TRIP



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美しい・・・
バンディアガラの日暮れ




















12月1日 木曜日 はれ       (その5)


日暮れまではまだ少し時間があったので、
ダンスを見に来ていた
おかんに似たフランス人のマダムと、
その人のガイドさん、ソーリー、俺と、
もうひとりの五人で
バンディアガラの丘の上からの
景色を見に行くことにした。
岩場を歩きながらマダムとお話させてもらった。
「ボンジュール、マダム!
 マダムは僕のお母さんによく似てるんですよ。」
「あら、そう! 私はモニーク、あなたは?」
「トムです。お一人で旅行されているのですか?」
「ええ、そうよ。」
話によると、定年退職した後ひとりで
南米、アメリカ、オーストラリアと
世界中を旅して周り、
マリには1ヶ月滞在する予定なのだそうだ。
「おひとりだと大変じゃないですか?」
「もちろん、大変よ!
 でも、それがとっても楽しいの!
 日本にはまだ行ったことが無いのよ。
 折り紙が有名よね?」
「よくご存知ですね。」













そんな話をしながら歩いていくと、
目の前が急に開けてきた。
う〜〜〜〜わ〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!!
岩場の端っこまで来ると、
アフリカの大平原が広がっていた。
遠く彼方に地平線が見え、
土の村、大木以外は何もない。
右手に広がる断崖にはには、
今まさに太陽が沈もうとしていた。
今朝牛車に乗って眺めていた大断層
(たぶん高さ100メートルはあると思う)
の頂上にいるということが信じられなかった。
景色には感動していたのだが、
手摺りも何も無いところからの眺めは、
足がすくんでしまう。
でも、ソーリーや他の人達は絶壁の一番端っこから
足を向こうにブラブラさせながら座っている。
お〜ぉ、こわい!
俺以外はみんなフランス語が話せる人達なので
会話が弾んでいる中、
俺はモニークさんに折鶴を作ってあげることにした。
「モニークさん、これが日本の折り紙の
 “折鶴”です。どうぞ!」
「ま〜、美しい、素敵だわ〜。どうもありがとう。」
「一緒に写真に写ってもらえませんか?」
「もちろん! 私は折り紙、トムは私の写真を
 お土産に持って帰るのね。」
そう言ってアフリカの大平原をバックに
一緒に写真に入ってもらった。














うわっ〜〜〜〜!!!!!
アフリカの大平原



























おかんに似とるで(笑)
モニークさんと



















日も暮れて、少し暗くなり始めたので
カンプに一度戻った。
ダンスの二次会の前にシャワーを浴びることにした。
今日はまたバケツ式になったけど、
いつもの泡々戦法でバッチリじゃ。
洗濯物は明日バマコに帰るから、
ラフィア
(バマコでのホテル)ですればいい。
シャワーが終わる頃には遠くから
太鼓の音が聞こえてきた。
パーティーが始まったようだ。
太鼓の音を聞いてると
居ても起ってもいられなくなり、
ソーリーを誘ったのだが、
もう少し後からにしようというので、
一人で先に出かけることにした。
懐中電灯を持って、
すでに真っ暗になった道を(道など無いのだが)
太鼓の音を頼りに歩いていく。
村の真ん中辺りに来ると広場に人々が円を作り
その中で数人が入れ代わり立ち代わり踊っている。
スッゲー!!!














今度は衣装は誰も着けておらず、
普段着のままで踊っているが、
何とも不思議な踊り方だ。
リズムに合わせてステップしながら
両手を前に出し、擦り合わせるようにして踊る。
推測するに、このパーティーは
井戸を与えてくださった自然の神様と
彼らの先祖様に捧げるパーティーで、
手を擦り合わせるような踊りは、
幽霊になった先祖様を
表現しているのではないだろうか?
村にはもちろん電気は無いのだが、
唯一、車から取り出したバッテリーに
蛍光灯を繋いだ明かりがあり、
その明かりの横に太鼓陣がいる。
トーキングドラムが3〜4人、
タムタムがふたり、
つぼをひっくり返したような太鼓を
手で叩いている人がひとりで、
シンコペーション
(アクセントの位置をずらしたリズム)
だらけのリズムを叩いている。
何とも言えないツボをついたリズムを聞きながら、
踊りのよく見えそうな場所を探していると、
石につまづいて転びそうになり、
ついつい「うわぁ!」と声を上げてしまった。
「大丈夫?」
見ていた欧米人に声を掛けられた。
「大丈夫です、うわぁ〜!」
「ここは岩だらけなのよ、
 あっち側に回ったほうがいいわ。」
「そうですね、ありがとうございます。」
辺りは本当に真っ暗なので
蛍光灯のところ以外ほとんど何も見えないので
気が付かないうちに
岩だらけのところを歩いていた。
あ〜ぁ恥ずかしかった!














