっ。こいつら、何処から沸いて出てくるんだ?」
 司の悪態に、皐が答えた。
「さっきの奴もだけど、多分クラッカーの創想術だよ。一体のコストを下げて、とにかく数を作っているんだ」
「迷惑だな。結局、理事長室へと辿り着かなければならない訳か」
「そうとも限らないよ」
 皐が、司の言葉を否定した。
「どこかに、こいつらの製造・集積場所を作っているかも知れない」
「じゃあそこを潰せば、こいつらは出てこなくなる?」
「多分ね。問題はそんな場所があるかどうかだけど……イシェト、検索。この建物の中だけでいい。こいつらが量産されてそうな場所、探して」
「了解した。少し待て」

 司にはその返答は聞こえない。イシェトの声が聞けないのだから当然なのだが、イシェトと皐が呼んでいるモノが、皐をバックアップしているだろう事は分かった。だから問いかける事もしない。汗を流しながら、ただトリガーを引く。時折手榴弾を交えながら、司と皐は遅々と前進をしていたが、皐の「分かった!」という一言で戦況は変わった。

「司くん、床に穴開けて!」
 乱暴な指示に、しかし司は従った。もう一度あのビームキャノンを思い浮かべる。それを手にして床を撃ち抜く。そのはずだった。
「くそっ、効かないのか!?」
 光弾は空しく弾けて散った。連続で叩き込む。結果は変わらなかった。徒労感に駆られて、司は周囲の小型ロボットを薙ぎ払う。それで気晴らしをすると、司は皐に問いかけた。

「皐ちゃん、他に地下に行く方法はないの?階段とか、エレベーターとか」
「無いよ」
 あっさりと否定された。
「元々この建物には地下なんて無かったんだ。それをクラッカーが創想術で架空の地下を創りだした。そしてこいつらの製造器を置いたんだよ」
「という事は、この廊下も創想術でガードされてる?」
「かもしれない」

 なるほど、それが事実なら、単に光弾を打ち込むだけでは、効果がないだろう。『想い』を込めなければ、そしてそれがクラッカーのそれを上回らなければ、この廊下は破れない。問題は、それを司ができるかどうかだ。
 『想い』の強さ。それは正確な秤など無い。ただ結果があるのみだ。司は深く息を吸い込んだ。集中する。目標は廊下の一点。

「ぶち抜け!」

 そう叫んで、司はトリガーを引いた。その瞬間、司は何かを吸い出されるような力の流れを感じた。司の『想い』が力となってビームキャノンに流れ込んでいくのだ。
 司の『想い』の力をを加えて、光弾は発射された。もうもうたる煙が立ち上る。成功か、失敗か。結果はすぐに出た。
 穴が、開いている。人一人通れるかどうかの大きさだが、確かに廊下に穴が開いていた。

「ありがとう、司くん!」
 ビームライフルを乱射しながら、こちらを振り向いて皐は言った。
「後は私がやるよ。イシェト、翼を!」
 皐の背中に光の翼が展開される。しかし司は首を左右に振った。
「いや、ここは僕が行く」
 皐は驚いた。
「創想術という奴は、結構体力を使う。皐ちゃんには、できるだけ体力を温存しておいて欲しいんだ」
「そっか……」
 残念そうに皐は呟いた。だが一転して晴れやかな顔を作る。
「任せたからね、司くん。私達は、離れていても一緒だよ」
「ああ。それが《契約》だからね」
「契約以外の事でも、だよ」
「?」

 一瞬訝しげな顔をしたものの、すぐに司の顔は緊張に染まる。穴の淵に手をかけ、身体を滑り込ませる。そのぶら下がった状態で、司は有り得ないはずの地下を見た。

 てっきりベルトコンベアの流れ作業で製作されているのかと思っていたのだが、違った。一台一台、製作されている。その製作されている場所の数が尋常でないだけだ。
 この製作を指揮している、核になるコンピュータがあるはずだ。結構な深さのあるその場所に、司は飛び込んだ。そして落ちながら自分の背に翼が映えている情景を想像する。
 落下が、止まった。意外と簡単に、司も翼を手にする事ができた。

