とくに病者になってからの子規は、自分を面積も容積もない宙の一点に置き、畳の上に臥ているなまの自分を客体化して見たり感じたり考えたりしつづけた。 このため文体がいよいよ平明になり、さらには写実として的確になり、犀利にもなった。
禍福錯綜人智の予知すべきにあらず 子規
司馬遼太郎「ひとびとの跫音」
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