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なかなかいい写真でしょ?
水汲みの少女たち












12月1日 木曜日 はれ       (その4)

昼ごはんになるまで、
カンプの建物の裏にボンボンベッドを置いて日記を書く。
すぐそこが通り道になっているらしく、
たくさんの子供が井戸に水を汲みに行き、
大きなバケツやたらいを頭の上に載せて運んでいる。
そして、異国人の俺がいるのを見つけると
ガヤガヤと集まってきて取り囲まれ、
日記の文字を見てはなんだかんだ話し掛けてくるけど
何言っとんのかサッパリ解らん。
ちょっと困っていると、
ソーリーが来て上手く話をまとめてくれて、
なんとか脱出。
人気者も楽じゃないな!














「トム、グッド・ニュースだ!
 まだちゃんとしたことは解ってないんだけど、
 今夜仮面のダンスが見れるかもしれないぞ。」
「え゛〜〜〜〜、ほんとに???」
ドゴンのむらでは、天と地、動物や鳥、人間などを
象徴させた仮面をつけて舞踊する儀礼祭があることで有名だ。
しかし、そのお祭りがあるのは
毎年乾季の終わりの4〜6月上旬頃なので、
この時期に見ることはできないと思い
(多額のお金を払えばショーとしてやってくれるらしい)
最初からあきらめていたのだが、
ソーリーの話では今日たまたま村に新しい井戸ができたから、
そのお祝いに仮面の儀礼があるかもしれないという。
こんなラッキーなことってある?
楽しみになってきたぞ〜〜〜!!!














噂はこのカンプに泊まっている人たちにも
伝わっているようで、その話題で持ちきりだ。
「あら、あなたは・・・」
声のする方を見てみると数人のフランス人の中に、
夕べテリの村で一緒にジャンベを叩いた
フランス人の女性がいた。
「今夜パーティーがあるみたいだわね。」
「そうらしいですね。」
「ジャンベは置いてないのかしら?
 この人、ジャンベがすごく上手なのよ。」
周りのフランス人にジャンベの名手のように紹介された。
「あったらまた一緒に叩きましょう!」
「そうね!」
「詳しいことはまた調べておくから、昼飯にしよう。」
そう言って、ソーリーが昼ごはんを運んできてくれた。
先ほどミネラルウォーターを運んでくれた
牛車のドライバーも一緒に食べることになった。














メニューは、豚かなにかの肉が
トマトソースで煮込んであり、
スパゲティーに絡めてある。
“スパゲティー・イタリアン・ポークソテー風”
といったところだ。
これがバリうまい!!!
日本人の味覚にあっているのか、
それとも俺の味覚がマリの味覚に馴染んできたのか、
その辺りのことはよく解らないけど、
今では何を食べてもすごく美味しく感じる。
つい調子に乗って、お代わりしてしまった。
肉が硬いんだけど、逆に噛み応えがあっていい感じだ。
う〜ん、うまい!!!
食事が終わると、水を運んでくれたドライバーは
牛の待つ断崖の下の村に戻っていった。
またあの斜面を降りていくなんて、
本当にありがとうございました。














「ねぇソーリー、これ何?」
食事をした机の上に碁盤のような
チェスのような升目が記されていた。
「これか?ちょっと待ってて。」
そういうと、ソーリーは向こうから
 他のガイド友達を連れて戻ってきた。
駒を並べゲームが始まる。
どんなルールなのかはよく解んないけど、
何だかとても楽しそうだ。
最初のうちは楽しく見てたんだけど、
急に睡魔が襲ってきた。
ソーリーに解らないように、
目を開こうとするんだけど、
ついついコックリ、コックリしてしまう。
ソーリーに目ざとくそれを見つけられてしまった。
「トム、疲れてるんだな。こっちに来て休めよ。」
「いや、大丈夫だよ!」
「いいからいいから、無理すんな。」
せっかく俺に見せようと思ってやってくれたのに、
申し訳ない。
コーヒーをもらって少しゆっくりさせてもらった。














