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11月26日 土曜日 はれ   (その1)

も〜、やっぱり眠れんで〜!
夕べは1:00前にベッドに入ったけど、
少し眠っては目が覚める。
蚊帳を吊ったので蚊については少し安心だけど、
とにかく暑い!
それでも無理やりなんとか少し眠ったかと思ったら
夜中の3:00頃玄関の扉をノックする音で目が覚めた。
急いで玄関を開けると、フランス人の若いカップルが
ドミに泊まりに来たみたいだ。
ホテルの若者は身振り手振りで、
玄関の扉の鍵は夜でも掛けないようにしてくれ!
と、伝えて帰っていった。
ふたりのフランス人は(夫婦かな〜?)
しばらくゴソゴソしていたが、
やがて眠りについたみたいだけど、
お陰でこちらはしっかり目が覚めてしまった。
時差のせいなのかもしれない。









結局ほとんど眠ることもできず
5:20頃、起きることにした。
音をたてないように荷造りをして、外に出る。
お〜ぉ、涼しい!!!
でも、中庭ではソーリーはまだ眠っている!
「(無声音で)ソーリー、ソーリー、6時だよ!」
小声で起こすと、
ソーリーはビックリしたように起き上がり、
大急ぎで用意を始めた。
コラ〜ッ!
それでも、6時15分過ぎくらいにはホテルを出た。
ソーリーは、ほんの少しの自分の荷物と、
2リットル入った
ミネラル・ウォーターのペット・ボトルが
6本くらい入った箱を持っている。
どうやらそれは昨日契約した
1日2リットル×3本の俺の飲み水のようだ。
契約時には行く先々で買うものだと思っていたというか、
それが当たり前だと思っていた。
どこか安く買えるところが
バマコにあるのかもしれないが、
それにしてもここから持っていくとは・・・










朝はさすがに閑散としていたが、
大通りに出るとタクシーはすぐに見つかった。
少し明るくなった街は、とてもアフリカな朝だ!
壊れていて閉めることのできない
全開の窓から入ってくる風がすごく気持ちいい!
いくら閑散としてはいても、
やはりこの風景にはたじろいでしまう。
約30分で、ソゴニコのバス・ターミナルに着いた。
お金を払う時ひと悶着あったみたいだけど、
ソーリーが上手く交わしてくれたみたいだ。










シェフの頭が天井に当たりそう(笑)
バスターミナル近くのレストラン


















バス・ターミナル周辺は相変わらず
ゴチャゴチャしているし、
ゴミも多くて汚いし、臭い!
そのゴチャゴチャした中の一軒の店で朝食だ。
横長のテーブルに、木でできた横長のイス。
テーブルの向こうで、背の高いシェフが
客の注文を聞いている。
ソーリーとイスに座ると、
ソーリーが適当に何か注文してくれた。
シェフは腕の長さくらいあるフランス・パンを
適当な長さに切りバターを塗ったものと、
飲み物は大きなガラス・コップに
半分くらいコンデンス・ミルクを入れ、
ネスカフェの粉末状のものを入れて
湯で溶いたものを出してくれた。
うわ〜っ、あっま〜い!!!
こんな甘いコーヒーを飲んだのは生まれて初めてだ。
シェフは自分が作ったものを
異国人がどんな顔をして食べているのか
気になるようで、チラチラこちらを伺っている。
そして目が合うたびにニッコリ微笑んでくれる。
コーヒーは甘かったけど、
それでも結構美味しく頂いた。
「メルシー(ありがとう)」
そういって店を出た。










バスの待合室でしばらく日記を書きながら
バスの出発を待った。
待合室にはいろんな人が入ってくる。
そして、ここでも子供に乳を飲ませている女の人がいる。
おっ、今度は目元以外全てを真っ黒い布で
覆った人が入ってきた。
お〜ぉ、エキゾチック!
8:00頃からバスに乗ることになり、
乗客はバスの入り口付近に集まった。
俺の乗るバスはベンツ製でカッコイイ!
名前を呼ばれると順にバスに乗るようだが、
なかなか名前を呼ばれない。
やっとのことソーリーの名前が呼ばれバスに乗り込むと、
外見とはえらい違いで中はすごく汚い。
バック・パックをイスの上にドンと置くと、
ホコリがブワーッと舞った。
ゴホッ、ゴホッ・・・










