俺の竜、見てくれる?
育成日記コーナー


 

  ハリー教官から、テスト合格を認定されたシンゴとメグ。
  まさに歓喜乱舞。
  
  ひととき、先に待つ精霊集めという厳しい仕事を忘れて・・・。


 竜使い・8日目

 「うっ、ううっ・・・。
  ここまで僕がやって来れたのはハリー教官のおかげです」
 と、たいしたことを教わってもないのに涙ぐんで見せる、僕。
 もちろん、眼球に指を突っ込んでのウソ泣きだ。
 涙とまんねぇ、とまんねぇ。
 ちょっと、やりすぎてしまった。
 目が真っ赤だ。
 
 ・・・と、脳内でキャラが勝手に動き出してしまう兆候が
 いきなり見え始めてしまったので、ほっといてとにかく先へ進もう。
 この病気はほうっておくに限る。
 
 「ところで おまえ、今日寝るところは決まってるのか?」
 実際のところはと言えば、合格の余韻は尾を引くことも無く、
 現実的な寝床の話をハリーにされてしまう始末。
 どうやら無計画にも、
 僕こと主人公は、泊まる宿も決めていなかったらしい。
 そんなボケ面をしている僕を見かねたのか、
 「ちょうど 偶然 たまたま・・・オレの下宿に空きがあるんだ。
  見た目はボロだが 飯のうまさは おり紙つきだぞ」
 と、なんともうれしい申し出をしてくれるハリー。
 むむむむむ。
 人の好意を無駄にしてはいけません。
 と、どこぞの誰かさんも言っていたことだし、
 無遠慮に、その言葉に甘えることにしよう。
 よし、と声に出して、
 もうひと突き目玉に打撃を加えて感激の涙を流そうとしていると、
 「ええ〜ッ? ちょい待ちィ!
  アタシのとなりも空き部屋なの」
 とメグ。
 ピタッとチョキの手を寸止めする僕。
 「ね、チームメイトなんだしさ 同じ宿しゃだと なにかと便利よ。
  それに、タイプの違う美人がアタシのほかに ふたりもいるの!」

 ふたりもいるの・・・!
 
ふたりもいるの・・・!
 ふたりもいるの・・・!
 
ふたりもいるの・・・!
 
・・・・いるの・・・!

 僕の頭にこだまする「ふたりもいるの!」
 なんて強烈な一言だ。
 不用意にアッパーカットを食らったボクサーのように
 クラクラきてしまう。
 完全にノックアウト寸前だ。
 重ねてメグの攻撃。
 「ねねね、どうですダンナ? サービスさせてもらいますぜィ」
 しかし、その言葉は空を切った!
 その隙に僕は、
 倒れ掛かった体を引き起こす!
 やべー、やべー。
 あやうくだまされるところだった!
 メグをよくよく観察してみると
 こわばった笑み。
 揉み手。
 中腰の姿勢。
 ダミ声。
 と、ぼったくりバーの呼び込み以上に怪しいではないか!
 僕は、あわてて亀のようにガードを固めることにする。
 そこへセコンドから、ハリーの一言。
 「モテモテだな、色男。
  で、どっちにするんだ?
  悪いことは言わねぇ オレんとこにしときなって」
 1秒で即決。
 ハリーの方へ向き直り、コクリと頷く僕。
 「よし、決まりだ!
  やっぱ 男は男同士だぜ」
 
 カーンカーンカーーン。
 タオルが投げられ試合終了。
 ある意味、メグに完敗を喫してしまったのだが、
 致命傷は避けられたので良しとしよう。
 僕は、オンボロだけれども飯がうまい
 ハリーの宿舎へ行くことにした。
 「そういうわけだ、メグ。
  連れてってやってくれ」
 と言うや片眉を上げて、にやりと笑うハリー。
 「サー イエッサー♪」
 元気いっぱい、はじけるような返事をするメグ。
 だがその顔にも“してやったり”という表情が浮かんでいる。
 ・・・。
 ・・・しまった。
 セコンドのハリーに助けられたと思いきや
 どうやら二人はグルだったらしい。
 結局はメグに、どこぞの宿舎へ連れて行かれてしまうようだ。
 やはり、法外な宿代をせしめる
 ぼったくり宿舎へ案内されてしまうのか。
 「宿しゃに行く前に基地の中を案内しよっか?」
 そんなメグの声も、もう僕には良く聞こえない。
 「はい」
 と、虚ろな目をして返事するだけだ。
 「んじゃ〜 マー・クヮン・シェン♪」
 ゾンビのような顔をしている僕とは対照的に
 満面の笑みを浮かべて歩き出すメグであった・・・。
 
 
 
 

               

 

 

 

雑記 : やはり日記は長かった。
プレイ時間にしてみると、ここまでで40分くらいでしょうか。