TRIP



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11月29日 火曜日 はれ       (その3)

村を抜けるとまた岩山と広大な大地の風景が広がる。
車の前を自転車で走っていく欧米人がいる。
サイクリング車にタンクトップのシャツで、
真っ黒に日焼けした肌がたくましい。
この雄大な景色を見ながら自転車で旅をするというのも、
きっと爽快だろうな〜!













アフリカは広いな〜・・・
車窓の風景

































まだアフリカに向けて出発する前、
インターネットでアフリカ情報を収集していると、
この広大なアフリカをたった一人で
自転車で周っている人のサイトを見つけた。
その人は1週間に1度くらいのペースで、
現地から自分の開設したホームページに
日記形式で書き込んで公開しているようだが、
それは人々に見てもらうためと言うよりは、
自分がアフリカを自転車で一人旅したんだという
証のために書かれているようでもあった。
http://www.nhk.or.jp/gr/td/fu-3.html
出発は去年(2004年)3月、モロッコを出て、
もちろん西アフリカも周っていた。
海外のネット屋からの書き込みということもあり、
1日に数行書かれているだけなのだが、
他の旅行記のサイトとは違い
文章も内容も俺好みの興味深いものだった。
その人は、マラリアになりかかったり、
足の傷が膿んで歩けなくなったり、
自転車が壊れて立ち往生しても
なんとか自分の力で切り抜けて、
現在も旅を続けているはずだ
(ちなみに2005年12月現在のことだ)。
その文章を読みながら、
『たったひとりで自転車に乗ってアフリカを周るなんて、
 俺の旅はこの人に比べれば、
 大したことではない。』
そう思うと旅に出る勇気が出たものだった。
しかし、こうしてアフリカまでやって来て
この風景を前にすると、
自転車で旅をしたくなるという
その気持ちも解るような気がする。
まあ、俺が自転車で走ったとしても
せいぜい10キロくらいで精一杯だと思うけどね!













約1時間も走ると
大きな交差点に差し掛かったところで車が停まった。
どうやら俺たちが降りるようだ。
隣に座っていたマダムに挨拶をして車を降りた。
ギュウギュウ詰めから開放されて
うれしくはあったけど、
少し寂しくもあった。
偶然乗ったタクシーブルースに、
偶然一緒に乗り合わせた人達・・・
旅は偶然の連続なんだ。













しばらく歩いていると、
どこからともなくリアカー少年が現れ
カバンとソーリーの持っている
ミネラルウォーターの箱を積んでもらう。
この交差点はそれぞれモプティ、セグー、
バンディアガラ(ドゴンの村方面)、ジェンネに
向かうための大きな交差点で
バンディアガラ方面行きのバスは
ここから約1キロ離れたところにある。
ほんの1キロのために、
リアカー少年にお金を取られるのは
もったいないような気にもなるが、
この炎天下を大きな荷物を持って歩くのは
かなりしんどいので、
やはり運んでもらえるとありがたい。
それにしても、今日は特に暑く感じるな〜・・・













バス停に着くと、やや小ぶりのバスが停まっている。
このバスならギュウギュウ詰めになることはなさそうだ。
ホッ!
バスの横には木とムシロでできた待合室があり、
そこでバスのチケットを買って出発を待った。
ワラでできた屋根が、
日光をさえぎってくれるだけでも
少しは涼しいけど、それにしてもかなり暑い。
日記を書きながら水分補給をしようと
ミネラルウォーターを口に含むと、
今日も水はお湯に変わっていた。













え〜〜〜かげん出発を待っとるんじゃが
一向に出発の気配はない。
「ねぇソーリー、何時に出発なん?」
「さあな〜、とにかく人がいっぱいになったら出発だ。」
はぁ〜、なるほど・・・ の〜んびりいくか〜!
出発時間はアフリカン・タイムだ〜〜〜!!!
待合室では先ほどから、
でぶっかちなマダムを囲んで
数人がなにやら話している。
どうも、携帯電話のことが話題になっているみたいだ。
セネガルの空港で携帯電話を
持っているネーちゃんがいたけど、
ここマリでもソーリーをはじめ、
多くの人が携帯電話を持っているのには驚いた。
マリには2つの携帯電話会社があるけど、
通じるのは大きな町だけなのだそうだ。
先ほど歩いてくる途中に見かけた大きなアンテナは、
携帯とテレビのアンテナだったらしい。













日記を書きながら、
何を話しているのかよく解らない会話に
耳を傾けていると、ひとりのおじさんが、
「お茶を飲め!」
と小さなコップを差し出してくれた。
「メルシー・ボクー」
どうもありがとうと言うと、
おじさんはうれしそうに笑った。
暑いのに熱いお茶だが、これが美味しい。
最初は好きになれなかったこのお茶だが、
このほろ苦い、そしてとてもあまーいお茶を飲むと
元気が出る!
そのうち会話は俺のことが話題になっているようだが、
何を話しているのかさっぱり解らん!
まあ、悪口ではないようだ。













それにしても、まだ出発しないのだろうか?
ここに来てすでに2時間は過ぎたと思うが、
乗客は数人増えただけだ。
そのうち、この待合室で
チケットを売ってるあんちゃんが、
洗面器に入ったチョンチョンを食べ始めた。
それがどうにも美味しそうに見えた。
そういえばもう2時を回ったけど、
まだ昼ごはんを食べていない。
いつバスが出発するか解らなかったので
食べるのを躊躇していたが、
こりゃしばらくは発車せんじゃろ〜て。
よ〜し、昼飯じゃ!













待合室の裏手に行くと
大きなバス・ターミナルがあり、
その一角のレストランで食事をすることにした。
レストランとは言っても、
トタン板で囲んである建物の中に
簡素なイスとテーブルがあるだけなのだが、
厨房が入り口の外にあるのには驚いた。
イスに座り、肉入りのチョンチョンを頼むと、
洗面器に山盛り入って出てきた。
どこからともなくうわ〜っと群がってくるハエを、
フィファラ(アフリカ版うちわ)で仰ぎ、
追っ払いながら食べる。
こりゃ、うまい!
ほかほかのご飯に温かいチョンチョン。
ソーリーの家で食べたように、
砂が入っていないので食べやすい。
マリに着いた当初は食べ物に悩まされたけど、
今では本当に美味しく食べることが
できるようになった。
ゲップ〜、完食!














昼食を食べたレストラン


















再び待合室に戻るとまた一人客が増えたみたいだが、
まったく出発の気配はない。
誰かが、またお茶を振舞ってくれる。
想像だけど、たぶんバスを待っている人の
誰かがお茶屋さんにお金を払い、
待っている人全員に振舞ってくれているのだと思う。
満腹状態で甘いお茶を飲むのは少々きつかったけど、
食後のお茶を美味しくいただいた。













先ほどのお茶屋さんに限らず、
待合室にはいろんな物売りがやってくる。
おもちゃ、干し魚、食用なのか生きた鳥etc・・・
中でも一番よく売れるのは袋に入った水だ。
やはり、みんなも暑いらしく
水は飛ぶように売れる。
ビニール袋に入った水は
よく冷えているせいか、
袋の表面が曇っている。
なんともおいしそうだけど、
お腹を壊す可能性があるので怖くて飲めない。
仕方なく、お湯になった
ミネラルウォーターを飲むのでありました。




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