TRIP
機内食 その3 |
11月24日 木曜日 はれ (その6) おおっ、食事が配られ始めたぞ! 今度のメニューは鶏肉のソテー、 オムレツは解るのだが、 なんだかよく解らない食べ物もある。 それに、チーズ、果物、パン、 パンはおかわりができるようなので、 ひとつもらった。 俺は基本的に食べ物を残すことが 嫌いなので、よく解らない食べ物も ぜ〜んぶ平らげるとお腹いっぱいになった。 |
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食後のコーヒーをいただきながら 外を眺めると、海岸沿いにびっしりと 光る街が見える。 ってことは、ここはもう アフリカなのだろうか? 航空マップを見てみると、 あの街はモロッコの カサブランカのようだ。 アフリカにこんなに光る街があるなんて、 ちょっと驚きだった。 |
カサブランカの風景 |
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外を見ながらぼんやりとしていると、 満腹のせいか少し眠くなってきたが、 エコノミーの席で熟睡するのは難しかった。 飛行機はすでにサハラ砂漠の上空を 飛んでいるらしく、 砂漠の上は全く明かりが見えないが、 星がとても近くに見えた。 そんな景色を眺めながら 日記を書いていると、 日記帳の真ん中のページ辺りに、 何かが貼り付けてあるのに気が付いた。 『んんっ?何だろう・・・』 不思議に思い、ページを繰って見てみると、 なんとそこには千秋からの手紙が 貼り付けてあった。 |
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― 祝、念願のアフリカですね!! 不安だらけの旅、きっと宝物になるよ。 1日1日しっかり色んな人、物、街を見て 心に焼きつけて下さい。 私のことは心配しないで!! お互い全くちがう世界で、 自分の希望が叶う時間です。 離れているのは寂しい... けれど、とても幸せな事なのだからね。 お互いを充実させるための良い体験だと 心から思っているよ。 そして不安だけれど、そこに自分の身を置き、 体験したいと思い、実行に移す、 そんなあなたのことを誇りに思います。 ステキなだんな様よ! 近頃はわたし、体調よくなかったりで 心配かけてしまったネ。 つかれたでしょう・・・ お仕事のことも忘れて、 アフリカ満喫!!しなさい! ただ、ムリはしないで... 心が惹かれても、 危険な所には行かないこと! 体調管理はしっかりする事! ちゃんと判断しなさい! わかってるよネ! お土産話、楽しみに待っています。 ちあき 2005,11,23 PM2:40 この手紙、いつよむのかな〜?? へへへ |
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く〜〜〜、千秋のやつ、 いつの間にこんなの書いたんだろう? ちきしょ〜、粋なことするぜ! 一人旅なんて我がままばかりしてさ〜、 誇りに思うだなんて・・・。 う〜ん、涙が止まらん! 俺だって千秋のこと誇りに思ってるよ。 だんなの我がままをきいてくれて、 アフリカまで行かせてくれてさ! 寂しいし、不安だらけだけど 頑張って行ってくるぜ!!! |
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イタリア時間の0:00を回った頃から、 飛行機は高度を下げ始めた。 そろそろ虫除けスプレーを塗っておこう。 マラリアなんて絶対なりたくない。 |
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インターネットで調べたところによると、 『セネガルではマラリアの受診率(35%)、 死因(年間8,000人) ともに1位の疾患で、 夕方から夜間、ハマダラ蚊に刺され感染する 原虫疾患(原虫が身体の中で繁殖していく)。 治療開始が遅れると 脳性マラリアを発症(原虫が脳で繁殖)し 死亡することもある。 現地に2週間以上滞在する予定のある人は、 予防薬を内服することが望ましい。』 と書いてあった。 マラリアに限らず、 すでに予防接種を受けた“黄熱病”、 インドを旅行したとき滞在していたホテルの 同室のやつがかかった“デング熱”等、 蚊を介在してかかる病気が結構多く、 それらを予防するには、 まず何よりも蚊に刺されないことが一番だ。 ついでに書いておくと、 2005年春にセネガルでは “コレラ”が大流行しており、 約3,500人の人がかかり 54人が死亡しているらしい。 それに、アフリカでは今でも “狂犬病”や“エイズ”も油断できない。 |
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窓の下にたくさんの灯りが見え始めた。 いよいよセネガルに到着だ! この街で、これからどんなことが 起きるのだろう? 期待もあるが不安のほうが強い。 オレンジ色の灯りに照らされた バスのガラージュ(バス・センター) が見える。 壊れかけた家もある。 道は舗装もされてないようだが、 結構大きなビルも見える。 全てが砂埃の中に煙っているように見えた。 あ〜、いよいよ着いてしまう・・・ 恐怖で顔が引きつるので、顔の体操をした。 現地時間11月25日 0:30 日本時間9:30 家を出て約25時間30分かけて ようやくセネガル・ダカール空港に到着。 ついに来てしまった・・・ |
