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水彩画のように美しいロードムービー
2000年サンダンスNHK国際映像作家賞受賞作が一年じっくり熟成され、森監督によって映画化された(2002年公開)。森監督自らが原作・脚本・監督を手掛けている。日々の生活の中で時に淀んでしまう現代人の心が、主人公・テル〔窪塚洋介〕という“純粋無垢”な青年に触れることにより、遠い昔に忘れ去ったピュアな心にそっと触れられる暖かいストーリーとなっている。何の邪念も介在しない人間本来の無償の“アイ”という形が、なんのてらいもなく観る者の心に入り込んでくる。彼自身の透明感がそれを助けるかたちで、存在感のあるテルは空想の世界の住人だとは思えないリアルさを備えている。危ういバランスの中にありながら主人公・テルの純粋さは、彼でなくては演じられなかったかもしれない。
幼少期にあることがきっかけで“頭に傷”を持つ主人公<テル>は、祖母と二人暮しをしている。祖母の経営するコインランドリーで“町の見張り番”と称し、そこに訪れる人々を温かく見守っている。そこへ現れた心に深い傷を持った女性<水絵>に無意識のうちに魅かれ、コインランドリーに忘れたワンピースを届ける小さな冒険の旅がはじまる。・・・この二人に偶然出会う鳩使いの<サリー>役もまた、ある意味でテルに癒される人物の一人。その憎めないキャラクターが物語に更に人間味を添えている。
心の洗濯“Laundry”・・・
原作著書のあとがきには、この映画の基になったイメージ・ストーリーが描かれている。人の心には邪念もあり、時にはどうしようもなく淀んでしまうものの、この作品に描かれている<テル>を通して、今の私たちが忘れてしまった純粋な心を思い出させてくれる。疲れた心を癒し、淀んだ心を洗い流してくれる・・・そんな作品「Laundry」。ぜひ一度、このピュアな原作にも触れてみてください。
ビジュアル・音楽のステキなコラボレ
映画ではイラストレーターのMAYA MAXXさんが劇中アニメーションを担当。そして暖かい歌声のatamiが主題歌。ボニー・ピンクが書き下ろした作品もあって、心優しいイメージがそこはかとなく伝わってくるステキなコラボレ。
「テル」像
“頭に傷を持つ”という設定の<テル>、実は知能に障害がある青年。幼少期の不幸な事故(このあたりは原作のみに書かれています)が元で、彼の記憶は常にあいまい。でもそんな記憶の蓄積は彼にさほど必要がなく、人間の心の中でもっとも大切な「アイ」で生きる人物。そこには大人の邪念も邪推もないピュアな人間の姿がある。どこにも存在しないかもしれないのに、決して空想の世界の人物だとも思えないリアルな魅力ある<テル>は、しぐさの一つ一つも微笑ましくて私たちの心を捉えて離さないはず。
ひとつ付け加えるなら、この作品はあくまで“障害者”を描こうという意図で描かれてはいない。監督の抽象的なイメージを具体化する手段として使われている。その辺の配慮もあるのだろうか、原作にある<テル>の幼少期の衝撃的な出来事が省かれている。とてもインパクトがあるシーンでありながら、仮にもその部分を作品に取り込んだならば、“障害者”という意識が色濃くなって少し違った作品になっていたのかも知れない。 |
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【Laundry】DVD |
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©メディア・ファクトリー
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ランドリーフォトトーリーブック |
著者:森 淳一 |
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映画「Laundry」がまるごと、実際のシーンごとのフォトと共に、監督自らが“物語”を書き綴っている。オールカラーのフォトストーリーブック。小説なんて苦手という人にも、絵本のように読めてしまう。“テル”と、いつでも会える手のひらサイズがとてもうれしい。思わずバックにしのばせて、取り出してはほくそえんでみたり・・・。(文:yuma) |
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©メディアファクトリー※1
発売 02',2,15/B6判・96P
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ランドリー【原作著書】 |
著者:森 淳一 |
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監督・森淳一自らが書き下ろした小説版。この原作の脚本は、サンダンス・NHK国際映像作家賞を獲得。どんな読み人をも拒まないやさしい言葉が、肩肘張らずに並んでいる。そして森氏自身のそこはかとないやさしさが、主人公“テル”に見事に描かれている。混沌とした現代に生きながら、こんなにも純粋に生きる姿があったのだと、疲れた心を癒してくれるステキな作品。(文:yuma) |
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©メディアファクトリー※1
発売 02',2,15/B6判・96P
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