TRIP



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11月26日 土曜日 はれ   (その2)

バスの中は、サリフ・ケイタやグリオなどの
マリの音楽が流れている。
1時間に一回くらいの割合で休憩があり、
バスが停まると窓の外や車内に
たくさんの物売りがやってくる。
水やジュースの類、食べ物や果物、
なんだかよく解らないもの、
いろんなものを売りにやってくるが、
その中からソーリーはパパイヤの実と
ヤギの乳で作られたミルク・アイスを買ってくれた。
現地の人の包丁で切られているであろう
果物を食べても大丈夫だろうか?
衛生的には心配だったが、
食べないわけにもいかず少し食べてみた。
おいしい!
外はすでにかなり暑くなってきていたので、
冷たいアイスも水分の多いパパイヤの実も
すごく美味しかった。










再び出発進行!
外の景色を見たり、眠ったりしながら進んでいく。
順調に走っていたバスだが、
急に速度を落とし始めた。
どうしたのだろうかと思っていると、
とうとう停まってしまった。
「ソーリー、どうしたの?」
「あれ見て!」
ソーリーの指差すほうを見てみると、
大きなトラックが事故を起こして横転しており、
その横をバスが徐行しながら通り過ぎた。
ここに来るまでにも、たくさんの車の残骸が
道の端に横たわっていた。
中には焦げたものもあったが、
きっと燃えてしまったに違いない。
道はまっすぐだけど道幅はそんなに広くはなく、
対向車とは擦れ擦れで擦れ違うにもかかわらず、
バスの運転手は速度を落とそうとはしない。
よくこれで事故が起きないものだと思っていたが、
やはり大きな事故がしょっちゅう起きているようだ。
しかし、事故現場を過ぎると
運転手はどんどんスピードを上げていく。
やれやれ、大丈夫なんかいな、この運転手は・・・









すごい家だ・・・
バスの中から見た風景






広大な景色の中に時々土でできた家が連なる村が見える。
「ここはバンバラ族のキャピタル(首都)だ。」
ソーリーの言葉を聞きながら、
○○族というとなんだか
オドロオドロシイ感じがしていたが、
実は日本でいう○○県人というのと
変わりないんじゃないだろうかという気がしてきた。
俺は広島県出身の広島県人、
ソーリーの出身は確かジェンネだといっていたから、
ジェンネ出身のフラニ族人、
こんな感じかな〜?










1:00過ぎにボボ族の村で昼ごはん休憩になった。
ここの村もかなりスゴイ!!!
土でできた家々、しかもほとんどが壊れかかっている。
こんなところに本当に人が住んでいるんだろうか?
と、思ってしまうが、ここでもちゃんと人は住んでいる。
ソーリーについてその中の一軒の家に入ると、
そこは食堂だった。
たくさんの人が何か汁物を手で食べている。
外は日差しがきつくかなり暑いが、この家の中は涼しい。
が、もちろん電気はないのでかなり薄暗い。
ソーリーは“ナンジ”というぶっ掛けご飯と
マトンの肉の煮込みを注文してくれた。










意外なことに、ここ西アフリカでご飯を食べる。
昨日の豆の煮込みよりは美味しいが、
それでもやはりたくさんは食べれなかった。
「ソーリー、もうお腹がいっぱいだ。
 食べきれないよ。」
「無理すんな、アクナマタタ!」
「なんだって?」
「アクナマタタ、ケニヤ(東アフリカの国)の言葉で
 『気にしない気にしない、のんびりいこうぜ!』
 って意味なんだ。マトン食うか?」
マトンの肉は美味しかったのでソーリーと半分ずつ、
全部食べた。










どの家も壊れかけてる・・・
昼食をとった村








店を出ると、木陰で休憩だ。
とにかく暑いので水分を補給しながら
日記を書いていると、
日本語がかなり奇妙で面白いのか、
たくさんの人が俺の周りを囲んで
ノートを覗き込む。
まぁ、日本の文字なんて見たこと
ないだろうからな〜!
2:00になると再びバスに乗り、
後半のバスの旅が始まった。










バスの中は一段と暑くなっており、
あまりの暑さに窓枠が熱くなっている。
外の景色を眺めながら、アフリカ旅行記の本に
“アフリカの旅は若いうちにしないとかなりキツイ”
と書いてあったのを思い出していた。
カルチャー・ショック,睡眠,食事・・・
もうどれもヘトヘトだった。
こんなことで後10日間以上も
アフリカにいられるのだろうか?










流れゆく景色を眺めながら
日本のことばかり考えていた。
ナムチェ・バザールのオーナーが
『アフリカはインドの10倍大変だ!』
といっていた意味がやっと解った。
俺はアフリカを甘くみすぎていた。
こんなにハードだなんて・・・
早く帰りたい・・・
早く帰っておいしいご飯を食べて
ゆっくり眠りたい!
あ〜、日本の暮らしが恋しいよ〜!!!
カルチャー・ショックのあまり
自分が何をしたいと思っているのかも
気が付かないでいたけど、
何をしたいと思っているのかやっと解った。
帰りたいんだ、
俺日本に帰りたいと思っているんだ!
アフリカ旅行記を読んでいたときに、
どの本もすぐに『日本に帰りたい!』
という文面が載っていて、
それを読むたびに
しらけた気になってしまっていた。
せっかくアフリカまで行っておきながら、
何でみんな早く帰りたがるのかが
よく解らなかったが、
今はその気持ちがよく解る。
でも、今すぐに帰ることはできない。
飛行機のチケットには、
『あと12日後じゃないと乗せてやらない』
と書いてある。
これは神の同意がないってことだ!
だから、それまでなんとか
頑張んなきゃいけないんだけど、
一日が長すぎる。
こんなんじゃ12日ももたないよ〜!!!




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