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ドキドキしながら飛行機を出る。 うっ、暑い! ミラノの寒さがうそのようだった。 空港建物はすぐ近くにあるが、 バスで移動した。 バスを降りると階段を数段上って建物に入る。 階段の横にちょっとした花壇があり 木が植えられているのだが、 その周りには貝殻が散りばめてあって その辺りからコオロギのような 虫の鳴き声が聞こえてきた。 |
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建物の中に入ると少し広いところに 机が並んでいて、 そこで入国カードを書くように指示された。 今まで行った海外旅行では、 たいてい飛行機の中で入国カードが配られ、 その国に着くまでに飛行機の中で ゆっくり書いていたので、 この手際の悪さにはムッとした。 机の上には日本のように ボールペンが備え付けられてはいないので、 鍵を掛けているカバンの中から 筆箱を出そうと思うのだが、 気持ちがあせっていて なかなか取り出せない。 やっと取り出して、いざ書こうと思うと 今度はボールペンのインクが 思うように出ない。 も〜、こんなときに限って何でなん!!! |
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かなりイライラしながら 書き込んでいくのだが、 イライラしているからか、 書き方がよ〜解らん! 空港の人なら英語が話せるだろうと思い、 勇気を出して、近くにいた黒人の職員に 話しかけてみた。 「すみません。」 「○△♂◆※」 緊張しているせいか、 おじさんはなんて言っているのか さっぱり解らない。 「えっ?」 「サヴァ?」 今度はなんとか聞き取れた。 そうか、おじさんは 『サヴァ?』って言ってたのか! |
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『サヴァ?』というのはフランス語で、 『元気?』の意味だ。 こちらが英語で話しかけたので 英語で答えてくれると思っていたのが 間違いだった。 「サヴァ、ビアン(元気です)」 笑顔で答えたつもりだが、 緊張で上手く笑えてなかったと思う。 おじさんはとても優しい人で、 書き方を手伝ってくれるのだが、 おじさんの話すフランス語も英語も よく解らなくて困っていると、 もう一人職員が来て、 二人がかりで教えてもらって なんとか書き終えることができた。 ふぅ〜! |
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次は入国審査だ。 審査官にパスポートと 先ほど書いた入国カードを渡すと、 審査官は気だるそうにチェックをしながら いくつか質問してきた。 「観光かい?」 「はい、そうです。」 「何日?」 「明日の朝にはマリに飛ぶ予定です。」 「あ〜そう。ところでさ〜、 俺コーヒーが飲みたいんだよね〜。」 一瞬、耳を疑った。 「何ですか?」 「だから〜、俺はコーヒーが 飲みたいって言ってんの〜!」 |
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今まで読んだ東南アジアや 発展途上国の旅行記に、 入国審査官や国境の役人が ボールペンを借りておきながら 返したがらないとか、 カップルが通りかかると Hのときの体位を聞きたがる奴がいると 書いてあったが、 実際に自分がこういった審査官に 出くわすとは思ってもいなかったので、 かなりビックリした。 「ノー!」 そう答えると、 審査官は大してせがむわけでもなく 面倒くさそうにパスポートに スタンプを押してくれた。 ほんとにこんな奴がいるんだな〜・・・ |
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さて、これでなんとか 入国も許されたわけだし、 このまま空港に残って バマコ(マリの首都)の 飛行機を待つことにしよう。 時間はすでに深夜1:00を回っている。 バマコへのフライトは 朝8:30だし、 こんな夜中にアフリカの地を さまよう勇気は無かった。 それに、空港を一歩外に出れば ホテルの客引きやタクシーの運転手が わんさかつきまとってくることは 容易に想像できた。 |
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到着ゲートの横に職員がいる。 「明日の朝バマコに行くんですが、 待合室はどこですか?」 そう尋ねると、その職員は 俺の後ろにいる職員に、 こいつはトランジット(乗り換え客)じゃけ〜 連れて行ってやってくれと、 頼んでくれた。 ゲート職員にお礼を言って振り返ると、 なんとそこには、 先ほどのコーヒーせびり審査官が 立っているではないか。 ゲー!!! そいつは麻薬でもやっていそうな 赤い目をして、 ついて来いとばかりに ノッソ ノッソと歩き、 ある部屋へ案内してくれた。 「この部屋で、待っときな!」 しかし、その部屋は誰もいなくて 明らかにおかしい。 なんとか逃げなきゃ!! |
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