 そうして改めて見回すと、司の左前方に何やら巨大なものが鎮座しているのが朧気ながら分かった。そちらへ向かう。
 近づくにつれて、目指す物体こそがマザーコンピュータであるように思えてきた。その物体からラインが伸び、各製作現場へ接続されているのだ。
 司は仮称マザーコンピュータへ向かって飛んだ。そしてビームキャノンを取り出す。司は目を閉じ、ゆっくりと構えながら、司は呼吸を落ち着けていく。そうして集中する。司からビームキャノンに何かが流れ込んでいく、お馴染みの感覚。司は目を見開いた。
「くたばれ」
 呟くと同時にトリガーを引いた。バリヤーのような抵抗があったが、光弾はそれを突き破って仮称マザーコンピュータに突き刺さった。派手な爆発が起こる。司は爆風に巻き込まれないよう少し後ろに下がる。
 連鎖爆発が起こっていた。製作途中だったロボットも、次々と爆発炎上していっているのだ。

「クラッカーの工場の最期か……」
 呟くと、司は地上への穴へと向かった。空中を飛んで。そのまま外に出る。光源の少ない工場では司の翼はぼんやりと黒く見えていたが、夕日に照らされた司の翼はやはり黒かった。鴉の濡れ羽色、という奴だ。

 飛び出してきた司に一瞬照準を向けた皐は、その姿に驚いた。
「司くん……翼……」
 司は自分の背に目をやると、なるべく軽く聞こえるように言った。
「うん、これも創想術で創った」
 司は地面に舞い降りる。すると役目を終えた翼も散って消えた。

「司くん……翼も創れるなんて、どんどん人間離れしていくね。普通の人間は、創想術を使ったって翼なんか創れないのに」
「人間じゃない。イレギュラーなんだよ、僕は。イレギュラーという、種族なんだ」
「種族としてのイレギュラーではなく、イレギュラーという種族、か。そうかもしれないね。君も、人間じゃないんだ。その黒い翼は、その証」
「翼が?」
「古来より、翼を持った人間なんていなかった。創想術でも越えられない壁があるんだよ。それが種族的限界。人間には、空は飛べない。それが、世界の掟だった」
「それを覆した僕は、やはり人間ではない訳か……」
「……ひょっとして、落ち込んだ?」
 心配そうな皐に、司は笑って見せた。
「いいや。それならそれで構わないと思う。それに今回、それがアドバンテージになっているのなら尚更だ」
 元より『人間』というカタチにはこだわっていなかった。人間という意識存在に、こだわりがあっただけだ。例え人間でなくなったとしても、自分は人間の一員だという意識は持っておこうと思う。

 皐がどんな意識でこの戦いに望んでいるのかは分からない。恐らくは戦術戦闘知性体として、この戦いを戦い抜こうとしているのだろう。ならばこの自分は、あくまで人間という意識を捨てずに戦おう。

 例え、人間でなくなっているとしても。

◆◇◆

 司がマザーコンピュータを破壊したお陰で、例の警備ロボット達は全て崩壊した。これでかなりの戦力を削いだはずだが、分からない。創想術は術者のイマジネーション次第でどんな物でも創り出せる。クラッカーがどれくらい想像力を持っているかは分からない。だがいい加減この辺りで幕引きと行きたい物だ。

 司と皐は階段を登り始めた。理事長室は五階、最上階だ。この学園で一番高い建物。その最上階で、クラッカーは何を考え、戦いの指揮を執っているのだろうか。ずっと見下ろされていたと考えれば腹も立つが、実際そんな余裕は二人とも無かった。一段一段、武器を手に踏みしめて登る。静かだ。誰もいないかのように。実際、人間は誰もいないはずだ。午前中に、殺し尽くした。人間を、と思えば戦えなかっただろう。実際、あれは、クラッカーの人形だった。自分の意思など無く、上位者の意思だけで動く、操り人形。しかし本来は人間だったモノだ。それを、良心の呵責もなく、打ち砕いた。撃ち殺した。焼き払った。自分はやはり人間ではないなと司は自虐的に考えた。

