TRIP



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暗くて見えないよ〜!
夜のジェンネ

















11月27日 日曜日 はれ       (その6)

一息ついた後、ジェンネの夜の町を散歩することにした。
家から一歩外に出ると、まっっっっっくらで、
懐中電灯がないと何も見えない。
こんな暗い町を見たことがない。
電気が全く通ってないわけではなさそうだが、
ほんと〜〜〜にまばらにしか街灯が点いていない。
しかしそのぶん夜空はモプティで見たよりもたくさんの星が
これでもか〜っ、と出ている。
転ばないように注意しながら歩いていると、
しょっちゅうソーリーの友達や知人に出会い、
ソーリーにだけではなく、必ず俺にも
「サヴァ?ビアン?」
と声を掛けてくれ、握手をする。
これまでいったい何人の人と握手をしただろう?
俺もマリの家族に入れてもらえた気がしてうれしかった。
これからの旅先でも、もっともっとたくさんの人と握手したい!














しばらく行くと、薄暗いオレンジ色の街灯に
照らし出された広場に出てきた。
ふと、横を見るとそこには
大きな大きな泥のモスクがそびえていた。
これが世界遺産の泥のモスクか〜・・・
写真でしか見たことのなかった風景が、
実際に目の前にある。
もちろん、これを見るためにここまで来たのだが、
目の前の景色は信じられず、
なにかの映像でも見せられているようだった。
広場を過ぎ、細い路地を歩いていく。
こんなに暗いのにたくさんの人が、
何の明かりも灯さずに歩いている。
よ〜見えるね〜、ほんま。
アフリカ人は異常に視力がいいという話はよく聞くが、
確かに頷ける。
そんなことを考えながら歩いていると
どこかから物音が聞こえてくる。
「トム、聞こえるか?」
「うん、聞こえるよ。何の音?」
「誰かが太鼓を叩いているんだ。行ってみよう!」















暗闇の中、音が聞こえてくる方向に歩いていく。
なんだかワクワクしてきて、ついつい小走りになってしまう。
「あそこだ!」
ソーリーの指差す方向を見てみると、
小さなオレンジ色の街灯の下にたくさんの人だかりができており、
その中でジャンベと小脇に抱えた太鼓を叩いている人がいる。
これぞ、見たかった風景だ!!!
集まっているのは子供が多く、異国人の俺を見つけると、
「ダンス?ダンス?(一緒に踊ろう)」
と、声を掛けてくる。
ソーリーはその子たちをかき分けて、
太鼓を叩いている人と何かを話している。
「トム!セッションだ!!!」
「えー、マジで?でも、どんなリズムを・・・?」
「ジャパニーズ・スタイル!」
「よ〜し!!!」
小脇に抱えて叩いていた人の太鼓を借りて肩から掛け、
どこにでも落ちていそうな棒ッ切れのバチを借りて、
その場で思いついたリズムを叩き始めた。
すると、その太鼓に子供たちが踊り始め、
ジャンベの人が加わってくる!
スゴイ、スゴイ!
















たくさんの人だかり























♪ドン・ツタ・ツタ・ツタ・タン♪
音楽に詳しい人なら解ってもらえると思うが、
俺は16分音符を中心にした
偶数系のリズムを叩いているのだが、
ジャンベの人は全く構わず
3連係の奇数リズムを叩いているので、
油断するとリズムが狂ってしまいそうだ。
よ〜し、ならば1泊半のトリッキーなフレーズ
(ある程度リズム感がいい人でないと
 拍子をとるのが難しいリズム)
を入れてしまえ!
♪ツルッ・タン・タン・ツルッ・タン・タン♪
しかし、ジャンベ・マンは平気な顔で複雑なリズムを叩き、
それに合わせて民族衣装を着た女の子が
腰をクネクネ振りながら踊る!
よくこんなリズムで踊れるものだと感心しながらも、
それを見ていると、ついついエキサイトして
叩きまくってしまった。
「トム、スゴイぞ!」
ソーリーも応援してくれる。
あ゛〜楽しい!!!















たぶん顔はこれでもかというくらい笑っていると思う。
まさか、こんな体験ができるなんて・・・
自分の幸運が信じられなかった。
ひとしきり叩くと周りの人から拍手が起こり、
ジャンベ・マンが握手を求めてきた。
ソーリーの通訳によると
「いいね〜!すごく楽しかったよ!」
と言ってくれたようだ。
「メルシー・ボクー(どうもありがとう)」
そう言って、その場を離れた。
あ〜本当に楽しかった。
あんなに笑顔で太鼓を叩いたのは何年振りのことだろう・・・















再び先ほどの暗い道を引き返すが、
“未だ興奮冷めやらず!”といった感じだった。
「ソーリー、ありがとう。お陰ですごい体験ができた。」
「それにしても、すごかったな!」
「俺、まだ興奮が冷めないよ。」
「ハハハ・・・そうだ、あそこにバーがあるから、
 何か冷たいものでも飲むか!」
「いいね〜、そうしよう!」




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