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これがドゴン式の階段だ!
ドゴン式の階段


















11月30日 水曜日 はれ       (その1)

こら〜っ、誰じゃ〜こんなに早くから
音楽を聞いとる奴は!!!
まだ5:00だというのに、
大音量で音楽を掛けとる奴がおる。
この感じじゃあ、隣の家に違いない。
その音に反応してか、
裏から羊やヤギやなんやかんやが鳴きだして、
これじゃあ眠れんぜ!
それでも、昨夜は23:00くらいには眠りについたので、
結構熟睡できたんじゃないかと思う。
「おはよう、トム!」
「おはよう!」
さすがのソーリーもこの音量では眠ることはできず、
すでに起きていたようだ。
「まだ日が出てないから、屋上に行ってみたらどうだ?」
「うん、行ってみるよ!」
屋上といっても、ここには倉庫用に建てられた
土壁の倉庫が数個あるだけなので、
その上に上がることになる。

「ソーリー、どうやって上がりゃあええん?」
「そこに立て掛けてある板が、ドゴン式の階段だ。
 足を横にかけて・・・」
は〜、さすがに現代文明から離れた所に
住んでいるだけあって、
階段も独特だ!(写真参照)













一苦労してなんとか倉庫の上に上がる。
うわぁ〜!!!
360度の大自然に囲まれて、
その中心に自分が立っていた。
辺りからは鳥のさえずりが聞こえ、
気持ちいい風がほんのり吹いている。
そして、遠くに大きな太陽がゆっくりと昇り始めていた。
こんな風景の中にいると、
自分の存在なんて本当にちっぽけなものに感じてしまう。
そして俺も、鳥や植物や通り過ぎていく風と同様、
自然の一部なんだな〜と思えてくる。
今日もいい天気になりそうだ!
「○×▽※◇〜!」
下から“つのだ ひろ”似のオーナーが大声で呼んでいる。
どうやら朝ご飯ができたようだ。
先ほどの階段を降りるのだが、
上がるときより降りるほうが怖い。
階段自体固定してあるわけではなく、
ただ単に立て掛けてあるだけなので
バランスを崩すとガクガク揺れて落ちそうになる。
それに手摺りが無いので
どこを持って降りればいいのか解らない。
一段ずつゆっくり確かめながら
なんとか降りることができた。
ふ〜っ!













すごい景色でしょ!
ジギボンボの夜明け
























豪快なオーナーさんなんだ!
お気に入りのオーナと一緒に















昨日夕食を食べたところに行ってみると、
テーブルの上にジェンネの月曜市で食べた
ミレッツ(たぶん粟)を練って揚げたものが
山積みにされていた。
ジェンネで食べたときとても美味しかったので、
うれしくなってしまった。
オーナーの入れてくれた
甘いミルクコーヒーを飲みながら食べる。
まだ揚げたてのようで、
表面はパリッとしているけど中はホクホクだ〜!
う〜ん、おいしい!
もうひとつ、もうひとつと、
ついつい五つも食べてしまった。
身振りで『とっても美味しいです』と伝えると、
オーナーは豪快に笑いながら、
そうかそうかと俺の肩をバンバンと叩いて
喜んでくれた。
このオーナーさんの人柄といい、豪快さといい、
人を包み込んでくれるような雰囲気がとても気にいった。













食事をしていると、オーナーの子供さんなのか
たくさんの子供がテーブルを囲んで
俺のことを見てはニコニコ笑っている。
ここでまたまた折鶴登場!
どこに行っても折鶴はとても喜ばれる。
そして、言葉などお互い解らないので、
お大事袋に入っているメモ帳を取り出し落書きしてみた。
「へ・の・へ・の・も・へ・じ」
声に出しながらへのへのもへじを書くと、
子供たちは何を書いているのだろうかと
俺の手元を覗き込んではニコニコしている。
そして、今度はそのへのへのもへじにワラ帽子をかぶせ、
服を書き込んで“かかし”を書いた。
「これは日本で農業をするとき、
 鳥が作物を食べないように立てておく、
 『かかし』というものなんだ。」
ソーリーに説明した。
「本当か? 実はマリにも
 これと同じようなものがあるんだ!」
今度はソーリーがバンバラ語で
子供たちにカカシの説明をすると、
子供たちも声を出して頷く。
そして、ソーリーが手を垂直に広げ
「カカシ!」と言ってカカシの格好を真似て見せると、
みんなが声を上げて笑った。












カカシ!
一緒に遊んだ子供たち





















ハイ、チーズ!
みんなで一緒に!






















