TRIP
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11月28日 月曜日 はれ (その3) 再びいろんな店を見て回る。 ここで売られているものは、 このあたりに住む人々が生活するのに 必要なものばかりなので、 俺が欲しいと思うようなものは別にないのだけど、 見ているだけでも楽しい。 あれ〜、あんなところに見たような顔の奴がいる。 駆け寄って声をかけた。 「ボンジュール(こんにちは)!」 「おおっ、君か〜!!!」 バマコのホテル・ラフィアで出会った、 メチャきれいなフランス人女性と一緒に 旅をしているヒゲモジャの彼だった。 その声に、噂の(とは言っても俺が噂してるだけだが) 美人さんが俺に気づいて挨拶してくれる。 「まあ、どうしてここに?」 「この月曜市が見たくて昨日来たんだ〜! ここはすごいね!!!」 「ほんとね、とても楽しいわよね!」 「うん、お祭りみたいじゃね! いつまでジェンネに?」 「俺らはもう少しここを見たら、ジェンネを出るんだ。」 「そうか〜、気をつけてね! ステキな旅行を!」 「あなたもね!」 アフリカ大陸に少しずつ知り合いが増えていくことは、 なんとも嬉しかった。 |
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![]() ひつじ売り場 |
彼らと別れ、再び市を探索する。 うわっ、ここではヤギや羊を売ってるぞ〜! このあたりの人は、これを買って帰って オーレンマル(羊の頭のスープ)を作るのかな〜? 羊を家でさばく? 想像すると、ちょっと怖い。 おっ、こっちではなんだか うまそうなものを売ってるぞ! 女の人が、炭火の上に大きなフライパンを載せて 油でパンのようなものを揚げている。 よし、買ってみよう! 「それはミレッツ(あわ)を練って揚げたものだよ!」 「まだ温かいよ、おいしいね! ソーリーもどうぞ!」 食感は日本でいうドーナツが ホワホワしたような感じで、素朴な味だ。 こりゃ、うまいで!!! |
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今度はソーリーが買い物だ。 「これを買って帰ろうぜ。」 ソーリーは花を乾燥させたものと、ミントを買った。 これをお湯に入れて、 お茶にして飲むとおいしいのだそうだ。 「じゃあ、そろそろ昼ご飯食べに、 いっぺん家に帰ろう。」 「そうだね、そうしよう。」 広場を少し離れても市場は続く。 そして、向こうの方からは市場で売買しようと、 どんどん人がこちらに向かってやってくる。 参るね〜このパワーには!!! |
![]() 月曜市での買い物風景 |
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![]() お茶を入れてくれるソーリー |
家に帰ると、ソーリーが早速お茶を入れてくれた。 このお茶の名前はダ・ブリニー (“ブリニー”は“赤”という意味なのだそうだ)といい、 その名のごとく、真っ赤なお茶だ。 今日はミントを入れているけど、 バニラを入れて飲んでも美味しいのだそうだ。 一口含んでみる。 う〜〜〜わ〜〜〜、すっぱ〜〜〜い! でも、疲れているからか、 すっぱい飲み物も悪くない。 砂糖を入れて飲むと、 とてもリラックスした気分になった。 12時を回ると、外はどんどん暑くなっていくので、 お茶を飲んでまた夕方くらいから動くのも いいかもしれない。 |
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しばらくすると昼ご飯になった。 夕べ食べたフィッシュ・カレーのチュンチュンだ。 ソーリーとオスマン君と3人で食べる。 手で食べることにも少し慣れてきたぞ! 相変わらずご飯がジャリジャリ言うけど、 魚はほんまにうまい! 「ねぇオスマン、日本の首都はどこだっけ?」 ソーリーは、『オスマンは二度と忘れないだろう』 と言っていたが、 オスマン君はすっかり忘れているようだった。 食後に妹さんがオレンジを持ってきてくれた。 ナイフでオレンジを切り分けてくれる姿を見ながら、 日本で黄熱病の予防接種を受けたときに 病院の先生が言っていた事を思い出す。 『生野菜や果物は食べないようにすること。 現地の人が調理する包丁やナイフには 病原菌が付着していることが多く、 コレラの原因になる可能性があるので、 くれぐれも注意してください。』 しかし、笑顔で手渡されたオレンジを 食べないわけにもいかず、結局は食べたのだが、 大丈夫だろうか・・・ |
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ご飯の後に先ほど買って帰った 絵葉書を書くことにした。 千秋やおかん、友人など 7人分の絵葉書を書くのは結構大変だ。 「トム、お茶飲むか?」 ソーリーが横でダ・ブリニーを入れてくれている。 「うん、ありがとう。」 「トムは日本兵のイラク派遣についてどう思う?」 えぇ? まさかアフリカ人にこんな質問をされるとは 思ってもみなかったので、驚いてしまった。 それよりも何よりも、テレビどころか電気もガスも ほとんど無いようなマリで、 日本兵がイラクに派遣されていることを 知っていることに驚いた。 日本語で答えるのも難しいような問題を、 英語に直すのはかなり難しい。 「う〜ん、難しい質問だね〜。」 あんまり変なことを言っても角が立つ。 そういう意味では、 俺もれっきとした外交員なのかもしれない。 なんて答えようか・・・ 「アメリカも日本もイラクも、 それぞれが異なった文化を持った国なのに、 アメリカはイラクの考えや文化を無視して、 自分の国の考え方を押し付けようとするのは 良くないと思う。 だから、日本の派遣も 良いことだとは思わないな。」 と、答えたつもりだが、 うまく伝わっただろうか。 「ソーリーはどう思うの?」 「トムの意見に賛成だな。」 ふ〜、良かった。 肩の力がスッと抜けた気分だった。 |
![]() ハガキを書く俺 |
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今まで俺は英会話の能力ばかり 気に掛けていたが、 こういった国際交流の場では 英語を話す能力よりも、 自分の思いや考えをしっかりさせていないと、 英語ばかりペラペラ喋れても とんでもない回答をしかねない。 自分の発言で、日本人の印象が 良くも悪くもなってしまうと思うと 総理大臣や、外交員同様、 俺も日本を代表して 話しているようなものなのかもしれない。 お〜、こわっ! |
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![]() 完成! |
14:00を回った頃に郵便局に 連れていってもらうことにした。 思っていたよりもちゃんとした 立派な郵便局に入ると 一枚のハガキにつき、 2枚の切手を貼るように言われた。 切手の柄を見てみると、 ジェンネの月曜市の絵がついたものと、 女の人が民族服を身につけた柄が ついたものだった。 アフリカっぽくてなかなかいい感じなのだが、 本当にちゃんと日本に届くのだろうか? 切手を切り分けて、 ソーリーに協力してもらって、 裏をベロベロ舐めながら ハガキに貼っていくのだが、 郵便局に来る途中に食べた ピーナッツのカスが少し付いてしまった。 いや〜、スマンスマン! |
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その後、街のはずれに行き、方々を歩きながら、 ジェンネにはオールド・タウンと ニュー・タウンがあることや、 ジェンネの町ができた経緯、 フランス人との戦争時代のことなどを説明してくれるが、 昔のことよりも今のジェンネを見ている方が楽しかった。 「ソーリー、もう一度マーケットに行きたいな。」 「よし、じゃあ行こう!」 |
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