【 第 2 章 】−(2)
奇面組を含めた8人の一行は店の中に入った。店の中は昼食時という事もあって多くの客で賑わっていたが
座れないほど大混雑している訳でもなく。たまたま少し奥に進んだ所に外の景色を見渡す事ができそうな
7〜8人用の席が空いていたので案内された席に座る事にした。
ちなみに案内された席は建物の窓際で大きなテーブルとコの字型をしたソファーのある席で通路側に
唯ちゃん・唯維ちゃんその反対側には潔くん・仁くん、窓側に唯維ちゃんの隣から順に千絵ちゃん・
大くん・零くん・豪くんという順に座り、
みんなが座った所で千絵ちゃんがテーブルの上に3枚あったメニューのうち2枚を奇面組に渡してから、
話しかけた。
「さぁ、アンタ達は何を注文するの?言っとくけど、いくら唯維さんがおごってくれるからと言ったって
無茶な注文をするんじゃ…」
そう言い終える前にすると零くんを除く4人は千絵ちゃんを無視して注文をしようとする。
「俺は清酒『男盛り』とつまみ1丁、これだけあれば他はいらねーぜ。」
「ぼくはチョコクリームパフェ」
「俺は何でも良いけど、奇麗なウェイトレスが来ないかな…グヒヒヒ…」
「ぼくはここにあるメニュー全部。」
「コラ!アンタ達。人の話をちゃんと聞きなさい。奢ってもらうんだから1品だけにしなさい。
それ以外はダメ!」
千絵ちゃんは4人にそう言って暴走しようとするのを押えにかかると、豪くんが…
「ちぇっ、何仕切ってんだよ。奢りで自分が一番食いたいくせによく言うぜ。」
「何ですって!」
思わぬ反撃にあった千絵ちゃんは声を荒げながら豪くんに言い返した。
「ちょっと、千絵、豪くんも静かにしてよ周りの人に迷惑じゃない。」
唯ちゃんが周囲を気にしながら、千絵ちゃんと豪くんに言い諭すように言った。
その唯ちゃんのひと声で千絵ちゃんも豪くんも黙ってしまう。
隣に座っている唯維ちゃんはそのやりとりを見て笑っていた。
「ところで零さんは?さっきからずっと黙っているけど・・・」
唯ちゃんが零くんがさっきから静かなので不思議がって見てみると、
「ぶつぶつぶつ・・・」
零くんは1人で黙々とメニューを見ながら小声で独り言を言っていた。
「零さん、一体何やってるんですか。」
「いやー。こういう所はめったに来ないので失敗しないように慎重に選んでいたのだ。」
「それで、結局何にするの?」
「カレーライス大盛り!」
ずどど・・・。それを聞いた唯ちゃんがコケる。
「もう!こんなバカな事やっていたら、いつまでたっても決まらないじゃない!」
奇面組を連れて行ったらこうなる事はある程度予測してい千絵ちゃんもさすがに呆れてしまう。
結局、いつものようにドタバタして中々メニューが決まらなかったが、それを横で見ていた唯維ちゃんが
この店自慢の「特製ランチセット」を5人にも勧めてみた。
最初、5人はどうするかまだ考えていたが千絵ちゃんも
「唯維さんに奢ってもらうんだから贅沢言うんじゃない。」
と釘を差してきたので、零くん達もそれ以上は何も言えず「特製ランチセット」を頼む事にした。
ようやく一段落した所で豪くんが唯ちゃんに話し掛ける。
「それで唯ちゃんとそっちのもう1人の唯(唯維)ちゃんは全くの他人なんだな。」
「ええ・・・。私もすごく驚いているんだけど、年が私より2つ上なだけで生れた日も名前も一緒なの。」
「ねぇ、唯。他も同じなのかな?」
「他も、って言うと?」
「例えば、家族構成とか学校とか・・・、周りの環境とかも同じなのかなって」
「それはちょっと聞いて見ないと・・・。あの〜、唯維さんには兄弟っているんですか?」
「いるよ。4つ下の弟が1人」
それを聞いた時、唯ちゃんは自分にも4つ下に弟の一平がいるので内心トキッとした。
「それって、もしかして弟さん『一平』って言うんじゃないんですか?」
千絵ちゃんも興味津々に聞いてくる。
「そう!一平って言うんだけど、もしかして唯ちゃんの所も・・・?。」
そう言って唯維ちゃんも少し驚いた表情で唯ちゃんを見ると、唯ちゃんも小さく頷いた。
【第2章】 - (3)へ続く