TRIP



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12月1日 木曜日 はれ       (その3)

時間も10:30を回り、そろそろこのカンプも出発だ。
「元気でな! ドゴンに来たらまた泊まりにおいで。」
「皆さんもお元気で! ガジュベリ(ありがとう)!」
お世話になった人に挨拶して外に出ると、
そこには牛車が泊まっていた。
「これに乗るぞ!」
「えぇ、マジで?」
カバンを荷台の真ん中に載せ、
端っこに座ろうと思うのだが、結構高い。
「よいしょ!」
ジャンプしてなんとか座った。
ドライバーが牛を少し押すと勢いよく走り始めた。
おっとっと・・・
「俺、牛車なんて初めて乗ったよ。」
「そりゃ良かった。
 次に行く村まではかなり距離があるから、
 これに乗っていくことにしたんだ。
 ただ、この牛車は別料金だ。」
「えぇ、このツアーに懸かるお金は
 全て込みだって言ったじゃない!」
「この牛車だけは別なんだ。」
「だったら、先にそう言ってよ。」
「ゴメン、じゃあ俺が払うよ。」
料金はそんなに高いものではないので
別に構わないんだけど、
先に断ってくれなかったのがイヤだった。
「いや、俺が払うけど、
 今度からそういうときには先に言ってね!」
「解ったよ。」
まあ、ソーリーも悪気があったわけじゃないと思うから、
それはそれで良し!
気持ちを切りかえて出発進行!!!














なかなかいい乗り心地だ!
牛車に揺られて・・・












デコボコ道を牛車に揺られながら移動。
カタゴトガタゴトかなり揺れて
快適な走りでは決してないが、
このゆったり感が最高に乗り心地いい。
今日も空は快晴で、バンディアガラの大きな岩山が
どこまでもどこまでも続き
青い空とのコントラストがベストマッチ!
山の中腹にはどこまでもグレネリや土の家が続いている。
「ねぇソーリー、グレネリはどこまで続いとるん?」
「ず〜っとず〜っと向こうまで続いてる。
 数百キロは続くよ。」
こんな景色の中にいると、
日本での生活が嘘のように自分の考えや気持ちが
大きくなった気がしていた。














そこそこ心地よく走っていたのだが、
運転手はソーリーに何か告げると牛車を停め、
ある建物の中に走って行ってしまった。
「ちょっと用事があるらしいから、
 待っててくれって。」
鳥のさえずりを聞きながら待っていたのだが、
走っていないと風が来ないので
太陽がヂリヂリと照りつける。
ドライバーは、ちょっとどころか
5分経っても10分経っても帰ってこない。
「ゴメン。」
ソーリーが誤ってくれるけど、
別にソーリーが悪いわけじゃないし、
すでにアフリカン・タイムを持っている俺としては、
そんなにも気にはならなかった。
15分くらいしてやっとドライバーが帰ってきた。
なんとも、のんびりしたもんだ・・・













再び出発進行!
ゴトゴト揺られながら景色を見ているだけで大満足。
遠くから2〜3歳くらいの裸の子供が俺を見つけて
「サバ? サバ?」
と大声で呼びかけてくれるので、
大きく手を振るとその子供も
大きく手を振りながら答えてくれる。
横でミレッツをついているお母さんが手を休め、
その光景を微笑みながら見送ってくれる。
そうかと思えば200mあろうかという距離を
小さな女の子が俺の姿を見つけ、
全力疾走で駆け寄ってくる。
つまづきそうなその姿を見てハラハラするのだが、
女の子は夢中で走り、
ようやく牛車に追いつくと走りながら握手を求める。
「サバ? サバ?」
「サバ・ビアーン!」
手を握り牛車に併走してしばらくついて来るのだけど、
そのうち力尽きて少しずつ牛車と離れていき、
最後に立ち止まって見えなくなるまで手を振ってくれる。
胸が熱くなるような思いだった。
学校からは子供の元気な声が聞こえ、
はるか彼方からは太鼓の音が聞こえてくる。
いたるところでミレッツをついている人がいて、
村全体がリズムに包まれているように感じる。
そして、生活するための水を汲みに、
井戸に人が集まっている。
見る物全てが生活そのものだった。














とてもリズミカルなんだ!
ミレッツをつく少女

















ヤッホー!
牛車に揺られて・・・2





















約30分も走ると牛も疲れてきたのか、
だんだんペースが落ちてきた。
ドライバーは棒ッ切れのようなもので
「シイッ、シイッ!」
と声をかけながら牛のお尻を叩く。
すると牛はまたペースを戻すのだが、
またしばらくすると落ちてくる。
今度は叩かなくても「シイッ!」の掛け声だけで
ペースは戻るのだが、
何回かの掛け声のうちの数回はピシッと叩く。
後ろからヤギ車に乗った家族が近づいてくると、
迷惑をかけないようにと思ったのか、
ドライバーは懸命に棒ッ切れを振っては
牛のお尻を叩く。
『かわいそうに・・・』
と思ったけど、
これがアフリカ流のやり方なのかもしれない。
すると、横で見ていたソーリーがドライバーに
「叩くな!」とドライバーの腕を掴んだ。
ソーリーは牛が大好きだって言っていたから
かわいそうだと思ったのだろう。
ソーリーは優しい奴だな。














1時間くらい行くと、ある村に着いた。
「ここからは歩いていくぞ!」
牛車を木陰に止め、手綱を大きな木にくくりつけた。
荷物を背負って歩くのだが、
この村が次の目的地なのかと思いきや、
方向が全然違う。
向かう先には先ほどまで
いい眺めだと思っていた断崖絶壁がある。
だんだん坂道になり、
岩を避けながら崖をよじ登り始めた。
どうやら、この断崖絶壁を登らなくてはならないようだ。
先ほどのドライバーは例のミネラル・ウォーターを
頭の上の載せて運んでくれている。
申し訳ない・・・
斜面はどんどん急になり
ハーハー、ゼーゼーと
息を切らせながら登る。
やっぱアフリカの旅は
Not Easy(楽じゃない)!














山の中腹まで登ると、
土色の岩山の間に緑に覆われたところがある。
どうやら畑を作っている人達がいるようだ。
こんな山奥にトマトや玉ねぎが植えられている。
先ほど少し休憩したときに山水で顔を洗ったのだが、
その山水を利用して育てているようだ。
な〜るほど〜!
しかし、毎日こんな山奥まで来るのは
かなり大変だろうな〜!
そんな景色を眺めつつよじ登っていくと、
少し開けたところに出てきた。
こっ、こんなところに村が〜・・・?
ここが今夜泊まる“ベニマトゥ村”だ。















断崖の中腹から見た景色












フ〜、やっと着いた!
カンプメント辺りの風景
少し歩くと、カンプメントがある。
「今日はここのカンプに泊まるぞ。」
ふぅ〜・・・
背負っていた荷物が重くてヘトヘトだし、
すごく暑かった。
これだけ高いところまで登ってきたのだから、
蚊もいないかもしれない。
え〜い、長袖も脱いでしまえ〜!
T−シャツになると、かなり涼しく感じた。
背中が汗で濡れている。
真夏でも汗を掻かない俺にはかなり珍しいことだ。
カンプメントには
宿泊しているらしいフランス人がたくさんいた。
あっ、おかんに似たあのおばさんがいるぞ!
あのおばさんも登ってきたのだろうか?
すごいな〜、山登りするところまで、
うちのおかんにそっくりだ
(うちの母の趣味は登山だ)。




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