TRIP
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![]() マリの学校 |
11月28日 月曜日 はれ (その2) 今日は楽しみにしていた、ジェンネの月曜市を見る。 8時過ぎに家を出発! 昨夜同様、泥の家に囲まれた迷路のような道を歩く。 泥の家は全て同じように見えるが、 造りは泥を球状に丸めてそれを積み上げて固めるものや パーム・ツリー(ヤシの木)を補強材にしたものなど、 いろいろあるのだそうだ。 通りをいくつか曲がっていくと、 ある建物の中で子供が何かを書き写しているのが見えた。 「ここは、学校なんだよ。」 「はーぁ・・・」 日本の学校とのあまりの違いに驚いた。 机やイスなんてものは無く、子供たちは地べたに座って 筆のようなものを使って懸命に何かを書き写している。 しかし、それを見て 『かわいそう』などというような感情は起こらず、 そうやって一生懸命頑張っている姿がたくましく見えた。 |
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「この先に村長の家があるから、 まずは村長のところに挨拶に行こう!」 “アフリカの村の村長”と聞くと、 お会いするのは恐れ多いような気がしたが、 どんな人なのか会ってみたいような気もする。 角を曲がると少し広い場所があり、 家の前にイスを出してひなたぼっこしている人がいる。 その人がジェンネの村長さんだった。 握手を交わし、ソーリーの通訳を介して お話させてもらった。 「トムです。日本から来ました。」 「そうかそうか、よくジェンネに来てくださった。 ゆっくりしていきなさい。」 「ありがとうございます。」 村長さんは予想とは違い、優しくてのんびりした人だった。 無事村長さんに滞在許可をもらえたので、 これで安心してジェンネを歩ける。 別に許可が要るわけではないのだが、 村長さんにそう言ってもらえると、 やはり心強かった。 |
![]() 村長さんの家付近 |
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![]() 団子状にした土でできた家 |
村長さんの家を後に、再び迷路を歩く。 頭に荷物を載せた女の人や、子供たちと擦れ違う。 「サヴァ〜?ビアン?」 「サヴァ、ビアン!」 子供たちは必ずといっていいほど挨拶してくれる。 出会うのは人だけではなく、 ロバや牛、牛車に乗っている人達もいる。 しばらく行くと、ちょっとした広場に出た。 そこは、どうやら昨夜ビールを飲んだ、 “バー・ババ”のようだ。 ソーリーが友達と話をしている間、 入り口付近にあるお店を覗いてみると、 絵葉書が置いてある。 日本の知人や友人に送りたいので アフリカらしい写真の載っているハガキを7枚買った。 「そろそろ市場に行ってみるか!」 「うん、行こう!!!」 |
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そこから少し歩くと、 大きな泥のモスクのところに出てきた。 世界遺産にも指定されている、泥のモスク・・・ 写真でしか見たことがなかった あの泥のモスクが目の前にそびえ建っている!!! 昨夜は暗くてあまり見えなかったけど、 こうして泥のモスクの前に立つと、 本当にここまでやって来たんだな〜という 実感が湧いてきた。 以前は中に入ることもできたらしいが、 今では異教徒の人は入ることができない。 |
![]() 泥のモスクと月曜市 |
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![]() 魚の燻製 |
広場ではすでに市場の用意が始まっており、 たくさんの人が簡易テントを建てたり、 品物を並べたりしている。 お菓子やおもちゃ、飲み物に食べ物、服、香辛料、鍋、 黒っぽい団子のようなものは“スンバラ”といって、 日本でいう味噌のようなものだ。 果物、アクセサリー、CDラジカセなんていう ハイカラなものも売っている。 しかし、日本人の俺では、どう見ても なんだかわからない物体も売り物になっている。 辺りから強烈な臭いが漂ってきた。 匂いのする方を覗いてみると、 黒い物体が山積みされている。 えらい臭いが、こりゃ〜何じゃろ〜か? 不思議な顔をしている俺を見つけて ソーリーが笑いながら教えてくれた。 「昨日見たボゾ族の人を覚えてるか?」 「もちろん、魚を捕ってる人達でしょ。」 「これは、ボゾの人が捕った魚を燻製にしたものだよ。」 う〜ん、確かに良く見てみると魚の形をしている。 ほいじゃが、これ、本当に食べられるんじゃろうか? |
