陰陽師収録 第五話のSpoilerっスから、良い子は読んじゃダメだよ。
−−−夜。
亥の刻を半ば過ぎた頃である。
白い色をした、十四夜の月が、天の半ばほどにひっかかっている。
素足であった。
その素足で、ひたひたと、地面に落ちた自分の影を踏んでゆく。
神無月の半ばに近い頃だ。
明白な事であるが、十四夜の月
とは月齢13(14日)の事である、
又、亥の刻を半ば過ぎた頃
とは
亥 = 21:00〜22:59 であるから22:00頃と云う事で、日付は変わっていない。
つまり、犬麻呂が妖に逢ったのは、太陰暦 10月14日22時頃の事である。
「こうやって、ここからおまえの庭を眺めているとだな、なんだか、最近はこういうのも、これでいいのだなという気がしてきた−−−」
補強する意味で、晴明邸の庭に対する博雅の感想に付いて考えてみる。
此処まで言及されているのは
『玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること』の
これでは破れ寺ではないか。
と云う評価と、
『黒川主』の博雅には心地よい。
と云う心情と、
最近はこういうのも、これでいいのだなという気がしてきた−−−
と云う科白である。
これでは破れ寺ではないか。
と考えていた博雅は
庭を容認するように変化していると考えるのが自然である。
つまり、『玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること』事件は
他の二つ以前に発生している。
他の二件の前後関係は此れだけでは推測できない。
女が、静かに答えた。
「今から、思いおこせば、十五年前のことでございます。わたくしが、初めて、あのお方とお会いしたのは、わたくしが、まだ、十七歳の時でございました−−−」
「十五年前というと‥‥‥」
「まだ、あの方が帝におなりになる前のことでございます」
「うむ」
「あのお方が、わたくしの家にやってまいりましたのは、ちょうど、秋でございました。あの方は、鹿狩りをしていて道に迷い、道を捜しているうちに、山中で暮らしているわたくしの家の前に出たのだと、わたくしの母に申されました−−−」
村上天皇の即位は
天慶 9年3月16日(ユリウス暦 946年4月20日)と云う事は、十五年前
であり秋
とすると、
龍胆と村上天皇が逢ったのは 前年の天慶 8年秋(ユリウス暦 945年秋)以前でなければならない。
前述の博雅の感想を考えれば
『玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること』以降の出来事なので、
960年秋と批准出来る。
ユリウス暦 | 和暦 | 記事 |
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960-11-05 | 天徳4年10月14日 | 八条大路で犬麻呂、妖に逢う。 博雅、文をもらう。 |
960-11-06 | 天徳4年10月15日 | 七条大路で藤原成平、妖に逢う。 |
960-11-07 | 天徳4年10月16日 | (六条大路) 犬麻呂、目撃される。 |
960-11-08 | 天徳4年10月17日 | (五条大路) 犬麻呂、捕まる。死亡 |
960-11-09 | 天徳4年10月18日 | (四条大路) 博雅、晴明の屋敷に行く。 |
960-11-10 | 天徳4年10月19日 | 三条大路で、晴明、博雅、妖に逢う。 成平、死亡。 |
960-11-11 | 天徳4年10月20日 | 朱雀門で、晴明、博雅、妖に逢う。 |