TRIP



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12月2日 きんようび  はれ       (その5)

やっとバスが来た。
ベンツ製の、大きな窓にスモークが張られている豪華なバスだ。
今回も名前を呼ばれた順番にバスに乗り込んでいくのだが、
ラッキーなことにソーリーの名前が一番に呼ばれた。
バスに乗り込み、すかさず運転席後ろの一番前の席に座る。
外から見るのとは大きく違い、車内は砂埃が充満している。
30分以上掛けてようやく全員がバスに乗り込んだようだ。
15:00少し回って出発!!!
バスが走り始めて始めて、
ソーリーがなぜこの席を取ったのかが解った。
ドイツ製に限らず、最近の豪華観光バスは空調が効くため、
窓が開かないように作られている。
しかし、中古でマリに回ってきたバスは、
もちろん空調なんて効かないから車内はかなり暑いのだが、
唯一窓が開くところがある。
それが運転席の横の窓だ。
だから運転席のすぐ後ろのこの席は、
風が入ってきて少し涼しい。
ソーリーの名前が一番に呼ばれたのも、
ソーリーが車掌にいくらかのチップを
渡したんじゃないかと思うが、
実際のところは解らない。














きれいだな〜・・・
沈みゆく太陽














バスはこの前走ってきた道を引き返す。
このバスは乗り換えることなく、
バマコまで直接帰ることができるのだが、
所要時間は約10時間。
結構な長旅だ。
相変わらず、ポツリ ポツリと村が見える。
この広大な景色を見るのも最後かもしれない。
「あれ見て!」
ソーリーが指差す方を見ると
地平線にオレンジ色の大きな太陽が沈んでいく。
『地平線に沈む』と言うより、
ガスのようなものが掛かっているのか、
空中で消えていくといった感じで
ゆっくりゆっくり無くなってゆき、
ついに沈んでいった。














バスはスムーズに走ってゆくが、
車内はかなり暑いしイスとイスの間がかなり狭いので、
窮屈で足が痛い。
それにもかかわらず眠い。
この景色を見納めにしっかり見ておこうと思っても
眠くて眠くて、催眠術にでも懸かったみたいだ。
コックリ、コックリとなりながら
眠っては起き、眠っては起きしていると、
休憩になった。
バスを降りると、遠くまで走って立ちション。
はぁ〜、スッキリ 
道路の両脇には屋台が並んでおり、
どこかからソーリーがスイカの切り身を
買ってきてくれた。
豪快にかぶりつく。
おぉ、うまい!
水分もたっぷりで、ちょっと大味だが甘い。
かぶりつきながら、辺りの店をうろつく。
あっ、肉売ってる!
この前タクシー・ブルースで移動中に
バンバラ族の村で休憩したとき、
他の乗客が肉のかたまりを焼いたものを
美味しそうに食べていた。
俺も食べたい。
適当に店を選んで肉を注文しようとすると
「待った〜!」と言いながらソーリーが飛んで来た。
「気をつけて買わないと、犬の肉かもしれないぞ!」
「ええ、まじで?」
とは言ってみたものの、なるほど、十分ありえる。
ソーリーが選んでくれた店でやっと手に入れた肉は、
少し硬かったけど美味しかった。
満足!














休憩も終わり、再びバスに乗る。
すると、また眠くなる。
ど〜なったんじゃろ?
バスは直線の道をひたすら走る。
滅多に対向車も来ないので快適なのだが、
たま〜に擦れ違う対向車が
大型の車だったりするとビビる。
こんな擦れ擦れで通るんだから、
ゆっくり走ってくんなきゃ
いくら命があっても足らんぜよ!
道端には相変わらず、
事故で横転したのであろう車や
トラックの燃えた残骸が
いたるところで見られる。














しばらく走ると再び休憩になった。
バスを降りると、
すっかり暗くなった路上の両端に
たくさんの屋台、とは言っても
四隅にブロックを置いて
そこに板を載せただけの台の上に
いろんなものを載せて売っている店が並んでいる。
こんな広大な大地に、電気やガスなどが来ている訳はなく、
ランプに火を灯して、いろんなものを売っている。
薄明かりに照らされたマンゴやスイカといった果物、
炭をおこして魚のフライを作っている人もいる。
こちらでは肉を焼いている。
日本全国どこを捜しても
今では電気の来ていない所なんて
無いんじゃないかと思うが、
これだけ広いマリ国では、
電気が来てない所があっても
仕方ないのかもしれない。
でもこんな所にいると、
日本の自分の家に電気が来ていること自体、
すごく不思議で有り難いことのように感じる。
そして、ここにいる人達は
文明の利器などに頼らなくても、
たくましく、自分たちの力で生きている。
電気が来ていないことは当たり前すぎるくらい
この人達にとっては当たり前で、
だからといって電気がある暮らしに
執着など何も持ってないように見えるくらい
人々はあっけらかんとして明るい。
ランプに灯る明かりを見ながら、
この素朴でたくましく生きる人たちに
感銘を受けていた。














お腹も空いてきたし、
晩御飯を食べることになった。
近くにあったレストランで、
鳥の足と、フランスパンを一切れ買って、
テイクアウトにして食べた。
鳥の足は、ケチャップのようなもので煮込んであり、
とても美味しい。
腹ごしらえもできて、
バスに乗り込みまたまた出発。
10時間はとっくに過ぎているけど、
一向につく気配は無い。
時間が経つにつれてお尻は痛くなるし、
とにかく狭いので、長身の俺としては、
このままだとエコノミー症候群になりそうだが、
こんな過酷な状況でも眠くなる。
俺もこの旅行で、
だいぶん鍛えられたのかもしれない。
ようやくバマコのソゴニコ・バスターミナルに到着したのは
深夜の3:00だった。
12時間か〜・・・
やっぱアフリカの旅はNot eazy!(楽じゃない!)













この時間じゃあ、さすがにライヴも終わってるだろうし、
見に行く元気も残っていなかった。
バスを降り、近くにいるタクシーに
声を掛けて乗ろうと思ったら、
なにやら運転手とソーリーがもめている。
ようやく2,000CFA(約400円)で
話がついたようだ。
「一台の車に運転手がふたり乗っているから、
 とか言って高くとろうとしやがる。」
「えぇ?」
ソーリーはイライラしているようだったけど、
なんで運転手がそんな訳の解らない事を言っているのか
詮索する気にもならず、
後部座席に座ってラフィアを目指した。
ホテルに着くと、ドミトリーのベッドは満員らしく、
ドミの部屋の地べたにひかれているマットに案内された。
ぐぅわ〜〜〜疲れた!!!
今日のところまで日記を書こうかとも思ったのだが、
あまりの疲労に断念せざるを得なかった。
もう4時前だ。
頑張って歯磨きだけしてマットに倒れこんだ。
                       3:40




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