 この戦いは、神対神の戦争だ。人間は、絶対に、介入できない。それに介入している自分も、やはり人間ではないのだ。意識は人間でも。しかし午前中の敵に対するあの扱いはどうだ。まるで人形にでも対するかのような無感情だった。自分は、少しずつ人間以外の意識に乗っ取られているのではないかと夢想して、身震いした。それは、自分の根元に関わる問題だ。自分は、例え人間でなくなっても人間でいたいのだ。その意思だけは、崩したくはない。

「司くん、どうしたの?」
 司の様子が変だと察知したのだろう。皐が声をかけてきた。それで目が覚めたような気がした。
 自分は一人で戦っているのではないのだ。隣に、彼女がいる。戦術戦闘知性体である、彼女が。
 確かに彼女の感性は人間とは違うのかも知れない。だが自宅で見せた表情は、外見の年相応の少女の感性だった。彼女にも、きっとある。人間としての感性が。たとえそれが、戦闘の邪魔になったとしても。
「いや、馬鹿な事を考えていただけだよ」

 そう司は答え、新たな一歩を踏み出した。

〈6〉

 五階、最上階。ここまで、何の抵抗もなく辿り着いた。
 扉が、一つ。理事長室へ繋がる扉だ。正確にはその前室、秘書達が待機する部屋に繋がるドアだが。

「最期の抵抗が、あるかな」
 司が呟く。皐は首肯した。
「あると見るべきだろうね。何しろ、最後の砦なんだもの」
 話ながら、じりじりと問題のドアへ寄っていく。移動は慎重に、行動は大胆に。問題のドアへと辿り着く。司はドアを遠慮無く蹴り開けた。二人して覗き込む。

 夕焼けの秘書控え室は机も何もなく片づけられて、ただ広い空間が広がっている。天井も高い。床が板張りなら、道場のようだ。そんな場所に一人、蜃気楼のように人影があった。

 人影は成人男性の平均より高めの身長で、がっしりとした体格。顔は、見えない。夕闇の陰影が、人影を影の中に沈み込ませている。

「良くここまで来た」
 人影が、口をきいた。低い男声。褒め称えるかのような口調で、言った。
「虐殺を続けただけさ」
 司が部屋の中に入って、言った。この男が、最後の障害か。
 続いて皐も入って来て言った。
「尤も、必要な虐殺だった。お前達が生徒達を人質に取っていなければ、こんな真似をする必要もなかった。こんな時間をかける事もなかった――でも」
 皐は腰に手を当てて言い放った。
「それをあなたに言っても、仕方のない事よね」
 人影が、応じた。
「確かに我は、汝らの愚痴を聞く為にここにいる訳ではない」
「では何の為にいる?」
 鋭く切り返した司の質問は、悠然として応じられた。
「無論、汝らをここで止める為だ。後少しの間、邪魔をしないで貰おうか」
「時間制限付きか……」
 司は奥歯を噛みしめた。と、不意に人影の方から声をかけてきた。
「しかし、ただ打ち合うだけではつまらん。もうひとつ、汝らにチャンスをやろう」
 人影は、背後の扉を親指で指し示した。

「あの扉の横に電子ロックがある。それを破れたら、通してやろう。無論、我が妨害するがな」
「つまり、電子ロックを破りながらお前と戦えと、そういう訳だな」
「話が早くていい。それで、誰が我と戦う?どちらでも我は構わん」
 どちらも何も、これでは役割分担は決まったも同然だ。こちらは皐以外、電子ロックを解除するなんて芸当のできる者はいない。
「重要な役は全部司くん任せなんて、戦術戦闘知性体の名が泣くなあ」
 そう言いながら、皐が前へ出る。そして言った。
「お前もまた、創想術で創り出された人形なのね。でも良くできている」
 横を通り過ぎる皐を振り返る事もせず、人影は言い返した。
「確かに我は創想術により産まれし疑似生命。だがそれだけに、これまでのものとはひと味違うと思われよ」
「思っているよ」
 司が返した。武器を何にするか、考えながら。

 皐が電子ロックの場所にたどり着いた。それを目視できるのか、そいつはブレードを取り出した。直刃で、一メートル強のものだ。それを見て、司も自分の得物を選んだ。日本刀を取り出す。鞘ごと。鞘をベルトに差し込んで、白刃を引き抜いた。
「立ち位置を、交換しようか」
 驚くべき事を、そいつは提案してきた。罠か?しかしそんな気配は、そいつからはしなかった。純粋に、フェアな勝負を、望んでいるかのようだ。