間もなく始まるよ!
仮面ダンスの会場




















夕方になると、ソーリーが急いでやって来た。
「トム、もうすぐ仮面のダンスが始まるぞ!
 見に行こう。」
「ほんとにあるんだね。」
急いで支度をしてカンプを出た。
ベニマトゥーの村は岩の合間に
石を積み重ねて作った家があり、
そこを抜けていくと岩場の間に
少し広くなったところがあった。
そこが儀礼会場のようだ。
岩の上に座ってダンスが始まるのを
今か今かと待っていると、
村の代表者のような人がやって来た。
「今日のパーティーは
 とてもプライベートなものだから、
 もし見ようと思うのなら
 5,000CFA(約1,000円)
 払ってもらえないだろうか?」
お金さえ払えば写真を撮っても構わないというので、
もちろん払ったのだが、他の欧米人は
「お祭りを見るのに5,000CFAは高いんじゃないか?」
と食い下がる人もいた。




























仮面ダンスの風景

仮面ダンスの風景2



















仮面をつけ衣装を着た人が20人くらい並んでおり、
その横に太陽を背にして
太鼓を持っている人が5人くらいいる。
太鼓の人は大きなタムタム太鼓の人がひとりと、
あとはトーキングドラムを肩から提げている。
よく見るとタムタムは裏の皮が
破けたままになっている。
合図とともに太鼓を打ち鳴らし歌い始めると、
ウサギを模ったものや
ヘビを象徴した仮面をつけた人達は
太鼓のリズムに合わせて円を描くように周り始める。
中には竹馬のようなものに乗った人もいる。
数回円を周ると数人が円の真ん中に入り踊り始め、
周りにいる人達から奇声が上がると、
見ているこっちまで気持ちが高ぶってくる。


































仮面ダンスの風景3

仮面ダンスの風景4










2メートルくらいありそうな仮面を付けた人が円の中に入る。
この仮面はヘビを象徴しているのだそうだ。
その人は腰をかがめてお辞儀をしたような格好になり、
自分を中心にグルグル回り始めると太鼓奏者は乱打を始める。
しかし、これだけ長い仮面だから遠心力と重さのせいで
先の方が地面に擦れてうまく回れなくなる。
もう一度やり直し。
しかし、なかなかうまくいかないようだ。
3回目の挑戦!
勢いをつけて回ると周りの人から奇声が上がり、
ダンスも最高潮に達する。

































仮面ダンスの風景5

仮面ダンスの風景6


























今度は竹馬のようなものに乗った人が
ふたり円に入ってきた。
太鼓のリズムに合わせ、
持っているボンボンのようなものを
振り回しながら踊る。
踊っている人も、見ている人も
太鼓を叩いている人も大興奮だ!!!
日本でいろんな本やインターネットで調べたときに
写真でしか見たことのなかった世界が、
目の前で繰り広げられている。
その光景を見ているだけで
鳥肌が立つほど感動していたが、
自分の幸運にも感動していた。
何がなんだかよく解らないまま
こんなところまで来て、
自分がやりたい、見たい、と思っていたことが
全て叶えられていることが恐ろしかった。
こんなにいっぺんに幸運を使うと、
帰りの飛行機が落っこちるんじゃないだろうかと
本気で心配になってきた。
しかし、ここまでいろんなことが叶えられているのだから、
これからの人生でやらなくてはならないことが
たくさん残されているような気もしていた。































仮面ダンスの風景7

仮面ダンスの風景8
約1時間でダンスは終わった。
ダンスのときは、お祭りだから
村中の人全員で盛大にやるのかと思っていたら、
仮面ダンスには女・子供は参加できないらしく、
女の人と子供たちは
少し離れた岩場の影からダンスを見守っていた。
(旅行者の女性は近くで見ることも可能)
しかし、日が暮れるとダンスの二次会があり、
このときは村人全員で盛大にやるのだそうだ。
また楽しみになってきたぞ〜!!!




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