TRIP



前へ もくじ 次へ


11月27日 日曜日 はれ       (その3)

コーヒーを飲み終えバス乗り場のところに移動すると、
一人のおばあさんが
「サヴァ〜、メルシ〜・・・」と言いながら、
握手を求めてきた。
身なりも汚く、なんとなく近寄りがたい感じだが
無視するわけにもいかず、軽く握手した。
握った手も、ガサガサしていて不潔そうだ。
おばあさんは金をくれと手を差し伸べてきたが、
首を横に振るとまた別の人に
「サヴァ〜・・・」と声を掛けている。
ソーリーの話だと、あのおばあさんはトアレグ族の人で、
子供もいるのにいつもあんな風にほっつき歩き、
子供が、帰ってきてと懇願しても、
ほったらがしのままなのだそうだ。
おばあさんは、無視されては次に人に声を掛けるが
誰も相手にしてくれない。
そのうち人ごみに紛れて、
姿は見えなくなっていったが、
おばあさんの「サヴァ〜、メルシ〜・・・」という
蚊の鳴くような、か細い声が
いつまでも耳の奥に響いていた。










さーてと、いよいよ出発だ!
「さあ、これに乗って!」
ソーリーはバスではなく、
あるオンボロ車の後部座席の扉を開いて
待ってくれている。
バスで行くものだとばかり思っていたが、
なんと“タクシー・ブルース”で行くようだ!!!
タクシー・ブルースというのは簡単に言うと
乗り合いタクシーのことで、
同じ方面に向かう人が一緒に乗り合わせて行く。
しかしこの車、どう見ても前にふたり、
真ん中の列に3人、
後ろの列に3人の計8人乗りだと思うのだが、
その車に10人が乗り込む。
うげ〜ぇ、苦しい!
俺は真ん中の列なんだけど、
この列には4人の大人が乗った。










11:30頃出発!
開いた窓からガソリン・スタンドの
お兄さんに挨拶をする。
「トム、気をつけてな〜!」
「お兄さんもお元気で〜!」
オンボロ車は、思ったより軽快に走り始めた。
たぶん、昨日バスで通った道を
引き返しているのだろうと思うが、
よくは解らない。
「ジェンネまでどれくらいかかるの?」
「う〜ん、3時間くらいかな〜。」
うわぁ〜、この体勢で3時間はかなりきつい!
やっぱりアフリカの旅はNot Easy!
(ノット・イージー “楽じゃない”と言う意味)だ。










スッゲー数!!!
牛の行列










窓の向こうには昨日同様、泥の家やロバ車、
頭の上に大きな荷物を載せて
歩いている人たちの姿が見える。
そして1時間近くも走ると、
にぎやかな街から一変して
西部劇に出てきそうな岩山や、草原が広がる。
遠くの方に牛の群れがいて、列を成して歩いている。
その数、数百等!
男の人が一人で棒を振り回しながら牛を誘導している。
そして、またまた牛が車の前を横切り、
行く手を阻まれる。
I’m in Africa!
(アイム・イン・アフリカ!
“俺はアフリカにいるんだ!”という意味)










車内は、左隣には知らない黒人さん、
右隣にはソーリー、
その向こうにはフランス人の旅行者が乗っている。
彼も、ジェンネに向かうようだ。
アフリカ人もフランス人も体格がいいので、
かなり窮屈だ。
隣の人とピッタリ身体がくっついているし、
外の気温もグングン上昇していて、
壊れて開けっ放しの窓からは
一応風が入ってくるのだが、
それでもかなり暑い!
持ち歩いているミネラルウォーターで
水分補給をしていたのだけど、
あまりの暑さで、いつの間にかお湯になっていた。










う〜ん、ケツが痛い!
とにかく体勢がかなりすごいことになっていて、
これじゃ〜もたん・・・と思いながらも、
いつの間にか眠っていたのには自分でも驚いた。
車は休憩の為、バンバラ族の
キャピタル(首都)で停まった。
ふ〜・・・
早く車から降りたいのだが、
フランス人はなかなか降りようとしない。
すると、運転手が外からドアを開けてくれた。
この車はあまりにオンボロなため、
中からはドアを開けることが出来ないようだ。
やれやれ・・・










ふ〜、休憩・・・
バンバラ族の村








なんて広いんだろう・・・
果たしなく続く大地










ここは道の両サイドにお店が並ぶ、
ちょっとしたマーケットになっている。
炎天下で、棒と板で作った簡易机を並べて
いろんなものを売っている。
そんな風景を眺めていると、
あれを買え、これを買えと、
あっという間に取り囲まれてしまうが、
買わないという意思をハッキリと示せば
そんなにしつこく売りつけてくることはないようだ。
10分くらい休憩すると、再び車に乗って出発!
まっすぐな道を
オンボロなプジョー(フランス製の車)が進む。
果てしなく続く真直ぐな道と
広大な土地しか無いようなところに、
道端を女の人が頭の上に荷物を載せて歩いている。
あの人はどこまで行くんだろう・・・










そんな風景を眺めながら、
朝のボゾ族の人たちのことを考えていた。
日本もボゾ族のように、
もっと自由に生きていける国にならないだろうか?
“自分たちがやりたいと思ったことを
 自分たちの責任でやる!”
でもそれって大変だよな〜。
何かをするにあたって、いろんな規制があったり、
いろんな許可が必要なことは
すごく面倒くさいように感じるけど、
その方が楽なのかもしれない。
でも俺は、自分のやりたいことは
自分の責任を持ってやることの方が
やっぱりいいと思う!
よしっ、これからは俺が総理大臣になって
“自由に生きる”をスローガンに
日本を大改革するか〜!!!
ガハハハ・・・
そんなアホなことを考えてしまうのも、
この暑さのせいだ!
窓から入ってくる風は熱風になり、
とにかく暑くて頭がボーっとなってしまう。
もう限界じゃ〜、と思ってたら、
車は川岸で停まった。

車が停まった川岸












前へ もくじ 次へ