与一鏑を取ってつがひ よっ引いてひやっと放つ 鏑は浦響くほどに長鳴りしてあやまたず扇の要ぎわ一寸ばかり置いてひふっとぞ射切ったる 鏑は海に入りければ扇は空へぞ上がりける みな紅の扇の夕日の輝くに白波の上に漂ひ浮きぬ沈みぬゆられけるを 沖には平家弦を叩いて感じけり 陸には源氏箙を叩いてどよめきけり 平家物語