TRIP



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12月4日 にちようび  はれ            (その1)

なんだなんだ〜!
変てこな夢で目が覚めた。
なぜか俺がドラマの主人公のような感じで夢の中に現れ、
ヒロインのきれいな人と東京のような大都会を
タクシーで走っていたのだが、
タクシーを降りるときにそのヒロインの歯が
ボロボロと抜け落ちていって、
「ねぇ、私病気なの? 私病気なの?」
と泣きまくっているところで目が覚めた。
なんとも奇妙で、目が覚めてもしばらく
ボーっと天井を眺めていると、
平塚さんの目覚ましが鳴った。
時計を見ると5:00だった。













出発は7:00なので結構ゆとりがある。
身支度をしながら歯を磨き、
口をゆすごうと思って洗面所に入った。
すると、なんと金髪の女性が
トイレに屈んでいるではないか!
「アイム・ソーリー!(ごめんなさい!)」
大声で叫んで洗面所を出た。
あ〜、ビックリした!
女の子なんだから鍵くらい掛けてしてよね、ほんま。
少し時間を空けてから再びそ〜っとトイレに入ると
今度は大丈夫だった。
安心しておしっこしてたら、急に電気が消えた。
どうやら今度は停電らしい。やれやれ・・・














荷造りも済ませ、これから向かう
セネガルの情報を仕入れようと思い、
タクシーが来る時間まで
ラフィアにおいてある日本人ノートを読ませてもらった。
ここラフィアは経営者が日本人ということもあり
多くの日本人旅行客が宿泊するらしく、
自分が今まで周ってきた国やマリ国内の情報を、
後に宿泊しに来る人のために
このノートに書き残してくれている。
セネガルの情報も少しは載っているが、
大半はいろんな国の交通事情やビザ
(その国に入る為の入国許可書のようなもの)の取得の仕方、
国境の越え方などが書き記してある。
『ケニヤは今でも治安が悪く、
 昼間でもひとり歩きは危険だから気をつけてくださいね!』
『サハラ砂漠はヒッチハイクで渡ることができます。
 大変ですが頑張ってね!』
『ナイジェリアは噂されているほど危険は感じなかった。
 親切な人も多いけど、注意するに越したことは無い。』
みんなよくいろんな所に行くね〜、感心するよほんま・・・
それにしても、ヒッチハイクで
サハラ越えをする人がいるなんて・・・
今回の旅ではサハラ砂漠に行くことはできなかったが、
サハラ砂漠を横断できるというのはとても興味深い。
いつか俺もやってみたいものだ!














ダカール(セネガルの首都)のお勧め宿や、
レストラン情報をメモしていると、
7:00少し回って迎えのタクシーが来た。
「ボクンさん、いろいろとお世話になりました。
 ソーリーが僕の蚊帳を持ってくるかもしれないけど、
 都合で早く出発したと伝えてください。」
「ああ、解ったよ。『もしもし』の奥さんによろしくな!
 お土産かって帰れよ。」
「そうですね、本当にいろいろありがとうございました。」
何度もお礼を言ってタクシーに乗り込んだ。
ボクンさんのいろんなアドバイスが無ければ、
こんな素晴らしい旅にはならなかったかもしれない。
ボクンさん、どうもありがとうございました。














タクシーはまずソゴニコバスターミナルに向かう。
朝早いからか、街はまだそんなに賑やかではないが、
横から容赦なく車が割り込んでくるので、
その度に恐ろしい思いをする。
「上野さんがモプティへ行ったときは
 どのくらい掛かりましたか?」
「そうだな〜、だいたい8時間くらいだったかな〜。
 結構掛かりますよ。」
「そうは言っても、上野さんのフライトは
 変更されてれば夜の10時くらいでしょ?
 そうなったら、今から12時間くらい
 空港で待つことになりますよ。」
「じゃあ、平塚さんがモプティに着くほうが
 早いってことか〜・・・」
やっぱりアフリカの旅はNot eazy!
(楽じゃない!)














いつ見てもすごいな〜・・・
ソゴニコ付近の風景

















タクシーはニジェール河に掛かる橋を渡り始めた。
バマコともお別れだな〜・・・
橋を渡る途中に後ろを振り向く。
今度はいつ来るんだろう?
死ぬまでに来ることがあるのかな〜?
少し感傷的になるけど、まだ旅が終わったわけではない。
今から向かうセネガルのことを考えると、
いつまでも感傷に浸っているわけにはいかない。
15分くらい走るとソゴニコに着いた。
「じゃあ上野さん、ここでお別れですね。」
「少しの間でしたが楽しかったです。
 ダブル・ストローク、頑張ってくださいね。
 解んなくなったらメールください。」
「ありがとうございます。旅の話、新鮮でした。」
「じゃあお互いいい旅をしましょうね。」
「お元気で!」
握手をすると、平塚さんは元気に
バスターミナルに入っていった。














こうして、またひとりの旅が始まった。
不安はあれど、寂しくはなかった。
再びタクシーに乗り込み、空港を目指す。
朝が早いからか、空港に近づいても
初めてマリに来たときカルチャーショックを受けた風景は
見られなかった。
今となっては、もう一度あの風景を見ずに旅立つのは、
なんだか淋しい。
空港には8:00過ぎに着いた。
「バマコ セ・ボン!(バマコはいい所だね)」
トランクから荷物を出してくれている運転手に言うと、
運転手は晴れやかな笑顔で見送ってくれた。














バックパックを背負い空港の中に入っていく。
入り口付近には汚い字で何か書いてある看板が立っている。
それでなくてもフランス語は解らないのに、
この汚い字では何が書いてあるのかサッパリ解らない。
きっと、フライトの変更について書いてあるのだろう。
建物の中に入ると、まだ閑散としてた。
近くにあったベンチをひとつキープして、
イスと荷物とジャンベをワイヤー式の鍵でくくりつけた。
天井には大きな羽の扇風機があり、
生温い風を送っているが、かなり暑い。
ここで12時間か〜・・・
まぁ、しょうがない。
アフリカン・タイムだと思ってデゲデゲいくさ!














とりあえず、フライトは変更されているのかどうか
確認してみよう。
マリの空港は英語の通じる人がほとんどいないようで、
ちょっとしたことで苦労する。
インフォーメイションらしきところに行っても、
英語で喋ってるのかフランス語で喋ってるのかさえ解らないし、
アナウンスされている内容も、
トイレがどこにあるのかもよ〜解らん。
いや、全然解らん!!
まあ、そのうちなんとかなるじゃろ〜て。
今日は朝から何にも食べてないから売店に行ってみよう。
何かお腹の足しになりそうなものを探すのだが、
お菓子のようなものしかないみたいだ。
パンぐらいあるだろうと思っていたけど、
『パンを食べたい。』なんてフランス語は
話せるわけないし・・・
この売店以外にはレストランなんてなさそうだ。
う〜ん、困った・・・














仕方なく売店にある一番腹の足しになりそうな
クッキーのようなお菓子を買うことにしたのだが、
売店のおっちゃんもよ〜解らん。
いったいいくら払えばいいのかわからないので、
持っている小銭を手に平に載せて
身振り手振りで必要なだけとってくれと伝えると、
おっちゃんはごっそり小銭を取っていった。
ぼられたのかな〜・・・
イスに戻り早速買ってきたクッキーを食べてみる。
か、かた〜い!
かなり強く咬まないと食べられない。
味は砂糖と香辛料がまぶしてあり、
なんとも不思議な味だ。
持っているミネラル・ウォーターを飲みながら
何とか食べることができたが、
腹の足しになったのかどうだか・・・




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