 司は無言で一歩、踏み出した。二歩目、三歩目と歩み続ける事で、肯定の意思をそいつに伝える。そいつも、一歩、二歩と歩いてきた。
 すれ違う。その瞬間、司は言った。
「お前、名は」
 そいつは言った。
「シャドウ」
 再び離れる。距離が開く。やがて、最初のお互いの立ち位置へと、到達した。
 シャドウにブレードを構える動きは、無い。型など無いのかも知れない。
 司は青眼に刀を構える。
 そのまま、しばしの間沈黙が舞い降りた。皐の作業する音だけが、響いている。

「ひとつ、言い忘れていたがな」
 沈黙を破ったのは、シャドウだった。
「我を倒せば、そのドアは自動的に開く」
「という事は、全力で来い、という事だな」
 シャドウはニヤリと笑ったようだった。
「その通り。手抜きは即、死を呼ぶぞ、斎乃司」
「心得た」

 司は夕闇迫る光源で、シャドウの全身をもう一度よく観察した。

 身長は百八十センチくらい。司と十センチほどの差がある。体格もまた、向こうの方が上だ。だが司は《契約》の加護がある。身体能力は、負けていないはずだ。その他の特徴と言えば、なんとなく特撮ヒーローのような外観をシャドウは持っていた。アレをもっとスマートにしたら、シャドウになる。顔は覆面をしたかのように、瞳がなかった。だがぼんやりと、顔に凹凸がある。先程は、口を吊り上げて笑っていた事だろう。

「さて。そろそろ良かろう」
 シャドウが告げた。司も頷く。
「いざ、尋常に……」
「「勝負!」」

 勝負、の声をどちらが発したか。そんなものはどうでも良かった。激刃が二人の間に交わされた。ほんの一瞬で、開けた間合いはゼロになっていた。鍔迫り合い。同時に引く。

 今のはほんの小手調べだ。動悸を押さえながら、司は自分に言い聞かせた。相手の、そして、自分の力量を測る為の。特に自分の力量のデータは重要だった。戦術がまるで変わってくる。結果、相手と同格程度。しかしまだ余裕はある。まだ上昇させる見込みはある。恐らく戦いに集中すればするほど、力量は上がっていくはずだ。そして恐らく、相手の方も。体が温まってくるとか本気を出してくるとかそう言った話ではない。

 創想術。これのキャパシティが高い方が有利だ。それだけ高く力量を伸ばせるのだ。実際、司は創想術だけで戦っているような物だった、今の一撃も。素人が振り回してやっとうできるほど剣術は甘くない。
 想いの強さ。勝ちたいという想い。勝利への執念と呼び変えてもいい。それが強い方が、勝つ。

 司が打って出た。右からの斬撃。シャドウはそれを下から上へ打ち払って、切り返して右上から司の首を狙う。その一撃を打ち払い、司は一歩下がった。一歩分と上半身のバネを使った刺突。しかしすんでの所でシャドウに軌道を読まれ、かわされた。司のがら空きになったかと思われる左腋に、シャドウの刺突が入る。

 火花が散った。

「なるほど、鞘を捨てなかったのは、この状況を想定しての事か」
 シャドウの刺突は、司の鞘によって止められていた。火花が散ったのは、それが鉄拵えである為だ。
「だが二度は通じんと思え」
「よく分かっているさ」
 両者の間合いが、また開いた。
 そしてまた間合いが詰まる。今度はゆっくりと。そして両者円を描くかのようにゆっくりと回り始めた。距離は一刀足。一歩踏み込めば間合いという距離だ。そこでゆっくりと周りながら、相手の隙をうかがう。

 今度はシャドウが仕掛けた。右、左、右と連続で斬撃を繰り出してくる。司は最小の動きでそれをいなす。そして連撃が途切れた隙を狙って右からの薙ぎ。しかし下からの斬撃によって阻まれた。
 両者の腕が天井に向かって跳ね上がる。その下ろす勢いを使って司は強引に唐竹割りにいった。火花が散る。
 強引に割り込んだセイバーで、今度もまたシャドウが先手をとる。司の右腕を薙ぎに来た。それを回避した司は、がら空きの右胴へ斬撃。しかし辛うじて、シャドウはセイバーを引き戻した。司の斬撃は空しく火花を散らすに留まった。