![]() 月曜市の風景1 |
![]() きらびやかな女性たち |
時間が経つにつれ、どんどん人が増えてくる。 女の人は髪形を整え、 きらびやかなアクセサリーを身につけ、 オシャレな民族服を着て 普段よりもめかしこんでやって来る。ある本には、 『ジェンネの市場には、はるばる遠くから たくさんの女性が集まる。 それは市で実際に商売をするためだけではなく、 服の美しさを競う場所でもあり、 情報交換の場所でもある。』 と書いてあったが、なるほど頷けづける話だ。 |
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俺も何か買い物しようかな?! よ〜し、バンバラ族の泥染めを探してみよう。 “バンバラ族の泥染め”というのは この地方の有名な染物で 『男性が織った布を女性が染色する。 鉄分を含んだ泥で模様を描き、 アルカリ性の粉を塗って日光にさらして脱色したもの。 (タムタム・アフリカ 渓谷社出版)』で、 以前に雑貨屋さんで見たことがあったのだが、 日本で買うと結構値が張るので、 こっちに来たらお土産に買って帰ろうと思っていたのだ。 ソーリーに紹介してもらい一軒のお店に入った。 お店の中は入り口からの日の光しかないのでかなり暗く、 壁一面にドゴン族やバンバラ族の仮面が掛けてある。 「泥染めを見せてくれ。」と頼むと、 店のおっさんは箱の中から数枚の布を取り出した。 おっさんが首から提げている小物入れも 泥染めのようで良さそうだ。 店にある全ての泥染めを広げてもらい、 その中から気に入った物を選んで値段交渉だ。 |
![]() 月曜市の風景2 |
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![]() 月曜市の風景3 |
おっさんは紙に、一枚20,000CFAと書く。 いつもの調子で、思いっきり安い値段を書いてやれ〜! 紙に800CFAと書いた。 「あんた、800CFAって書いたのか?」 「うん、800CFAだ!」 「ヘンッ、そりゃ売れん。 この話は無かったことにしよう。」 意外な展開に驚いてしまった。 おっさん、バカにするなって怒ったんだろうか? バカにするつもりなんてなかったのに・・・ なんだか悪いことをしてしまったような気がして、 もう一度仕切りなおしだ。 なんだかんだ言いながら結局値段は、 大きい泥染め2枚と、泥染めの小物入れ3枚で 25,000CFA(約5,000円)に決まった。 おっさんはお茶を入れてくれ、 「小物入れは今ここにないから お茶を飲みながら待っていてくれ。 すぐに取って来るから。」 そう言い残して出かけていった。 |
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入れてもらったお茶を飲みながら、 今の値段のやり取りを思い出してみた。 最終的には全部で25,000CFAで 売ってもらったものの、 なんとなく悪いことをしてしまったような気分が まだ続いていた。 しかし、少し考え方を変えてみると、 最後の値段は最初におっさんが書いた、 一枚20,000CFAからすれば、 かなり安くなっている。 最初に怒ったように見せたのも、 案外こちらに『悪いことをした』と思わせておいて、 最終的にはある程度の金額で売るという おっさんの手だったのかもしれない。 う〜ん、なかなかやりやがるの〜あのおやじ・・・ |
![]() バンバラ族の泥染め |
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![]() 泥染めの小物入れ |
そんなことを考えながら待っているのだが、 いつまで経ってもおっさんは帰ってこない。 ソーリーもシビレを切らしたみたいで、 もう一度後から取りに戻ることにした。 ところが、店を出て数メートル歩いたところで おっさんに出会い、 無事小物入れも3枚手に入れた。 おっさんとは、少し意味ありげに笑いながら 握手をして別れた。 |
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