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人がいっぱいだ!
月曜市の風景1
















11月28日 月曜日 はれ       (その4)

モスク前の広場に出ると朝よりも、人も店も増えていた。
バナナから作った石鹸や
オリーブの実の磨り潰したものが山のように盛られている店、
こちらにはお肉屋さんがある。
牛が解体され、大きな肉のかたまりが吊るされている。
その横で大きな肉片が炭火で焼かれているので、
あたり一面いい匂いが漂っている。
何度見ても面白い。 ここはお祭りみたいだ!
いろんな店があるのもさることながら、
いろんな人がいるのも面白い。
売る人、買う人、きらびやかな衣装を着た女性、
大道芸のようなことをしている人・・・















直接物を売る人だけが商売をしているわけではない。
買い物をした人の荷物が増えると、
どこからともなくリアカーを引いた少年が現れ、
その人の荷物を積んで運び、
いくらかのお金を得る。
しかし、いつもうまくいくとは限らない。
女の人がたくさんの買い物をして荷物が増えると、
ここぞとばかりに現れたリアカー少年が荷物を積もうとする。
ところが、その女の人は、
かなりの重量があるだろうと思われるその荷物を
軽々と頭の上に載せてその場を立ち去ってしまう。
一瞬あっけにとられたリアカー少年だが
でもくじけることなく次の人に声をかける。
道には、自転車やバイク、馬車に牛車、ヤギ車が行き交う。
袋に入った水を売る子もいるし、
鮮やかな色のついた飲み物を売っている子もいる。
アフリカ版のうちわ、“フィファラ”を扇ぎながら
売りさばく女の子が、俺にも「どう?」と声を掛ける。
たいした買い物はしなくても
そんな一部始終を見ているだけで、
大満足だった。
















月曜市の風景2























月曜市の風景3


















しかし、暑さと喧騒のせいで、
一時間も見ているとクタクタになったので、
一旦帰ることにした。
疲れているせいか、家まではかなり遠く感じた。
家に帰るとすでに16:00を回っていた。
俺の部屋の前のベランダのようなところで、
ソーリーとダ・ブリニー(赤いお茶)を飲む。
すると、この家に住んでるソーリーのお兄さんが来て、
なにやらソーリーと込み入った話をしているようなので、
その間にシャワーを浴びさせてもらうことにした。
昨日と同じように、泡だらけ戦法でシャワーを浴びる。
今日も大成功!
俺がシャワーを浴びるときは、
懐中電灯の明かりを頼りにシャワーするのだけど、
みんなこんな暗い中でよ〜シャワーできるもんよ。
ロウソクを使うにしても、水で消えてしまいそうだし、
どうやって浴びてんだろ?















スッキリした気持ちで部屋に戻り、荷物の整理をした。
今朝買った泥染めをカバンに入れなくてはならないのだが、
この調子であっちこっちで買い物をすると
荷物が増えるばかりなので、
お土産はバマコに戻ってから買うことにしよう。
そうだ、洗濯もしておかないと、
明日からはドゴン族の村に行くので、
今度はいつ洗濯できるか分からない。
そんなことを思っていると、誰かが部屋をノックする。
「イエス?!」
返事をして扉をそ〜っと開けて覗いてみると、
そこにはオスマン君がいた。
「も〜、Yes,come in!(入りたまえ!)
 って言ってくんなきゃ〜!
 屋上にいこうぜ!」
と言って、一緒に遊びたがっているようだ。
「ごめん、洗濯しておきたいから水をくれないかな〜? 
 洗濯が終わったら屋上で遊ぼう。」
「OK!」
しばらくすると、オスマン君が重たいバケツに
水を汲んで2階まで持ってきてくれる。
「ありがとう! 終わったら屋上に行くから。」
「OK!」
洗濯も手慣れてきたし、
昨日と同じように服は全て裏返して干した。
バッチリじゃ!!!
















月曜市の風景4





























月曜市の風景5























屋上に上がってみると、オスマン君はまだ来てなかった。
昼間はあれだけ暑かったのに、今はほんのり暖かい、
爽やかな風がシャワー後の頬にゆる〜く、
優し〜く吹いていて、たまらなく心地よかった。
もちろん、日本でゆっくり風呂に入った後のように、
隅々まできれいに洗えたわけじゃないけど、
パーフェクトじゃなくていいと思った。
俺は自分のことを完全主義者ではないと思うけど、
日本で生活していると、
いつも『ちゃんとしていなきゃ』という意識が
どこかで働いているような気がする。
しかし、今日のようにパーフェクトじゃない日が
ず〜っと続けば、それが当たり前になる。
そして、“パーフェクトじゃない状態”でいるということが
“パーフェクト”なんだ、
と思えるように成れるかもしれない。
太陽が沈みかかり、空がオレンジ色から
コバルト・ブルーに変わろうとしていた。
ジェンネで見る夕日も今日で最後じゃ〜・・・
そう思うと少し寂しい。
でも、夜にはまた満天の星空に変わるんだろうな〜・・・















オスマン君が屋上に上がってきた頃には
太陽はとっくに沈んで真っ暗になっていたけど、
懐中電灯の明かりで一緒に折鶴を作ることにした。
「じゃあ、まず最初にこう折って・・・」
すると、下からオスマン・パパが
オスマン君を呼んでいる声が聞こえてきた。
「はーい! ごめん、行かなきゃ!」
マリではお父さんの命令は絶対に聞かなくてはならない。
「OK,じゃあまた後で遊ぼう。」
そう言うと、オスマン君は急いで階段を駆け降りていった。















部屋でゆっくりしていると
ソーリーがやって来た。
「トム、これから親戚の家に行くんだけど、
 一緒に行ってお茶を飲まないか?」
「俺が行っても大丈夫なの?」
「もちろんさ!」
そこに、オスマン君がやって来て、
ソーリーに何か聞いているようだ。
ソーリーは俺に、
「ご飯はどうする? 先に食べて行ってもいいし、
 帰ってから食べてもいいよ。」
って言ったような気がしたので、
じゃあ先に親戚のところに行こうと答えると、
オスマン君はなぜか少し寂しそうな顔をした。















外に出ると、昨日に続いて今日も真っ暗な道を歩く。
空の星は少し曇っているのか、いまいちだった。
懐中電灯を照らしながら、気をつけて歩く。
ジェンネは下水の整備がされてないようで、
狭い道の真ん中に汚水が
垂れ流しになっていたりするので、
気をつけて歩かないと、はまってしまうし、
臭いも少々きつい。
どこをどう歩いたのか判らないまま
どこかの家に入っていくと、
ロウソクの灯りのもとでラジオを聴きながら
食事をしている人がいる。
「ボンソワール(こんばんは)」
その人は昼間に市場で見かけて
一度挨拶を交わしている人だった。
「トム、そこの器の水で手を洗って。」
「えぇ、ここで晩御飯食べるの?」
「そうだ。」
出掛けにオスマン君が
寂しそうな顔をしていた意味がやっと解った。
少し仲良くなった異国人と一緒に
食事したかったんだろうな・・・
せっかく仲良くなったんだから
俺も今日は一緒に食べたかったな〜・・・
俺も少し寂しかった。















それにしても、アフリカの食事事情は
どうなっているんだろう?
自分の家にも食事が作ってあるのに、
外で食べて帰ったら、家の分はどうなるんだろうか?
食べんでも怒られんのじゃろうか?




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