TRIP



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11月26日 土曜日 はれ   (その3)

いろんなことを考えているうちに
急にものすごい睡魔が襲ってきた。
うわぁ〜、なんじゃこの眠さは・・・
昼ごはんを食べてお腹が満たされたからだろうか?
でも、こうなんなきゃおかしい。
だって二日もろくに寝てなかったんだから・・・
これで睡眠をとれば少しは元気になるかもしれないが、
バスの座席はかなり狭く、
足を折り曲げてないといけないので
ぐっすり眠るなんてことは不可能だった。
それでもうつらうつらしていると、バスが急に停まった。
今度は何事だろうかと思っていると、
欧米人とそのガイドらしき人がバスに乗り込んできた。
欧米人は50歳くらいの女性で、
ムーミンに出てくる“オシャマさん”によく似ている。
この人も一人でマリを旅行しているようで、
ガイドの人はソーリーの友達みたいだ。










それから約1時間走り、
17:00過ぎにやっとモプティに到着。
約8時間30分のバスの旅だった。
やっと窮屈な座席から開放されて、ホッとした。
バスを降りると数人の原住民が近寄ってきた。
ガイド・ブックによると
『バスを降りると、ガイドが大勢売込みをかけてくる。』
と書いてあるが、
俺はすでにソーリーがいるのでその点は問題なかった。
ソーリーはその中の一人の少年に声をかけ何か交渉すると、
その少年は向こうからリヤカーを押して戻ってきた。
「荷物をこれに載せなよ!」
少年のリヤカーにソーリーが持ってきていた
ミネラル・ウォーターの箱と、
俺の荷物を載せると少年が運んでくれる。
いろんな商売があるものだ!










面白いモスクでしょ!
モプティのモスク






ここもかなり人が多く、
道は舗装されてなくて土の道を歩きながら
ソーリーと話した。
「モプティはニジェール川とバニ川に挟まれた
 島みたいなところなんだ。
 ちょうど、ベニス(イタリアの都市で
 “水の都”と称される)みたいな感じかな。」
「ふ〜ん、あれはなに?」
少しはなれたところに泥でできた大きな建物が見える。
「この街のモスクだよ! 
俺のファミリーはその近くなんだ。 行こう!」









川を渡りどんどんモスクに近づいていく。
こりゃスゲェーや!
この辺りの家は全部泥でできており、
日本でいう街並み保存地区のような所なのかもしれない。
こちらは旧市街になるらしく、
泥の家に挟まれた小さな路地を歩いていくと、
裏手にも泥の家々が建ち並んでいる。
そのうちの一軒を案内してくれるのか、
ソーリーが中に入っていくので、
続いて中に入ると入り口からすぐのところに
おばあさんが座っていた。










「俺のおばあちゃんだ。」
えぇ? ってことはここはソーリーの家?
これまたスゲェー!!!
「アニウラ!(こんばんは)」
昨日覚えた言葉で挨拶してみた。
ソーリーはおばあさんに俺が何者なのかを説明すると
おばあさんはニッコリ笑ってくれた。
少し中に入ると台所になっている。
その台所から見上げると空が見える。
要するに吹き抜けになっている。
そしてその吹き抜けを囲むように部屋があり、
台所横の階段を上がると屋上に出た。
ここもすげぇーや!
先ほどのモスクが目の前にある。
景色もすごいが、イグアナのバリでかいのが
ウヨウヨおるでー! きしょくわり〜ぃ!
向こうの家の屋上にはヤギもおるで。
メェメェ鳴いとる。










これが台所なんだ!
台所













のんびりしたお兄さんだったよ!
ソーリーのお兄さん
















後から男の人が上がってきた。
「俺のお兄さんだ!」
「アニウラ!」
お兄さんは少し英語ができる。
「初めまして、トムです。」
「ようこそ、ゆっくりしてください。」
「この家に住んでるんですよね?」
「もちろん!」
俺が驚いたような表情をすると
お兄さんは笑いながらお茶の用意をしてくれた。
泥のモスクからコーランが流れ始め、
その向こうに夕日が沈んでいく。
少し涼しくなった風が頬に気持ちいい。
お兄さんはソーリーにお茶を入れるように言うと、
ソーリーは昨日同様たか〜い位置から
小さなガラスコップにお茶を注ぎ込み
手渡してくれた。
疲れていたせいか、昨日より美味しく感じる。
毎日の暑さや疲労、そしてこの風土に
あま〜くてほろ苦いお茶はよく合っているのだろう。










「ねぇ、ソーリー、ソーリーがガイドをする人は
モプティに来るとみんなここに泊まるの?」
「いいや、トムが俺のファミリーに会いたいと
 言ってくれたから、今日は特別だ。
 トム、シャワー浴びるか?」
「そうだな、浴びさせてもらうかな!」
「じゃあ用意するからしばらく待ってて!」
昨日、今日とソーリーと一緒にいて、
ソーリーのことを信用しても
いいんじゃないかと思い始めていた。
すごく気を使ってくれているのも解ったし、
とても頭が良さそうだった。
いつまでも疑っててもしょうがないし、
それじゃあ旅が楽しくなくなってしまう。
この風景を眺めながらそう思うと、
すごくリラックスした気分になってきた。










建物も面白い!
屋上の風景











右下に写ってる四角いところがシャワー室
お茶を入れてくれるソーリー












「OK! あそこがシャワー・ルームだ。」
ソーリーの指差すほうを見ると、
階段を三段降りたところに泥でできた小屋があり、
どうやらそこがシャワー室のようだ。
「じゃあ、先に浴びさせてもらいます。」
携帯洗面器(ビニール製で、
 日ごろは折りたたんでいるのだが
 空気を吹き込むと、洗面器の形になる)
に、ボディー・シャンプー、シャンプー、
リンス、タオルを入れてその小屋に行くと、
入り口は扉ではなく藁(わら)かなにかでできた
“むしろ”のようなものが掛けてあった。
そのむしろをくぐるように中に入ると
ロウソクが灯してあり、
バケツの中に水が汲んであった。
ほっほ〜、この水を浴びるんじゃの〜!
これだけの水で身体も頭も洗うには、
考えて使わないと足りない。
隅の方にアルミでできたお皿が
置いてあるところは、
その下に穴が開いていて
ボットン便所になっているので、
室内は少々臭い。










さっそくシャンプーして頭を洗い流し、
次にボディー・シャンプーを
タオルに付けて身体を洗い始めたとき、
ひょっとしてマリの人のシャワーは水で簡単に
汗を流すだけなんじゃないかと思い始めた。
なんとか身体の泡は洗い流すことができたけど、
ここで水が無くなってしまった。
うわっ、失敗じゃ!
このタオルについた石鹸を
どうやって流そうか?
きっと貴重な水だろうから、
もう一度もらうのは気が引けた。
う〜ん、しょうがない!
明日のシャワーまでこのままにしておくしかない。
アクナマタタ〜・・・(気にしない〜・・・)

夕焼けの景色





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