TRIP



11月24日 木曜日 はれ        (その2)

改札口にはインフォメーションができており、
一番早く新大阪に着く新幹線を尋ねると
9:10があると言う。
あまり時間が無い。
足早に13番ホームに向かうと、
たくさんの人が並んで新幹線を待っていた。
あちゃ〜、座れるんかいな?
少しセカセカしながら待っていたが、
まもなく入ってきたレール・スターは
結構空いていて窓際に座ることができた。
新幹線は定刻通り動き始め、
回ってきた車掌さんに
新大阪到着予定時刻を聞くと、
10:44だと教えてくれた。
当初の予定では俺の乗る関空特急“はるか”は
新大阪を10:46に出るのだが、
走れば間に合うかな〜?
まぁ、少々失敗してもまたやり直せばいいんだ、
なんとかなるさぁ!










新幹線に乗るのは久々で、
朝に乗るのは気持ち良かった。
広島の街並みが窓の外を流れる。
ちょっと寂しかったけど、
朝もやの掛かった街並みは美しく、
“あさ”って感じがした。
一息つくと早速日記を書いた。
新幹線に乗っている間はずーっと書いていたけど、
今朝の涙シーンを書くときは
涙が止まらなくて困った。
新幹線はあれよあれよと進み、
どんどん駅を過ぎてゆく。
レール・スターは他の“のぞみ”や
“こだま”に比べてすごく乗り心地がいいので
気に入っている。
ほんま早いわ〜!










新神戸を過ぎる頃には、
すぐに降りれるように
降り口のところへ移動した。
通りかかった車掌さんに
“はるか”のホームを聞くと、
11番ホームだという。
よ〜〜〜しゃ、走ったるで〜〜〜!!!
ドアの窓から大阪の街を見る。
大阪はやっぱり大きい街だな〜・・・
なんて思っていたら、
新幹線はみるみる速度を落として、
まだホームに着いてもいないのに
止まってしまった。
え〜〜〜っ、マジで〜?
どうやら、信号待ちらしい。
くそ〜〜〜、ど〜なっとんじゃ〜!!!
イライラしながら何度も時計を見たが、
なかなか動き出す気配はない。
ようやく動き出した頃には、
すでに10:46を回っていた。
あ〜〜〜、また俺の乗るはずだった
はるかが走っていくのが見える〜〜〜・・・










まぁ、しょ〜がない。修正 修正! 
11:16の“はるか”に乗るため
11番ホームに行き、
自由席の号車のところに並んだ。
今出たばかりなので一番乗りだったのだが、
アッという間に俺の後ろにも
関空に行く人の列ができた。
ここに並んでる人、
みんなどっか海外に行くんだろうか?
まもなく入ってきた“はるか”は
ガラガラだったので、楽勝で座れた。









“はるか”は大きな窓でとても開放的だ。
それにしても、大阪の街は
ゴチャゴチャしてるな〜。
今までも何度か関空を利用するときに
“はるか”に乗ったけど、
いつ通ってもこの線路沿いは家やビルが
無秩序に並んでいて、車がわんさか走っていて、
電線がクモの巣のように張りめぐらされている。
こんな所には住みたくないな〜。
やっぱ、広島はええとこじゃ!
ほどよく都会で、ほどよく田舎で・・・
朝から、イライラのしっぱなしだったので、
ここまで来てようやくゆっくりできた。









しばらくすると、大きな橋を渡り
空港が見えてきた。
いつ見ても関空は大きいな〜!
と飛行機を眺めながらふと思ったのだが、
関西空港って空港だけの
人工島なんじゃないだろうか、
などと考えながら予定より約30分遅れて
12:02にやっと到着! 
急がなきゃ・・・ 
空港の建物に入ると、
この時期すでにクリスマス・ツリーが飾られ
クリスマス・ソングが流れていた。
今からアフリカに行くという気分とは
えらく違っていたので、妙におかしかった。









国際線出発ロビーの4Fまで、
なが〜いエスカレーターに乗り、
航空チケットをもらうために
JTBのカウンターに向かった。
「遅くなってすみません。」
引換券を見せながらそう言うと、
係員さんはカチャカチャと機械に
何か言葉を入力し、
チケットを発行してくれた。
ふぅ〜、良かった!
とりあえず問題無かったようだ。
「この航空券は関西空港からミラノ、
ミラノからダカールの往復券になります。
ダカールからバマコ(マリの首都)の
チケットはダカールでもらってください。」
「解りました。
チェック・イン・カウンターはどこですか?」
「アリタリア航空はAカウンターで、
すでにチェック・インが始まっています。」










今度は足早にAカウンターを目指すと、
イタリアへツアーで行く人たちで
長蛇の列になっていた。
あちゃ〜、こりゃまいった!
イタリア旅行は、今でもかなり
人気が高いようだ。
様子を見ながらカウンターに近づくと、
団体客と個人旅行で行く人は
並ぶ列が違っていた。
ツアーで行くのが大嫌いな僕としては、
人数の少ない個人旅行者の列に
並んでいるだけでかなりの優越感だった。
チェック・インしてくれた人は、
制服の似合うすこしキリッとした
かわいらしい女の人だった。
空港職員はキビキビしていて
いつ見ても気持ちがいい。










「ミラノで乗り換えるので、降りやすく、
窓際にしてほしいのですが・・・」
「あいにく窓際の席は空いていません。
降りやすいように前のほうの
席をお取りしました。
ミラノ、ダカール間は窓際を
お取りしました。」
飛行機の窓からぼんやりと外を
眺めるのが大好きな僕としては、
ガッカリだった。
遅く着いた影響がこんなところに
出てしまった。
「乗り換えのこともあるので、
荷物は持ち込みたいのですが・・・」
女の人は、重さを測る機械の上に
荷物を載せるように指示した。
「持ち込んでいただいて結構です。」
「搭乗は何時からですか?」
「13:15を予定しております。」
よっしゃ〜、持ち込めることになったぞ〜!










とりあえず、千秋に間に合ったことを
知らせなきゃ!!
携帯電話は持ってきていなかったので、
お金を崩さなきゃいけない。
飛行機の中は乾燥するから
水を買っておこう。
近くの売店でペットボトル入りの
ミネラルウォータを買ってお金を崩した。
公衆電話から家に電話をかける。
「もしもし、今関空に着いたよ!」
「大丈夫だった?」
「うん、でも少し遅くなったぶん
窓際の席が取れんかった。」
「ごめんね・・・」
「平気平気! 飛行機にはちゃんと乗れるし、
荷物も持ち込めるし、バッチリよ!」
そう言いながらも、ちゃんと席が取れて
アフリカまで行けることが、
うれしいことなのかどうなのか
よく解らなかった。









「寂しくないか?」
「うぅん、大丈夫!」
「そうか、じゃあそろそろ小銭が
無くなりそうだから行くね!」
「うん、気をつけてね・・・」
「ありがとう、じゃあ・・・」
そう言って電話を切った。
千秋は少し元気そうだったけど、
俺は相変わらず寂しくてしょうがなかった。
イスに座りしばらく気持ちを落ち着けてから、
出国手続きをしてもらうための列に並んだ。
この先にあるゲートを過ぎると、
もう後戻りはできない。
あ〜、ついにここまで来てしまったか・・・
少し勇気を出して『えいっ!』と
ゲートをくぐった。



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