その12 新ちゃんの「オープンG」
オープンの意味は講座9でわかりましたか?
弦を何も押さえずに弾くとき、これを開放(オープン)といいます。
弦を押さえるとどうしても音が少しくすんだ音になります。
開放弦だと響きのいい音が出ます。
オープンコードは、ギターを開放にしたままでひとつのコードが演奏できるようにします。
オープンGの場合、ギターをこんな風に調弦(チューニング)します。
第1弦 E → D
第2弦 B
第3弦 G
第4弦 D
第5弦 A → G
第6弦 E → D
ほら、こうすると左手は何も押さえなくてもGのコードができちゃうでしょ。
もちろん、曲を演奏するときは、ひとつの曲の中でいろんなコードが出てくるので、ずっと何も押さえないままでは曲になりません。それでも基本のコードができているというのは便利です。しかもいい音ですから。
新ちゃんの「ラングレー」はこのオープンGで演奏されているのです。
新ちゃんは、ハンセン病が再発したとき、左手の指がまったく動かなくなってしまいました。足も立てなくなりました。動くときには車椅子でした。
お医者様は、ギターなんて弾かないほうがいいと言いました。
それでも新ちゃんは車椅子に座ったまま、ギターを離すことができませんでした。
「これが僕のリハビリだ」と思って、ギターを握り続けました。
1本ずつ、1本ずつ、と動かし続けて、どうにか親指と人差し指と中指の3本の指を使えるようにしたのです。
自分には歌うことしかないのだという新ちゃんの強い思いがなければできないことだったと思います。
それでも、それまで動いていた指が使えなくなってしまったとき、これまでどおりにはギターを弾けないという思いは新ちゃんを暗く支配したと思います。
オープンコードを使ってみようと思いついて、やっと工夫すれば何とかなるんだという自信を取り戻しました。
だから、新ちゃんのギターワークは魔法を創り出すための工夫がいっぱいなのです。
「生き直しコンサート」のキャンペーンで熊本のくわみず病院のリハビリ室でミニコンサート開いたとき、新ちゃんは初めて人前で自分のリハビリのときの話をしました。
病(やまい)に苦しんでいる人たちにとってはこれは何よりも励ましになりました。
涙を浮かべて新ちゃんの歌に聞き入った人たち。
私たちも新ちゃんからたくさんの勇気と優しさをもらいます。
これからも、みんな新ちゃんを応援してね!
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