◆◇◆

 背後で交わされる斬撃の応酬など何処吹く風といった風で、皐は電子ロックの解除に勤しんでいる。自分が背後から斬られる事など有り得ないと思っているから、こうして無防備に背中を晒していられる。司を信頼しているのだ。どんな脅威からも、きっと彼なら護ってくれる。

 最初から分かっていた事だが、これは単純な電子ロックではない。クラッカーが何かしら細工をしている事は確実だ。それを見抜き、解除できるか。皐の戦いは、そこに集約されていた。

 そう、戦いだ。これも。クラッカーとの騙し合いだ。クラッカーが何処に罠を仕掛け、皐が何処に抜け道を造り、最終的に相手を潰した方が勝ち。背後で行われている剣の応酬と何ら変わりない。劣等感を抱く謂われは全くないのだが、司が心配だという気持ちは常にある。彼は頑張りすぎて限界を突破してしまうような、そんな危うさがある。そこをカバーすべき自分が、今別行動をとらされているのは、正直不安だった。この不安を払拭するには、どちらかが作業を終えればいい。できるだけ、早く、自分が。

 電子ロック自体はそう複雑な物ではない。生徒のIDカードでも、媒体としては構わないくらいだ。当然だろう。ここは本来、ある程度安易に人が出入りできるべき場所なのだ。そこを鉄壁にするには、まず根本から変えなければならない。皐は自分のIDカードを差し込み、現在のリーダーの構造を探る。
 皐は複雑な機械なしに構造体の仕組みを知る事ができる。皐はその『眼』でリーダーを視る。予想通り、軍事機密保管庫レヴェルの奇怪さだった。ここを普通の手段で通るには、たった一枚のカードと指紋、網膜識別が必要になっている。網膜識別の無表情なカメラを見つめながら、皐は思案した。

 極端な所、シャドウの言うがままにしなくても、このドアを破る方法はあるに違いない。例えば、司が廊下に穴を開けたように、ドアをぶち破るとか。しかしそれには膨大なエネルギーがいるだろう。壁でも同じ事だ。今の司と皐で、それだけのエネルギーを絞り出す事はできるだろうか。できるかもしれない。だがそれを座して見守るシャドウではあるまい。必ず、妨害してくる。精神集中の必要な、そんな場面で邪魔されたら面倒だ。少なくとも、あのシャドウは排除せねばならない。だから今の選択は決して間違ってはいないのだ。だがそれと皐の焦りとは別の問題だ。戦術が幾ら正しくても、納得できない事はあるし、焦る事もある。正しく皐の現状がそれだった。皐はその焦りや不安を、作業に没頭する事で紛らわせようとしていた。

 実際、気もそぞろではこの電子ロックは開きそうにもなかった。クラッカーの創想術は、かなり強い物だという事が分かる。解除の為に創想術で創りだした機器を操りながら、皐は感嘆した。普通に解除していたのでは、数時間はかかってしまうという事もまた、皐を興がらせた。
 普通にやって駄目なら、裏道を使うべきだ。創想術。それを駆使して皐はクラッカーのキーの核を探そうとした。通常、創想術では行わない事だ。創想術とは創り出す術であって何かを調べる術ではない。しかし、その物体が既に創想術で創られた物の場合、創想術によってその物の構成を知る事が可能だ。そんな事をしなくても皐には『眼』があるが、それとは違ったモノが見えなくては意味がない。それを見逃すことなく、見つけだす。それが皐の、戦いだった。

