ハリー教官から出撃準備の手ほどきを受け、
ようやく出発するシンゴとメグ。
時刻は敵となる精霊の出現率が低い08:00。
胸を躍らせ青空の下、颯爽とレンタ竜を駆る。
受けるは新人テスト。
はたして合格することができるのであろうか・・・。
竜使い・4日目
外に出るとそこは、さわやかな風が吹く高原だった。
どっしりとしたレンタ竜に乗り、
でかいなぁ、青いなぁ、なんて小学生並みな感想を述べていると、
メグが、今日は隊長をやらせてあげる、と言ってきた。
レンタ竜のおごりと合わせて、ふたつ貸し、だそうだ。
ちょこっと、貸しが増えてきて心配になってくる。
が、まぁ隊長という響きは悪くない。
『やろうども!俺様に続け!』である。
得意技は“いきなり背水の陣”である。
ヒゲの生えた武将気分でいると、
背後からノシノシという音が聞こえてきた。
『オラオラ!どいたどいたッ! キリコ様のお通りだッ!』
3頭のイカツイ竜が悠然とこちらに向かってくる。
先陣は黒い竜。
キリコだ。
係官の兄ちゃんがビビっていた、キリコだ。
『スィー・シェン!』
馬でいうところの「どーどー」の掛け声だろうか。
凛とした声で、竜を制止させるキリコ。
キリリとした顔には、くまどりのような模様。
『我が名はキリコ!
メグ、こいつがウワサの新人か?
前のやつは3日で逃げたが、どうせお前も同じだろう!』
へい、そうでございやす、すいません。
と、なぜかワケもなく謝ってしまいそうになる。
キリコにはそんな迫力がある。
しかし僕をビビらせておきながらも、
着任祝いということで、竜カードをくれた。
よくわからん性格だ。
AB型だろうか。
ともかく新人が先に出撃するなんて大それたことができるはずもなく、
先にキリコが突入することに。
『マー・クヮン・シェン!』
お祭りの御輿でいうところの「らっせーらー」の掛け声だろうか。
キリコの声で歩み始める黒竜。
そのまま切り立った崖の端にそびえる、竜の股をかたどった門へと向かう。
そして股をくぐったかと思うと
ドカーンという激しい音と共に、どこかへと消え去ってしまった。
『あのキリコがお供連れなんて・・・3!
今日はきっと大物狙いね・・・2!
にしても ヤな女だと思わない?・・・1!
そろそろドカンとくるころよ・・・ゼロぉ!』
カウントダウンしながら会話するメグに不思議がっていると…
ドカーン!
さきほど門をくぐったばかりのキリコ隊が戻ってきた。
どうやら門の先は時間や空間がまともじゃないらしく、
門の外側だとほんの数秒が、中では数時間であるらしいのだ。
要は、アレだ。
ドラゴンボールの“精神と時の部屋”だ。
戻ってくるなり軽く口論を交わすメグとキリコ。
『殺すぞ!』とか言われてるんですけど、メグさん。
と、キリコは急に笑いながら、ジョークだと言って
もうひとつ着任祝いをくれた。
僕には聖水M。
メグには得体の知れない、きらめく卵形の物体を投げてよこす。
謎の物体がグニョリとうごめくもんだから、
思わずブン投げてしまったメグだったが、
それは新人竜使いの給料半月分ほどの価値がある代物らしかった。
それほどのものを軽く扱うキリコに、
やはり凄腕の竜使いなのだ、ということを再認識させられる。
『これだけ恵んで落第なら荷物をまとめて いなかへ帰れ!』
と、はき捨て、キリコは行ってしまう。
見送りながら、
『あいつが世界ヤな女ランキングNO.1。
で、ついでに竜使いランキングNO.1、クレージー・キリコよ!』
と、メグ。
いやなヤツだが、圧倒的に強い。
このイメージはとても僕をワクワクさせる。
悔しいが、その実力は認めざるを得ない、
というのが昔っから大好きなのだ。
また、こーゆうキャラが味方になってくれたときの心強さったらない。
いやー、根っからのマンガ大好き少年だなぁ、僕は。(23歳)
『さ〜てと、アタシたちも行きましょうか』
というメグの声に、
キリコに羨望のまなざしを送っていた元マンガ大好き少年は
ハッと我に返った。
そうだ、新人テストだ。
冒険が待っているのだ。
よし、行くぞ!
野郎ども俺様に続け!
とヒゲ武将こと僕が意気揚々と突撃しようとすると、
『あ、ちょっと待って!給料半月分って言ってたよね?
は〜、モッタイないモッタイない』
と、メグはさっき自分でブン投げた物体を拾いに行ってしまった。
しゅるしゅるとヒゲを引っ込めた僕は、
「あんさんには、かないまへんなぁ」と、脱力してしまうのであった…。
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