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妹尾 盛夫役 |
(中井 喜一) |
妹尾 肇役(現在) |
(津川 雅彦) |
妹尾 敏子役 |
(桃井 かおり) |
妹尾 肇役(H、子供時代) |
(久野 雅弘) |
山本 新造役 |
(陣内 孝則) |
山本 勝造役(子供時代) |
(加藤 祐輝) |
小林 繁夫役 |
(吉岡 秀隆) |
鈴木 信介役 |
(大高 洋太) |
花房 恵三郎役 |
(窪塚 洋介) |
山崎先生役 |
(小市慢太郎) |
金田 正之役 |
(杉本 哲太) |
花房 タツ役 |
(岩崎加根子) |
山本 勝造(現在) |
(田中 邦衛) |
髭ヅラの先生役 |
(佐川 満男) |
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郷里の小学校の同窓会に50年ぶりに参加した妹尾肇は、昔の同級生と、共に生きた当時のことを思い出していた。
自身が「H」と呼ばれていた昭和15年の小学校時代。 Hの父・盛夫は高級紳士服の仕立て屋。母の敏子はタンバリンを
鳴らして、街頭伝道をする熱心なキリスト教徒である。 H兄妹にとっては、その母のタンバリンを学校の悪童たちに
からかわれる事がとても嫌あった。 Hの家庭では、父の商売や母の信仰から外国人との交際が多く
外人差別という考えを持たない様、子ども達に教えていた。
Hは度々、銭湯に行く振りをしてうどん屋の出前持ちをしている通称「赤盤兄ちゃん」の部屋へ行き、慣れないコーヒーを飲みながら、ジャズや恋の話を聞いていた。
彼は後に思想犯として逮捕されてしまう。 父の仕事先に連れられていったHは映画と出会う。
映画の魅力に取り付かれたHは、人気力士のブロマイドを集めて売り 入場料を作って、映画を観に行った。
そこでは近所に住む オトコ姉ちゃんと呼ばれている青年が仕事をしていた。
夏祭りの日、Hの同級生の勝造の父・バラケツの新造が、やくざとの争いの末に逮捕される事件が起きた。残された勝造は、オトコ姉ちゃんの元に身を寄せることに・・。
ある日Hと友達3人は、日頃の仕返しにと、泳げない勝造を誘って海へと船を漕ぎ出す。いつしか天気が荒れ遭難しそうになるが無事、友人の父に助けられた。
新造の死、友人の転校 様々な別れの中 いよいよ日本はアメリカと開戦 Hの父は、仕立て屋から消防士になった。
Hは小学校6年生になり、そのH達にも厳しい統制が始まったある夏の日、オトコ姉ちゃんに召集令状が届く。戦地に赴くことになったオトコ姉ちゃんは
Hに、宮沢賢治の詩に託した想いを、フィルムの切れ端と共に手渡す。 そしていよいよ出征の日。Hと勝造が見守る中、立派な挨拶を残しオトコ姉ちゃんは汽車に乗り込んだ。
しかし、彼は入隊前に脱走をしてしまう・・。 町には脱走したオトコ姉ちゃんを探す警官たちがいた。友達と釣りをした帰りに、トイレに入ろうとすると
、そこには首を吊って変わり果てたオトコ姉ちゃんの姿。 脱走兵ということでお葬式が営まれることもなく、
H一家と Hの友達が見送る中、須磨の海辺で火葬された。 これらの出来事が Hの夏であり、Hの戦争であった・・・。
50年後の肇は、勝造に言う。 みんな自分の心の中に生きていると。 「あの時代」は生きている。「生きること」それが生き残った者の義務であると
。(文:きさら)
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みどころと言うと、オトコ姉ちゃん登場シーン全部・・となってしまうくらい
忘れられないシーンばかりでした。そんな中から、夏祭りのひとコマ・・ 少年H
曰く他の女の人の誰よりも綺麗だったというのは 町の演芸会で踊りを披露するオトコ姉ちゃんの姿。公式HPのメッセージによると、このために日本舞踊のお稽古もしたとか。とてもしなやかで、妖艶。少年のナレーションがなければ洋介くんとは気付かな
いか も。 そして、銭湯での入浴シーン。 手拭い一枚だけを身に纏っただけの洋介君。
細身でありながら、均整のとれた肢体。 透き通るような白い肌、まるで白磁器のよう・・
色気よりは、芸術を感じさせるような、それでいてちょっとどきどきのシーンです。最大のみどころだと思うのは全編を通して、オトコ姉ちゃんがH少年に向ける笑顔ではないでしょうか。
召集令状の来た晩に、オトコ姉ちゃんはHに宮沢賢治の詩に託した想いを伝えます
。 「宮沢賢治のように、君も純真で無垢な心を持ってくれることを祈る」と。
オトコ姉ちゃんこそ、無垢な心を持った青年ではなかったかと思えるのです。
H少年に向ける限りなく優しい笑顔にそれを感じました。(文:きさら) |
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