TRIP



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まだ出発しないの?
バスの待合室から見た風景
















11月29日 火曜日 はれ       (その4)

バスを待ち始めて4時間経過。
ふ〜っ・・・
「ねぇねぇソーリー、こんなに待たされても、
 アフリカ人は誰も怒らないの?」
「いや、俺とあそこにいる女の人は
 ちょっとイライラしてる。」
そりゃそうだよね〜、
あの女の人は俺たちよりも前に来てたから、
かなり長いこと待ってるんだろうな〜・・・
それにしても暑いな!!!
だけど、3、4、5月辺りはもっともっと暑くなって、
モプティで見たバニ川は干からびてしまい、
ニジェール川も細長くなってしまうのだという。
そして、その頃マリとお隣の国
ブルキナファソの国境辺りでは
象を見ることができるのだそうだ。














そんな話をしながら待っていると、
ユニセフのロゴが入った
車に乗った人が待合室にやってきた。
『貧しい国の人々に愛の手を・・・』
小さな黒人の子供の顔に
ハエがたかっている映像とともに
募金の協力を訴える。
俺はマリに来て
子供にハエがたっかっている姿をたくさん見た。
でも、一度もこの国の人達のことを貧しいだとか、
かわいそうだとか思ったことは無かった。
この国に来れば、別に黒人ではなくても
俺にもハエがたかる。
今までの俺は、その映像を見て
『かわいそう・・・』だとか
『貧しい・・・』だとか思っていた。
しかし、本当に貧しいのは
それを見てそう思っていた
俺の方じゃないだろうか!!!
確かに日本に比べれば物質的にはマリの人の方が
貧しいのかもしれないけど、
それはあくまでも、『比べれば』の話だ。
マリの人は、日本はハイテクノロジーで
賢い人がたくさんいると思っている。
しかしそれはそれだけのことであって、
そのことに対してうらやましいだとか、
日本に比べて自分たちは貧しいとかいった考えは
これっぽっちも無いと思う。
何かに比べて相手のことを
『貧しい』と思っていた自分は、
いったい何様のつもりだったのだろう。
そのことに気がついて、
恥ずかしさがこみあげてきた。














17:00を回って、やっと出発の運びとなった。
いや〜、5時間以上も待ったぜ!
乗る人は14〜15人くらいだが、
タクシーブルースとは違い少しゆとりがある。
ただ、前の席との間隔があまり無いので、
足を折り曲げて乗らなくてはならないのが大変だ。
みんなバスに乗り、さあ出発!
と思いきや、いきなりガソリンスタンドに入る。
あれだけ時間があったんだから
先にガソリンくらい注いでおこうよ、
って思うのは日本人的発想だろうか?
ひょっとして乗る人がある程度集まって
お金が集まらないと
ガソリンも買えないのかもしれない。
そう考えれば、
乗る人が集まらないと出発できないのにも納得がいく。














さ〜ぁ、今度こそ出発だ。
18:00を過ぎるとようやく涼しくなってきた。
全開の窓から少し生暖かい風が吹きつける。
広い大地の向こうに赤い太陽が
ゆっくりゆっくり沈んでゆく。
地平線に沈む太陽を見るのは初めてかもしれない。
そして、コバルトブルーに染まる空には、
少しずつ星が光り始める。
なんて美しい景色なんだろうか・・・














日もすっかり沈み、
真っ暗になった頃バスは坂道を登り始めた。
この坂道がきっとバンディアガラに
登る坂道なんだろう。
エンジンは轟音をあげ、かなり苦しそうだ。
たま〜〜〜に、
本当にたま〜〜〜に家があって、
明かりが見える。
もちろん焚き火だ。
そして、家も無くなり
真っ暗な大地しかなくなったところで
急にバスが停まると
一人の男の人がバスを降りていった。
いったいあの人はどこに行くつもりなんだろうか・・・














バスはその後も暗闇の中を走り続け、
19:00過ぎに小さな町、
バンディアガラのバス・ターミナルに着いた。
バスを降りてみるとバスの付近を
オレンジ色の街灯が照らしているが、
そこ以外はまったく何も見えないくらい真っ暗だ。
こんなところにひとりで着いたら、
ビビッて何もできないんじゃないだろうか。
バスを待っている間にソーリーが手配してくれていた
車が迎えに来てくれていた。
携帯電話があると、こういうときは便利だ。
ソーリーは残り少なくなったミネラルウォーターを
買い足しに近くの店まで行ってる間、
車に乗って待つことにした。














真っ暗で怖いな〜・・・
バンディアガラのバス停













その車に乗ってビックリ!
今まで乗った車とは
比べ物にならないくらいきれいで、
CDプレイヤーが装備されており
ビートの効いた音楽が流れている。
そして、走り始めてまたビックリ!
スピードメーターがちゃんと機能しており、
グリーンの光でメーターが照らし出されている。
こんなにいい車がマリにも
あるんだということを初めて知った。
















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