| オマケ其の1 |
「んっ………」 階下の部屋には、両親が食後の談話を楽しんでいる。 親が居る時。二人がリョーマの部屋で、行為に及ぶ事は、初めての事だった。 声を押し殺し及ぶ行為は、奇妙な興奮を煽られて行く。幾ら関係が両親にバレているとは言え、二人きりの時のように、明け透けに行為に及ぶ程、リョーマも桃城も開き直りは出来てはいなかった。 それでも、もう十分互いの熱に煽られてしまっている現状では、止める事は不可能だ。今ココで止める事は、理性だけでは捩じ伏せられない。だから二人は賢明に声を殺し、抱き合っている。それが益々互いの熱と興奮を高めて行くから、のめり込むしかできなかった。 「桃先輩……」 Tシャツを捲り上げ、入り込んで来る指の感触に、リョーマは声を押し殺す困難さを訴える。 「止められるか?」 リョーマの耳朶を愛撫する口唇が、密やかに潜められた声で、囁いた。 「んんっ…」 嫌々と、緩慢に細過ぎる首を打ち振る仕草。賢明に口唇を噛み締め、細い腕が、桃城の背に爪を立てている。それが何よりの言葉だと、桃城は判っている。 「リョーマ」 「やっ…」 情事の最中だけ、呼ばれる名前。情事の最中しか、リョーマは名前を呼ぶ事を桃城に許さなかったから、殊更桃城は情事の最中は、低い吐息で、リョーマの名前を呼ぶ事が有る。 耳朶の周囲を執拗に愛撫され、吐息で名前を囁かれ、嬌声が漏れる。細い躯が、組み敷く桃城の下で、ビクリと跳ねる。 「相変わらず、敏感」 クツクツ喉を鳴らし笑うと、桃城の指は、敏感に屹立している乳首を二本の指で挟み込み、小刻みに振動させると、リョーマは必死に嬌声を殺し、嫌々と激しく首を振り乱した。 桃城を挟み込むように開かれている下肢が、白いシーツに幾重もの波紋を描いて行く。 「くぅ…ッッ」 ねだるように細腰が揺れ動き、形良い指先が桃城の背に爪を立てた時だった。 「ヒッ!」 リョーマの掠れた細い嬌声が、鋭く放たれた。 「越前?」 「やっ…!」 リョーマが顫える嬌声で、桃城にしがみ付く。 「オイ?」 リョーマの反応に、桃城は怪訝に顔を上げると、 「ホァラ〜〜」 独特の鳴き声で、リョーマの足許で愛猫カルピンが、二人の情事の光景を眺め、ネコじゃらし宛ら忙しく動く足先に、舌を這わせていた。 「アチャ〜〜」 桃城は、忘れていたと、リョーマの足許にチョコンと佇む小さいネコを、脱力して眺めた。 「桃先輩のバカ」 「オイオイ」 俺の所為かよ、桃城はリョーマの理不尽な悪態に、けれどこの状況では、苦笑しかできなかった。 「タヌキ、お前も混ざるか?」 深々溜め息を吐くと、足許のカルピンに視線を映すと、意味など判っている筈のないネコは、それでも嬉しそうに鳴き声を上げ、リョーマに擦り寄った。 「桃先輩、早くどうにかしてよ」 フワフワの白い毛が、敏感になっている肌に触れれは、怺える術などなくなってしまう。それでなくてもももう十分すぎる程、桃城に熱を高められてしまっているのだ。 「どうにかってもなぁ」 「甲斐性なし」 「意味違うだろうが」 「どうでもいいから、早く」 「んじゃ、タヌキも混ぜるか」 「そんな事したら、今ココでもう終わり」 「お前が止められるんならな」 「バターネコじゃないんだから」 白皙の貌が紅潮し、桃城を呆れて睥睨している。持て余す熱が、肉と血の奥底から続きをせがんでいるのが判る。 「よく知ってんな、そんな言葉」 中学1年生が知ってていい言葉じゃないだろうと呆れて声に出せば、リョーマの睥睨はますます険しくなっていく。 「その中学1年生、速攻でモノにしたの、何処のダレだか自覚して、言ってるんスよね、当然」 「まぁ、でもアレだな。親父さんに言わせれば、タヌキは俺らの子供みたいに見えたって事だし」 珍しくもリョーマが動揺を色濃く現していた愛猫の行方不明事件は、見付けた自分が届に上がれば、リョーマが赤ん坊を抱くようにカルピンを抱いて、その横に自分が立っていたから、親子の構図だと、南次郎は盛大に呆れて大笑いした程だ。 「フーン、子供の目の前でこんな事すんのは、教育上良くないと思うけどね」 「2歳だろ?」 「2歳なら、判るんじゃないの?」 段々どうでも良くなってきたリョーマは、続きをせがむように、桃城の背に腕を回し、続きをねだり始めている。急速に、吐息が朱に染まり始めていくる 「オイオイ、教育上、良くないんじゃなかったのか?」 結局も情事の最中、積極的なのはリョーマの方だろうと、桃城は苦笑すると、 「教育的指導って事でだな」 リョーマの上から一端離れると、 「悪いなタヌキ。俺らはこれからお楽しみだ」 状況など判る筈もなく、キョトンとした表情で尻尾をユラユラ揺らしているカルピンを抱き上げた。 「お前、本当、越前に似てんな」 改めて良く見れば、キョトンとしている様は、無防備な時にリョーマが垣間見せるものと酷似していると今更気付く。ペットは買い主に似ると言うが、それは嘘ではないらしい。 「莫迦言ってないで」 疼く熱は、もう怺える術などどこにもなく、それは桃城でなくては、収まらない熱だ。 「ヘイヘイ。悪いなタヌキ。俺はお前の大好きなご主人様とお楽しみだから。少し外出ててな」 そう笑うと、桃城はカルピンを廊下に出した。廊下では、意味も判らず廊下に出されてしまったカルピンが、抗議するように鳴いていた。 |
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