戦さに敗れ西へ落ちんとする平忠度は、五条の藤原俊成の宿所にうちより
「願くは勅撰に一首」と鎧の引合せより巻物を取り出し奉る。「前途ほど遠し」と高らかに詠じ去る薩摩守を三位は涙をおさえて見送る。世静まり千載集編まれる。その中に、忠度の歌一首入れらる。勅勘の人ゆえ読み人知らずとて。
さざなみや志賀の都はあれにしを昔ながらの山桜
かな
平忠度