北海道北部に位置する酪農とトナカイの町、幌延。糠南下沼など町内には現在6つの秘境駅が存在するが、町は2015年頃それらの秘境駅を観光資源として認識するようになり、秘境駅のキャラクター誕生や糠南でのクリスマスイベント等の活動によって、いつしか幌延は「秘境駅の里」という異名が付けられた。秘境駅という名前が出始めた時、幌延町内にはかつて上雄信内、南下沼という秘境駅が存在し、全盛時には町に8つも秘境駅があったことも付け加えておく。

 今回紹介する上幌延は、昔は郵便局や駐在所、様々なお店や旅館に運送会社があったなど、鉄道開通前は栄えていたというのだが、鉄道ができると町の中心地は現在の幌延の駅周辺になって寂れていったという。

 現在の上幌延は貨車を改造した駅舎となり、昔の駅舎の土台の場所は雑草が生い茂り、民家は駅前に1軒だけで、あとは酪農地帯が広がるという景色である。それでもちゃんとした駅舎があった頃には有人駅として頑張り、駅手前でクランク状に曲がって入線する光景は交換設備があったことを想像させ、駅前のロータリーも、ここ上幌延が地域の重要な拠点として担っていたことがうかがえる。

 近年JR北海道の慢性的な赤字によって、利用者が極端に少ない道内の秘境駅や無人駅の廃止を進めているが、秘境駅の里をうたっている幌延は何とか町内の全ての秘境駅を守ろう考えていたかも知れない。だが、さすがに全ての駅を守り抜くのは難しかったようで、維持管理が割高の盛土駅で、隣の南幌延で代わりが利くという観点から、やむを得ず、ここ上幌延と安牛の廃止を容認する形となった。

 時代が進むにつれて人がいなくなり、昔は駅舎があって駅員もいた上幌延、安牛の廃止が決まり、その代役を開業時から無人駅である南幌延が引き受けるという、立場が逆転した構図となっのは、なんとも皮肉なものである。

                                                          (2020.9.1)

  
周囲は酪農地帯の上幌延。駅前に民家は1軒のみである。
上幌延の駅構内。遠方の緩いクランク状の線路がかつて交換設備があったことをしのばせる。
Kami-horonobe
上幌延に到着した普通列車。この駅に停車する列車は1日3往復しかない。
上幌延の駅前にはロータリーがある。かつては貨物の面でも重要な拠点だったのだろう。
貨車を改造した駅舎を持つ上幌延。かつてはちゃんとした駅舎があり、駅員も置かれていた駅だった。


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上幌延