◆◇◆

 司とシャドウの一騎打ちも、激しさを増して続いている。

 司の抜刀からの一撃をシャドウはセイバーの腹で受けた。しかし司の攻撃は止まらない。右上、左上、右下、右上と四連撃を繰り出す。抜刀術は一撃必殺の剣術ではない。むしろ、そこからどう連撃に繋げるか、が抜刀術の神髄と言ってもいい。司はそれを忠実に守った訳だが、しかし辛うじてシャドウのセイバーが司の刃を受け止める。しかし司は臆することなく一歩踏み込んだ。シャドウの喉元を狙って、刺突を放つ。
 しかしかわされた。シャドウは踏鞴を踏んで退いた。更に司は追撃する。納刀、抜刀からの三連撃。左下からの刃が、シャドウの防御をすり抜けて、僅かにシャドウに傷を負わせた。
 しかしこんな物かすり傷だ。戦闘に、支障はない。だが彼の内心はどうであろうか。司はそれを確かめたくなった。間合いが開いたのを好都合とみて、司は抜刀の構えをとってシャドウに語りかけた。

「お前がクラッカーに肩入れするのは、お前がクラッカーに創り出されたからか?」
 泰然として答えが帰ってきた。
「創り出された事には関係ない。我は戦う為に創り出された。戦いこそ我が存在意義。より強い者と戦う事こそが我が喜び。司、お前は強い。このような好敵手とめぐり会えて、我は満足だ。さて、どちらが勝つであろうな、この戦い」
 毅然として、司は言い放った。
「僕が勝つさ。そしてクラッカーを倒す」
 シャドウが応じた。
「その言葉、偽りはないな?」
「無論」
「ならば実現させてみるがいい。しかし我とて手は抜かぬぞ」
「誰かが言っていたな。原理は単純、それが複雑に見えるのは想いが単純ではないからだ、と。しかし今や、僕とお前の思いはひとつな訳だ。ベクトルは、正反対だが」
「想いはひとつ、か。良かろう。来い!」

 シャドウがブレードを構える。司が抜刀の姿勢のまま疾る。一刀足の間合い。司が刀を抜くかと思われたが、抜かなかった。それどころか右へ大きく跳んだのだ。
「何!?」
 これにはシャドウも意表を突かれたらしく、驚きの色を隠せないでいた。大きく回り込んで、司が再びシャドウへ突撃する。しかしそれをシャドウが迎え撃とうとすると、司は大きく跳躍して逃げていってしまう。このやりとりがあと六回、続いた。司の刀は、遂に一度も抜かれずじまいだった。

 シャドウがうなり声を上げた。
「言っている事とやっている事が違うぞ、斎乃司。何故ただ逃げ回る」
 司は言い返した。
「お前こそ矛盾しているぞ。何故僕が、僕だげが走り回らなければならない?お前には、脚がある。倒したければ、追えばいい」
 クッ、とシャドウが喉を鳴らした。確かにその通りなのだ。これまでの戦いは、司が動き、シャドウは全て受動側に回っていた。もっと能動的に動け、と司は言っているのだ。
「了解した。斎乃司よ。我も汝を倒すのに全力を尽くそう」
 司は頷いた。内心で、これで上手く行ったと思いつつ。

 今までの戦いだと、シャドウがその気になれば司の動線の一番離れた時に皐を狙う、と言う事ができたはずなのだ。それをしなかったこのシャドウという存在は尊敬に値したが、過去が未来を保証するとは限らない。打てる手は全て、打っておきたかった。

「それでは、次手は我から行くぞ」
 宣言をその場に置き捨てる勢い。シャドウは司に向かって突進した。
 受ける司は、その場で抜刀の構え。左足を引いて半身の姿勢をとる。

 基本的に抜刀術は防御に向かない。納刀状態から抜刀して敵の刃を受けても、鞘に自分の刀が残る場合がある為だ。
 今、司の左手は鞘にかかっている。それが奇術の種となるであろう

 刃同士が激突し、火花を盛大に散らした。司の刃は、半分以上が鞘の中だ。
 シャドウはそのまま、右胴を狙ってセイバーを振った。
 金属音。火花が散った。
「ふ。やはり一筋縄ではいかんか」
 シャドウが感嘆の声を漏らした。
 右胴を狙われた瞬間。司は鞘を下にずらして抜刀の位置をずらし、抜刀を早めたのだ。