全員が乗り込むまでに30分以上費やし、
8:40頃ようやく出発だ!
座席は満席になっていた。
バスはラフィア(ホテル)とは
反対の方向に走り始めた。
いくら外見はベンツであっても
クーラーなんて当然なく、窓を開けて走っていく。
両サイドにたくさんの露店があり、
肉屋は切り刻まれた何かの肉を所狭しと並べ、
軒下にも大きな肉のかたまりを吊るしている。
ロバが木を積んだリアカーを引っ張っている。
牛が散歩し、人々は頭の上に
いろんなものを積んで歩いているが、
30分も走るとそういった風景もなくなり、
時々村がある以外は広大な土地に
いろんな木々が生えているだけだ。









「トム、あの木はバオバブの木、
 こっちはコットン(綿)の木だ。」
バオバブの木は西アフリカ一帯に生息しており、
サンテクジュペリの「星の王子様」にも
登場するので、知っている人もいると思う。
『神様が間違えて上下逆さまに植えてしまった。』
という話を聞いたことがあるが、
とても面白い形をしている。
大きいものでは直径が9メートルにも
なるのだそうだ。
コットンは今年の生産量一位が
隣の国ブルキナファソ、二位がマリだったのだが、
ソーリーが言うには今年はマリが奪回するのだそうだ。
道は一応舗装されており、
どこまでもまっすぐな道が続く。
北海道に行ったことのない俺にとっては、
こんなにどこまでもまっすぐな道は初めてだ!










なんとも雄大な景色・・・
バスの窓からの風景










「なぁトム、日本のことについて教えてくれよ。
 日本は島国なんだろ。」
「うん、よく知ってるね!
 大きく四つに分かれてて、ホッカイドウ,
 ホンシュウ,シコク,キュウシュウって呼んでいる。
 そして少し離れてオキナワという小さな島があるんだ。」
「ヒロシマはどこだ?」
「ホンシュウにあるよ。」
簡単な地図を書いてあげて広島を記しした。
「トムは何教だ?」
「俺はブッディスト(仏教徒)だ。
 日本人のほとんどがブッディストで、
 人間は生きていること自体が修行であり、
 死ぬことによって悟りを開くことが
 できるという考え方なんだ。
 だから、ブッディストは修行を積むことによって
 仏陀になることができるんだよ。」
「う〜ん、興味深いね。マリはほとんどが
 ムスリム(イスラム教徒)だ。
 ムスリムの神の考え方に、
 “インシャル・アッラー”というものがあって、
 全てのことは神の同意がなければ行われないんだ。
 自分のやりたいことや、やろうとすることは、
 神が同意してくれればできるし、
 してくれなければできない。」
な〜るほど、夕べ思うように眠れなかったのは
神の同意がなかったからかもしれない。










「今、世界中で“タリバン”という言葉は
 世界中に悪い印象を与えているけど、
 アフガニスタンのタリバンと
 マリのタリバンとは別物で、
 マリでは物事を学ぼうとする人のことを
 タリバンというんだ。
 言い換えれば“スチューデント(生徒)”
 みたいなもんだ。
 アフガニスタンのタリバン、ビンラディンは
 悪いタリバンなんだよ。」
今まで、イスラム教とかタリバンと聞けば、
とにかく危険でとんでもない奴らだと思っていたが、
必ずしもそうとも限らないようだ。










相変わらず外の景色は広大な大地が続き、
大きな岩山が遥かかなたに見える。
のどかな風景を見ているうちに
だんだんリラックスして眠くなってきた。
やっと神の同意があったらしい。
インシャル・アッラー!
熟睡というわけにはいかないが、それでもかなり眠った。




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