肥薩線のスイッチバックの駅、真幸。「真の幸せ」と縁起の良い駅名で、入場券は人吉駅で販売されている。昔ながらの木造の駅舎で駅舎内には駅のスタンプや駅ノート、さらには「真幸文庫」という本棚が置かれている。

 鉄道の難所として知られ、矢岳越えの区間の途中と言うこともあり、民家も数件ほどしかないが、かつては九州を縦断する重要路線で列車の動力は力のないSLだった事を考えれば勾配の途中に駅を設けなければ山を登りきる事が出来なかったのであろう。

 ホームには「幸せの鐘」というものが設置されており、普通の鐘に比べてやや高めの音で周囲に響き渡る。だが真幸から2番目のトンネルで終戦直後に復員軍人を乗せた列車が立往生してSLの煙で息苦しくなった復員軍人がトンネルの外に避難中に列車がバックして53人も轢死してしまったり、昭和47(1972)年に大雨で山津波が発生し、この駅全体が土砂で埋まってしまい、ホームには山津波で落ちてきた8トンと言う石が置かれており、当時の山津波の凄まじさを後世に残している。そんな様々な苦難があったために鉄道マンは仕事や旅客の安全を願うために「幸せの鐘」を鳴らし続けていたのである。

 本線からローカル線への降格、この区間の急行列車の廃止で普通列車のみの路線という山岳路線の哀しい運命に遭ってしまったからこそ真の幸せと言うものに強い想いを抱き、この駅を訪れる者に幸せになって欲しい。そういう風に感じる駅であった。

                                                                 (2002.6.12)
真幸の駅入口正面
真幸の駅舎
Masaki
真幸の駅名標と幸福の鐘
ホームにある山津波の石
真幸
真幸のスイッチバックのホーム


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