 司はニヤリと笑うと、シャドウの剣を払った。無造作に。そして神速でシャドウの首を狙う。しかし弾かれる。そこからシャドウの袈裟懸け、司は半歩退いてそれをかわす。そして、踏み込み。神速の連撃。右上、右下、左上、左下、刺突。シャドウは退きながらこれを受ける。右上、右下、左上、左下、そして刺突。翻ってシャドウも応戦する。水平の薙ぎ、狙うは首。これをかわして、司は胴を狙うのに集中して刺突の連撃。シャドウはこれを打ち払う。しかし司の連撃は止まらない。薙ぎ、払い、そしてまた薙ぎ。シャドウはこれを全て防ぎきったが、肩口にまた軽傷を負った。

 完全に司のペースに見えるが、それはこの戦いに時間制限がなければ、の話だ。
 シャドウは言っていた。「後少しの間、邪魔をしないで貰おうか」と。つまり後少ししたら、何か致命的な事になってしまうのではないか。司はそれを恐れている。だからつい攻撃的になるのだ。しかし焦りはない。というより、焦る事を眼前のシャドウが許さない。その様な隙を見せれば、シャドウは即座にその隙を突くだろう。第一、何も司がシャドウを倒さねばならないと言う事はないのだ。皐が先に電子ロックを開錠すればこちらの勝ちなのだから。当然、油断はできないが。
 それがどれほど大変な物か、司は想像する事しかできない。だから、司はできる事を全力でやる。眼前の敵を、倒す事を。
 身体は疲れているような気がするが、気力はむしろ増してきている。もっと速く、もっと強く打ち合えそうな気がする。司はその予感に従って、刀を振った。結果として、シャドウすら驚くほどの気迫が、司には産まれていた。

 シャドウは思う。この勝負、例え負けても悔いはない、と。これほどの相手と打ち合えたのだから、本望だと。激しさを増す打ち合いの中、シャドウはそんな事を考えていた。

 司は無傷だが、これは《契約の加護》による防護の結果に過ぎない。傷の数は、シャドウとどっこいどっこいと言った所だろう。お互い軽傷を追った程度。まだまだ戦える。

 司が初めて型を捨てて、乱刃をシャドウに浴びせかけた。目に見えぬほどの刃の怒濤を前に、シャドウは薄く笑った気が、司にはした。
 シャドウの腕が消えた。正確にはそれ程の速度で、司の刃を受け流しているのだ。しかし司も譲らない。受けられれば別方向から薙ぎ、受け流されればその力を利用してさらなる一撃を放つ。休む事のない、刃の波頭だった。
 その怒濤を支える二本の刃は双方共に名刀だったが、双方共に創想術で創られていたというのが決め手になった。

 勝負は、シャドウのセイバーが悲鳴を上げて折れた、その瞬間に終わりを告げた。
 受けきれなかった司の刃が、シャドウの右腋から入って左肩へと抜けていった。

「僕の、勝ちだ」
 荒い息の下から、司はそれだけを告げた。しかしシャドウは頭を振って、半身しかないセイバーを握りなおした。司は危険を悟って大きく後ろへ跳躍した。
「シャドウ、お前……」
 まだやる気なのか。深手を負い、得物も折れた、その状態で。
「言わなんだか、斎乃司よ。我は戦う為に創り出された存在。戦う為の存在。事切れるまで、我は戦い続ける」

 シャドウが立ち上がった。半身しかないセイバーを構えて。
 ならば、と司も覚悟を決めた。一撃で、勝負をつける。
 半身に構える。刃は自らの身に沿って垂直に立てる。これ一刀で、勝負を付けると心に誓う。薩摩示現流(さつまじげんりゅう)一の太刀。
 正確には、それをイメージした剣術だったが。

チ@ホiツ?ヒ?ツ?ツ?チBネ?
 モチツ?ヘ?ツ?ベツ?ツ?チBテVテテテhテEツ?