今度はひとりの男の子が
俺のメモ帳に家のようなものを描いてくれる。
「グレネリ」
「グネ・・・」
「グ・レ・ネ・リ」
子供たちが声を揃えて教えてくれる。
「グレネリ!」
今度はちゃんと発音できたらしく、
子供たちはウー!と声を上げて喜ぶ。
ソーリーの説明によると、
“グレネリ”というのは
ドゴン族の村にたくさんあり、
人が住んでいるわけではなく倉庫のようなもので、
料理をする前の食材等を入れておくのだそうだ。
冷蔵庫みたいなものなのかと尋ねたら、
中は特別涼しいというわけではないみたいだ。
夕べここに来るまでに
『民族資料館の中を走っているみたいだ。』
と思わせた建物はこのグレネリのようだ。
そして、その子は手紙を書くから
アドレスを教えてほしいというので
メモに書いて渡したけど、本当にくるかな〜?
子供と遊ぶのは本当に楽しい。
言葉は通じなくても、
なぜかいつも解りあえたような気分になる。
それは、言葉が解らないぶん、
より相手のことを一生懸命理解しようと
思うからこそなのかもしれない。













7:00過ぎにいよいよ出発だ。
出発時にオーナーさんに、
このホテルは大変気に入りましたと
ソーリーに通訳して伝えてもらうと、
オーナーさんはグァハハハ・・・と大声で笑い、
「メルシー・ボクー(どうもありがとう)」
を連発しながら、また来なさいと見送ってくれた。
ホテルを出ると、大自然に囲まれた赤土の道を三人で歩く。
俺とソーリーと、あと一人ホテルのおじさんが一緒だ。
朝日に包まれてとても気持ちがいい。
道に映し出された自分の影が、妙に新鮮に感じる。
別にアフリカに居なくても日本でも
自分の影はいつも付きまとっているはずなのだが、
アフリカの日差しはなんだか特別なものに感じ、
影も濃いく感じる。
アフリカの大地に自分の影が映っているのは、
なんだかうれしいかった。
あっ、朝顔だ!
影を見ながら歩いていると、
道端に朝顔そっくりの花が咲いている。
アフリカに朝顔が咲くかどうか解らないけど、
ほんとによく似た花だった。













そろそろ出掛けますよ〜!
昨夜眠ったベッド



















「ウ・セオ?」 「セオ!」
挨拶を交わした女性













向こうから頭の上に荷物を載せた女の人がやって来る。
そして擦れ違いざまに、
おじさんがその人達に声を掛けた。
「ポー、ウ・セオ?、ウマナ・セオ?・・・」
あ、ドゴンの人の挨拶だ!!!
アフリカ旅行に旅立つ前、
アフリカ旅行記で読んだところによると、
「ドゴンの村では人に会うたび『ポー(まずこういう)
 ウ・セオ?(元気ですか?)
 ウマナ・セオ(ご家族は元気ですか?)
 ウナ・セオ(お母さんは元気ですか?)
 ウバ・セオ?(お父さんは元気ですか?)
 ウッウヌ・セオ?(子供たちは元気ですか?)
 バガラ・セオ?(おじいさんは元気ですか?)
 ナナ・セオ?(おばあさんは元気ですか?)』
 と尋ね、聞かれた相手はその小さな質問のたびに
 『セオ(元気です)』と答える。
 なんと長ったらしくて、冗漫で、
 時代遅れの何という温かな挨拶なのだろう。
 こんなのんびりとした生活が
 西アフリカの片隅で営まれている。
 ドゴンという人々がそこに暮らしている。
 このことを思い出すたびに心が
 なごんでいくような気がする。」
(ゴーゴー・アフリカ 蔵前 仁一)
こんな風に書かれていた。
その挨拶は実際には通り過ぎる間に交わされるので、
思っていたよりテキパキと早い挨拶ではあったが、
本当にそのような挨拶が目の前でされていることに、
なんとも和やかな気持ちになった。




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