TRIP



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12月4日 にちようび  はれ            (その3)

19:00過ぎに飛行機はセネガルの首都
ダカールの空港に着陸した。
機体が無事に着陸すると後ろから拍手が湧き起こり、
隣に座っていたフランス人が爆笑していた。
バスに乗って空港の建物に入る。
この前と要領は同じなのでここも手慣れたもんだ。
まずは入国審査。
この前の変な奴がいなけりゃいいけど・・・
と思っていたら今度はちゃんとした人だった。
すんなり入国を許され、
今度は手荷物が流れてくるのを待つ。
なかなか荷物が出てこなくてイライラするが、
ここはアフリカ、デゲデゲいこう!
ようやく荷物を拾い上げて空港を出るころには
20:00を回っていた。














出口の方に向かっていくと
正面に策のようなものがあり、
そこへたくさんの黒人がへばりつくようにして、
出てくる人を待っている。
うえ〜っ、怖いよ〜・・・
こいつらが客引きだろうか?
こういった発展途上の国に来ると、
空港出口でホテルやタクシー等の
客引きにワッっと囲まれてしまい、
変な客引きに捕まると、
べらぼうに高いホテルに連れて行かれたり
拉致・監禁されたりして大変なことになり、
下手をすると殺されて金品を奪われることもある。
なるべく目を合わさないようにして出口を目指す。
正面玄関から外に出ると、
意外にも客引きの類はいないようだ。
かなり気合を入れていたぶん、
ちょっと呆気なかったけど、
それはそれでうれしい。













近くにいた警官に教えてもらって
タクシー乗り場に行くと、
オンボロ車がたくさん止めてある一角に出てきた。
数人の黒人が集まって何か話をしている。
なんとなく近寄りがたい感じだが、
こちらが話しかける前に
向こうから話しかけてきた。
「タクシーか?」
「え、ええ、そうですけど・・・」
「どこに行きたい?」
「ホテル・プロバンサル・・・」
あらかじめ調べておいた
ホテルの名前を言ったのだが、
誰もわかってくれないので、
地図を見せてここに行きたいと指差してみた。
「オオ、解ったぞ、
 Hotel Provincial。」
どうやら俺の発音が悪かったみたいだ。
これで、直にホテルに向かえば
恐ろしい目に遭うことは無く
今日一日を終えることができる。
ラッキー!














「この車に乗れ。」
そういって運転手らしき人が
後部座席を開いて待ってくれている。
「ちょっと待って。いくら行ってくれるの?」
こういう時は最初に値段の交渉をしておかないと、
後からとんでもない金額を請求されることがある。
「7,000CFAだ。(約1,400円)」
「えぇ?そんなことないだろ!
 3,000CFA(約600円)じゃないのか?」
あらかじめ調べておいた現地価格を言うと、
5,000CFA(約1,000円)までは下がったが、
それ以上はどうしても下げてくれないので、
仕方なくその値段で行ってもらうことにした。













後部座席にカバンを載せ、
そのまま自分も乗り込もうとすると呼び止められた。
「お前は前に乗ればいいじゃないか。」
どうやらセネガルのタクシーは、
客は助手席に乗るようだ。
車はダカール市内へ向かう。
車は最初海岸沿いを走っているようだったが、
しばらくすると街中に入ってきた。
マリに比べればダカールはかなり都会のようで、
道路もある程度舗装されているし、
高架の道路も整備されつつあるようだ。
道端には街灯も設置されているが、
オレンジ色のライトに照らされた沿道には
多くの黒人がたむろして
そぞろ歩いている。
なんとも不気味な感じだ。














そして都会につきものの渋滞。
アフリカのような広いところでも
やはり渋滞はあるようだ。
よく解らないフランス語で運ちゃんに話し掛けてみた。
「おじさんはこの辺りに住んでんの?」
「あ〜あ、そうだ。ダカールに住んでいる。」
「ダカールは危険な所?」
「あんた、ダカールは初めてかい?」
「ええ、そうです。」
「ダカールはとってもいいところだよ、ハハハ・・・」
渋滞を抜け、細い道を入っていく。
このおっちゃん、信用しても大丈夫だろうか・・・?














そして、車はある建物の前で止まった。
ホテル・プロバンサルに着いたようだ。
ありがとうと言ってお金を払おうとすると、
おっちゃんは俺のバックパックを持って
一緒に来てくれる。
建物の中に入ると、
『これがホテルのフロントか?』と思わせる、
不気味な感じだった。
正面に簡素な机が設置されており、
薄紫の薄暗い明かりに照らされ、
闇に紛れるようにホテルの人がいる。
タクシーの運ちゃんはその人に何か言うと、
身振り手振りで今日は満室だと言うことを
俺に伝えてくれた。
うわ〜困った、どうしたもんだろう・・・














まさか満室だなんて思ってもいなかったので、
他に当てがなかった。
とりあえず、運ちゃんにお金を払って
この辺りを探してみよう。
「おじさん、ありがとう。」
そういってお金を用意していると、
おっちゃんは「乗れ!」という身振りをする。
「この近くに知ってるホテルがあるから、
 そこに行ってみよう。」
そう言って車を動かし始めた。
なんて親切なんだろう。














角を二つくらい曲がったところに
ホテル・コンチネンタルという看板があった。
おっちゃんは車を停めて、
また荷物を持って一緒に来てくれる。
フロントに入ると、ここも満室だといって断られた。
いったいどうなってんだろ?
再び車に乗ると、行く当てがなくなってしまった。




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