ツその結果。
 ?ツ?ツ?ヨhツ?ツ?ツ?ヤ?ミgツ?テZテCテoチ[ツ?ミUツ?ツ?ツ?ツ?チB セイバーは宙を舞い、床に落ちた。

 司の刃はシャドウの左肩から右胴へ抜けた。力を失ったかのようにシャドウが崩れ落ちる。見ればセイバーは既に粒子と化して崩れ始めている。今度こそ、決着が付いたのだ。
「見事だ」
 胸に×字の傷を負ったシャドウが賞賛した。既に粒子と化しながら。
「しかしこの勝負、腑に落ちぬ所がある。それを訊ねて良いか、斎乃司」
「何だ?」
「何故、真剣勝負をした?汝なら、創想術で幾らでも裏をかけるであろうに」
 司は苦笑した。言われてみれば、そう言う手もあったのだ。しかし実際には思いつきもしなかった。それはやはり――
「お前に敬意を表しての事さ。例え創られた者であっても、お前は敬意を払うに値する存在だ」
 シャドウは笑ったように見えた。
「我にそれ程の価値を見てくれたのは、恐らくお前だけだ、斎乃司。感謝するぞ」

 シャドウの粒子化が首に及んだ。
「これまでか。斎乃司」
 シャドウは問うた。
「良い勝負で、あったよな?」
 司は頷いた。
 それを確認し得たかどうか。シャドウの全身は、粒子と化して消えていった。
 何もない空間に向かって、司は黙礼を送った。

◆◇◆

 どっとのしかかってくる疲労に耐えながら、司は皐の所に歩いていった。
「終わったよ」
 それだけを皐に伝える。感慨は、口にしなかった。
「そっか」
 皐も、背を向けたままそう応じた。余計な事は、何も聞かなかった。聞けばきっと教えてくれるだろう。だが、深入りしていい領域ではないと感じた。だから聞かない。聞かない事にした。

「そちらの方はどう?順調?」
 変わって司が質問する。皐は司の方を振り返って苦い顔をした。
「難しいね。セキュリティがここだけで完結している訳じゃ無いみたいで、そこを上手く騙しながらクラッカーの仕掛けた核(コア)を追っていたんだけれど……」
 皐はそこで言葉を切って肩をすくめた。
「司くんがアイツを倒した瞬間にオールクリア。開いたよ。この扉」
 それを聞いて、司はその扉を見つめた。シャドウとの闘争を思い出す。あれほどの事をせねば開かなかったのか。それ程に価値があるというのか、この扉に。

「皐ちゃん」
 突然呼びかけられて、皐は驚きながら返答した。
「何、どうしたの?」
「クラッカーがどんな奴か知らない。だが、あれほどのものを創り出せながら、それを正しい方向に何故使えなかったのか。それが、悔しい。これだけは思うんだ。クラッカーは、厭な奴だ」

 そう告げ、司は歯ぎしりした。シャドウ。尊敬できる敵。その最期は消して美しくはなかった。剣折れ傷ついてなお戦わねばならなかった彼を思うと、胸が痛む。それは偽善だろうか。偽善でも構うものかと司は思う。
 シャドウは確かに自分の意思で立ったのだろう。しかしそれを強要すべく創造したのはクラッカーだ。だから司はクラッカーを許さない。許さない理由が、またひとつ増えた訳だ。先程司はクラッカーを厭な奴と表現した。その通りなのだろう。他者を理解せず、自己の利益のみを追求するものは、他者の目からは厭らしく写るものだ。クラッカーもそんな奴なのだろう。

「それにしても、私のやってた事って何だったんだろうね。一生懸命やったつもりだったけど、結局司くんがアイツを倒した瞬間に問題は解決。これじゃ私のやった事って何?って気にもなるよ。ひょっとして戦術戦闘知性体として、司くんの方が優れているんじゃないかと思えるくらい」
「結果が全てじゃないさ。皐ちゃんが一生懸命にプロテクトをうち破ろうとした、その好意が大事なんだと思う。だからこそシャドウは、僕と戦ったのだからね。それに結果として僕はシャドウに勝てたけど、勝てたとは限らない。そう言う時にこそ、皐ちゃんの作業が生きてくるんだと思うよ」
「縁起でもない事言わないでよ。司くんが負けた時って、どんな時?想像したくもないよ。だけどありがとう。慰めてくれて」
 司は戸惑った。
「慰めた訳じゃない。事実だよ」
「事実だとしても、だよ。私にその事を気付かせてくれた。だから、ありがとう、だよ」
 司は頭を掻いた。要するに照れ隠しだ。
「それじゃ行こうか。全てを終わらせに」
「うん」

 そして司達は扉を開いた。最後の敵が待ち受ける部屋へと。


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