TRIP



11月24日 木曜日 はれ   (その7)

「あの〜、トイレに行きたいんですが、
どこですか?」
とっさに思いついた言葉は
それしかなかった。
「あ〜、あっちだ!」
それを聞いて、そいつの指差す方向に
足早に逃げた。
も〜、参るよな〜・・・
逃げる口実にトイレの場所を聞いたのだが、
実際に用を足したかったので
トイレを探すと、
階段を下りて地下に
行くようになっていた。
入り口にまたまた怪しい黒人女性が
イスに座っている。
たぶん用を足した後に、
使用料としてチップを
請求するのだろうが、
漏れそうだったので中に入ると
男性用の便器が無い!
うわっ、間違えた!
驚いて急いで外に飛び出すと、
先ほどの怪しい女が「ここよ!」と、
再び同じところへ案内してくれる。
どうやら、ダカールでは
男性用の便器は無いようだ。
とりあえず、用を足して外に出てみると
案の定、先ほどの女が
チップを要求してきた。
「俺、まだアフリカのお金を
持ってないんだ。」
到着したばかりで、
まだ両替もしてないので
本当にアフリカのお金を
持っていなかった。
しかし、その女は英語が解らないらしく
しきりに手を差し伸べて
チップをくれと言っている。
わぁ〜、もうダメじゃ! 逃げろ〜!!!
階段を駆け上りながら振り返ると、
女はイスに座ったまま身動きもせず
上目遣いにジローッと
こちらを見つめていた。










アフリカアフリカアフリカアフリカアフリカ
さて、待合室はどこなんだろう?
ウロウロしながら、
ちゃんとしてそうな職員を探して
聞いてみると、
エア・セネガルはあっちだと指差す。
ほんまかいな?
そちらの方向へ歩いていくと
確かに出発ゲートがある。
再びゲート近くにいる職員に
持っているチケットを見せながら尋ねると、
この辺りで待つように言われた。
空いている席について
しばらく待っていたのだが、
よく考えてみれば
俺の持っているチケットは
クーポン券のようなものなので、
まずエア・セネガルのカウンターに行って
搭乗手続きをしなければならないはずだ。
それに、飛行機に乗るための
手荷物検査等も受けてないから、
やはりここもおかしい!
くそ〜〜〜、ど〜なっとんなら!!!
先ほどの職員に、もう一度今度は堂々と
しっかり聞き直してみた。
「俺は、チケットをまだ持っとらんけ〜、
エア・セネガルのカウンターに
行きたいんじゃ!」
そう言うと、その職員は
ポカーンとして一向に
俺の状況は解ってない様子だったが、
とりあえずエア・セネガルの
カウンターの場所だけは教えてくれた。









出発ゲート側から荷物検査のところを
逆に通り抜け、
出国審査をしているところも
逆に通り抜けると(初めての経験だ!)、
やっとエア・セネガルのカウンターを
見つけることができた。
カウンターには二人の女性がいた。
「すみません、この飛行機で
 バマコまで行くんですが・・・」
「その飛行機の手続きは
 朝6:00から始まるから、
 その時また来なさい。」
「それまで空港で待っていようと
 思うのですが、
 待合室はどこですか?」
「待合室は無いから、
 あの辺のイスにでも座って待ってたら?」
そう言われ、その部屋の端にある
イスに座った。
イスといっても、日本のデパートや
駅にあるような、ちゃんとしたベンチが
あるわけではなく、
どこかの部屋で余ったイスや
壊れかかったイスが隅っこのほうに
追いやられているだけのものだったが、
それでも座っていれば、少しはホッとした。









ふ〜、やっと着いた〜!
ダカール空港の風景















トレーナーを脱ごう!
とにかく暑かったのだが、
ホッとできる所に来るまで
脱ぐ余裕なんて無かった。
夜中でもフライトはあるらしく、
たくさんの人がやってくる。
ほとんどの女性は
民族衣装を着ているし、
男性も着ている人がいる。
俺もここへ浴衣を着て来たら
どうだろう、とも思ったが
マラリアが怖いので、
すぐに考え直した。
しかし、中にはジーンズ姿の人もいて、
俺の横に座ってるねーちゃんは
携帯電話も持っている。
アフリカにも携帯があるんだね〜!









少しゆとりができたけど、
怖くてとても眠れそうにはなかった。
それにしても、空港職員くらい
ちゃんとした奴を雇ってもらいたいもんだ、
と思ったりもするが、
よく考えてみれば、
到着ゲートから一旦外に出て
それからここに来るとすれば、
たぶんホテルの客引き等に囲まれて
大変だっただろうから、
これはこれで良かったのかもしれない。
夜中は空港が閉まるんじゃないかと
心配していたけど、
3:00近くになっても
空港は閉まる気配もないし、
ここなら安心だ。
ちょっと休憩じゃ!










時間が経つと、
先ほどまですごく暑かったのに
少し涼しくなってきたので、
またトレーナーを着た。
場の状況にも少し慣れてくると、
なんだか力が『モリモリッ』と
湧いてくるような気がしてきた。
それは何故なのかは
よく解らなかったけど、
日本に帰ってもまたここに
来たくなる気がしてきた。
それは、人類のルーツが
アフリカにあるから、
その遺伝子が目覚めているのか
その辺のことはよくは解らないが、
なんとも不思議な感じがした。



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