TRIP



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12月2日 きんようび  はれ       (その1)

ヒョ〜〜〜〜!!! すごい風。
ドゴンの村には毎朝
こんなに強い風が吹くんだろうか?
ビールやコンジョを飲んだせいか、
夕べも数回トイレに行った。
その度に夜空を見上げる。
う〜ん、いいね〜・・・














言葉なんていらない・・・
明けてゆくバンディアガラ












5:30頃トイレに行って戻ってくると
ソーリーがイスに座ってタバコを吸っていた。
暗闇の中、タバコの小さな火が辺りの静けさを
より一層感じさせた。
俺も横にあったイスに座り、
いつまでも星空を眺めた。
言葉は何もいらなかった。
静寂に包まれ、
少しずつ少しずつ白み始めていく空を眺め続けた。
太陽が顔を出すと、
向こう側にある岩山が輝き始める。
“美しい時間”
そんな言葉がピッタリのひとときだった。














すっかり夜が明けると、
散歩がてらカメラのケースを捜しに
昨日のダンス会場に行ってみることにした。
昨夜はとても広い所だと思っていたけど、
明るいところで見ると結構狭かった。
転びそうになった所や、子供たちと踊った所など、
ソーリーとふたりで散々捜したけど、
どうしても見つからない。
しょうがない、あきらめた!
あのケースはベニマトゥの村に
残るようになっていたんだろう。














岩の合間にあるんだ!
ベニマトゥー村











この村でも朝早くからたくさんの人が働いている。
新しい井戸ができたからか、
子供や女の人が頭の上に
大きなバケツや桶を載せて歩いている。
おお、どこかから太鼓の音が聞こえてきたぞ〜、
っと思ったら、バケツの裏を
トントコ叩きながら水を汲みに行く人でした。
カンプで使わせてもらうシャワーや料理の水も、
こうやって誰かが運んでいるに違いない。
大切に使わせてもらおう。
カンプに戻るとモニークさん
(おかんに似たひと)に会った。
「おはよう、トム。よく眠れたかしら?」
「おはようございます。よく眠れました。」
声を掛けてくれるのはモニークさんに限らず
カンプの人も、旅行者も、そのガイドさんも
誰もが声をかけてくれる。
横のテーフルにいる人達は
ブラジルから来たのだそうだ。
この旅でもたくさんの国の人と話したな〜。
日本、マリ、セネガル、イタリア、フランス、
ドイツ、ブラジル・・・
数え上げたらきりがない。














しばらくすると朝ご飯になった。
今朝も甘いミルクコーヒーと
ミレッツを揚げたもの。
まだホカホカでおいしい!
今日もお腹いっぱい食べた。
食後にコーヒーを飲んでいると、
遠くにモニークさんの姿が見える。
そろそろ出発するようだ。
歯を磨き、身だしなみを整え、
さっそうと歩いてゆく。
たくましい!!!
俺がじいさんになってもあんな風でありたい。














さ〜て、俺もそろそろこのカンプを出発だ!
荷物をまとめて背負うと、
俺の荷物はカンプメントの人が
運んでくれるという。
いつも本当にすんません。
今日も広大な大地を歩く。
木々の間を小学生くらいの男の子が
弟を連れて何か唄いながら歩いている、
たったそれだけで絵になる。
たくさん用意してきたカメラのフィルムだけど、
どんどん無くなっていくのも仕方ないさ。
荷物は持ってもらっていたので楽チン楽チン、
と思っていたら、再び岩山の急斜面を登り始めた。
ベニマトゥの村がバンディアガラ断崖の
頂上だと思っていたが、
まだ中腹だったようだ。














こんな急斜面に、また畑が見える。
緑が眩しいくらいだ。
人々は一生懸命水を撒く。
そりゃ、毎日これだけ暑いんだから大変だよね。
ソーリーの話だと、この畑は玉葱畑で、
収穫された玉葱を頭の上に載せて運んでいる人は、
今日開かれるバンディアガラの
町の市で売るのだそうだ。
採れたての野菜は新鮮で、
さぞかし美味しいことだろう。
日本ではそうはいかない。
採れた物は農協に持っていかれ、
市場に持っていってセリに掛けられ、
中卸がそれを買い付けて
スーパーやお店に運ばれ、
やっと消費者に届く。
確かにこうすれば便利なことも
たくさんあるんだろうけど、
自分が一生懸命育てた野菜を収穫して、
自分の手で売る。
とっても単純だけど、
とっても素晴らしいと思う。
そして一生懸命働いて稼いだお金で
自分の欲しいものや生活に必要なものを買う。
それが生きる歓びだと思う。
最近の日本では、振り込め詐欺や強盗、窃盗、
それに、悪いことはしないにしても、
宝くじを当ててなんとか楽をして
お金を手に入れようとする奴が多いけど、
そんなお金で欲しいものを買っても
嬉しくともなんともないじゃん。
みんな、仕事しようぜ!
一生懸命に仕事をして
頑張って貯めたお金で欲しいものを買う、
頑張って貯めたお金で
こうして旅をするから楽しい、
きっとそうだと思う。














ようやく頂上まで登ると、
少し広くなったところに数台の車が止まっていた。
そのうちの一台に乗って
バンディアガラのバスターミナルに向かうようだ。
車にはビールやコーラのケースが
たくさん積んであり、
いかつい男の人がトランクからそれを下ろすと
空き瓶のケースをまた積み込む。
たぶん先ほどの岩山を誰かがカンプまで運び、
カンプから空き瓶をここまで運んでいるのだろう。
ソーリーがベニマトゥのカンプは
とても高いといっていたけど、
無理もないことかもしれない。




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