本当に真っ暗
真っ暗なダンス会場


































大興奮!!!
ダンスの風景
















反対側に回ると、子供たちがたくさんいた。
「サバ? ダンス?」
そう言ってたくさんの子供が俺の周りに集まり
手をつないで小さな輪を作って
一緒に踊り始めた。
リズムに合わせて
ただ飛び跳ねているだけで楽しくなる。
どの子も異国人の俺と踊りたいようで、
俺の隣に来たがるのだが
俺には腕が二本しかない。
俺と直接手を繋げない子が喧嘩をし始めるので
身振り手振りで、みんな仲良く踊ろうと言い、
指一本ずつそれぞれの子に握らせてあげ
飛び跳ねて踊る。
いててて・・・
でも少々痛くてもみんな仲良く踊ると楽しい!
いつの間にかソーリーもやって来ていて、
ソーリーも仲間に加わる。














メインの円の中もかなりの盛り上がりようで、
女の人が狂ったような奇声を上げると
ますます気持ちが高ぶる。
円を囲んでいるドゴンの人も欧米人も、
だんだんステップを踏み始め、
リズムに合わせて輪がうごめき始めた。
うわぁ〜〜〜、ど〜なっとんじゃ〜〜〜!!!
あまりの盛り上がりように
俺もかなり興奮してきた。
本当にアフリカ人はこうやって踊っとんじゃ!
電気が無い、だから夜の娯楽なんて
ほとんど無い人々にとって、
パーティーはすごい楽しみに違いない。
「トム、パーティーはまだ続くから、
一旦カンプに戻って飯を食おう。」
「うん、解った。」
そう言ってダンスの輪から離れた。














その時、カメラのケースが
無くなっているのに気が付いた。
どこにやったんだろ?
さっき子供と踊ったときに
落としたんだろうか?
カメラは無事なので、
『まぁいいか!』って思ってたんだけど、
この広大なアフリカの地に
置いてけぼりにして帰るのが
かわいそうな気がし始めて
ガッカリしてしまった。














カンプメントでの今日の夕食は、
ニャムとサツマイモを噴かしたものに
ビーフシチューのようなものをかけて食べる。
うまい!
本当にビーフシチューのような味がするが、
お昼同様肉がとても硬くて、
歯の間に挟まってしまうのでなんとも食べにくい。
「トム、これを飲んでみろよ!」
ペットボトルに入った黄色っぽい液体を、
勧められるがままに一口含んでみた。
「んんっ、すっぱい! これ何?」
「トムが飲みたいっていってた
 ドゴンのビールだよ。」
「コンジョってやつ?」
まぁ、確かにビールっぽいっちゃ〜
ビールっぽいけど、
ミレッツの繊維が混ざっていて、
ほんと植物からできてるって感じだ。
でも、あまり俺の口には合わなかった。














食事の間も太鼓の音が聞こえていて、
早く見に行きたくて落ち着かない。
大急ぎで食べて再びパーティー会場に向かう。
すると、到着したと同時に太鼓の音が鳴り止み、
パーティーはお開きとなってしまった。
え〜、マジで〜?
夜更けまでやるんじゃなかったん?
カメラケースを落として、
ツキまで落ちたんじゃないだろうか?
仕方なく帰ろうとしたら、
これから女の子たちだけの
ダンスがあるという。
よっしゃ〜、こうでなくちゃ!!!














先ほどのバッテリー式蛍光灯も消され、
星の明かりだけでのパーティーだ。
♪ポン・カー・ポン・カー♪
8歳から18歳くらいの
約30人の女の子が輪になり、
誰かが太鼓を叩き始める。
いや、待てよ〜、
誰も太鼓なんて持ってないぞ〜!
目を凝らしてよ〜く見てみると、
ボディー・パーカッション
(自分の身体の一部を叩いて演奏する)
のようだ。
パーカッション担当の子は
両足をしっかりと閉めて、
低い音は組んだ手を腿の辺りに打ちつけ、
高い音は足のつけ根辺りを叩いて演奏している。
これが信じられないくらい
大きな音で鳴っている。
ひとりの女の子が輪の真ん中に出てきて、
クルクル回りながら
ひとしきり踊ると次の子に交代。














全員が一通り踊ると
次は半円になって先ほどとは違うリズムに合わせ、
ひとりの子が半円の真ん中に出てくると、
ひとフレーズ何か唄うと、
同じフレーズをみんなが歌う。
そうやってみんなが歌い、踊り、騒いでいる。
マリに来て以来、女の子が
こんなに楽しそうにしているのを初めて見た。
女の子はいつもおとなしく、
そしていつも働いている姿しか
見たことが無かった。
ソーリーが、マリの女はいつも
一歩下がっていなくてはならないと言っていたので、
旅行者と交流することもほとんどないようだ。
だから、女の子が
こんなに楽しそうにしているのを見ていると、
うれしくなってしまった。
屈託のない笑い声は夜遅くまで
ドゴンの星空に響き渡った。














カンプに戻ると21:00を過ぎたところだった。
借りたランプの明かりのもとで日記を書く。
ソーリーも周りのフランセーも、
すっかり眠りについたようだ。
今夜ももちろん外で寝るのだが、
蚊帳は無しで寝ることにする。
ここは蚊がいそうにないから大丈夫だろう。
夜空の星があまりにきれいだったので、
蚊帳に邪魔されず星を眺めながら眠りたかった。
明日はバマコに帰る。
この美しい星空も今夜が見納めだ。
あ〜、哀しいな〜・・・
旅も折り返しだ。
うれしいような、寂しいような・・・
とりあえず、今日も素晴らしい一日でした。
星空見ながら寝ます。
夜はメチャ涼しいっす!!!

                     22:28




(その日の日記の落書きより
俺ってほんま旅運ついとるよね〜〜〜!
もう何日も鏡見てないな〜〜〜
ヒゲどうなってるかな〜〜〜?
千秋は広島で寂しがってるかな?
おやすみ〜!!!




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