TRIP



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のどかだな〜・・・
パステル・カラーの家並み












12月5日 げつようび  はれ            (その2)

気持ちいい潮風に吹かれること20分、
ゴレ島に到着だ。桟橋から島に向かうと、
両サイドの浜辺にカラフルなビーチパラソルが建ち並び、
その向こうには海を眺めながら食事ができる
オープン・レストランがある。
ここで昔奴隷貿易が行われていたとは
とても思えない風景が広がっていた。
レストランの横の路地を入っても、
のどかな風景は続く。
この辺りもフランスの植民地だったのだろうか、
パステル・カラーに彩られたヨーロッパ調の
かわいらしい家々が並び、きれいな花が咲き乱れ、
小鳥のさえずりも聞こえてきて、
ここがアフリカであることを一瞬忘れてしまいそうだ。














そんな風景の中に突如現れた奴隷のモニュメント。
上半身裸の黒人男性が手に巻かれた鎖を引きちぎり、
自由を求めて叫んでいるようだ。
その男性に寄り添う女性。
やはりこの島で奴隷貿易が
行われていたということを再認識させられる。
そして、その先に
“奴隷の家 MAISON DES ESCLAVES”
がある。
入り口まで行くと、扉が閉まっている。
ちょっと押してみたけど、
鍵が掛かっているようで扉は動かない。
まだ朝じゃけ〜開門してないんじゃろうか?
そこへ数人の女の子が通りかかった。
「ここは何時に開くの?」
「今日は月曜だから定休日よ。」
え〜〜〜っ、そんな〜〜〜!
わざわざ日本から訪ねてきたって〜のに定休日かよ。
信じれん!
一生に一度見れるか見れないかなのに、
こんなことってある?
ほんま信じれんぜ。














なんだか怖い・・・
突如現れたモニュメント


















閉ざされた“奴隷の家”






かなりガックリきてしばらくその場でウロウロしていたけど、
もちろんドアが開く気配はない。
しょうがない、気を取り直して
島を見学して帰るとしよう。
地図も持たず、気の向くままに歩く。
静かでのんびりした雰囲気は本当にいい感じで、
昨日までのギスギスしたアフリカ旅行から
開放された気分だったが、一人じゃ寂しいな〜・・・
どうせなら千秋と一緒にゆっくり歩きたいよね〜・・・

















しばらく行くと小さなお土産屋さんがあった。
中を少し覗いてみると、ほどよい大きさの仮面がある。
お土産にアフリカの仮面を
買いたいと思っていたので、こりゃ好都合だ。
「日本からか?」
店の横から背の高いおじさんが現れた。
「えぇ。」
「この島には毎年夏に日本人がやって来て、
 そこの広場で毎日ジャンベを叩いてるよ。」
「へぇ〜、そうなんですか。僕も少し叩けますよ。」
「そうか、名前はなんていう?」
「トムです。おじさんは?」
「マスっていうんだ。」
マスか〜、面白い名前だな。
「ところで、マスクが欲しいのか?」
「ちょっと見せてもらえる?」
うん、いい感じだ。
たくさんある中から2つ選び、
他にジャンベを模ったネックレスを買うことにした。
買い物も値段交渉に少し慣れてきて、
楽しく買い物ができるようになって来た。
全部で10,000CFAと言うのを
6,000CFA(約1,100円)まで値切って買うと、
マスさんはオマケにビーズでできた
ネックレスをつけてくれた。














何で定休日なん?
見学するはずだった奴隷の家の壁画























小さくてもステキなものがいっぱいだよ!
マスさんのお店




「トム、私は絵も描くんだ。」
この島はアーチストの島と言われるだけあって、
道の両サイドに面白い絵が並んでいる。
おじさんは自分のサインの入った絵を見せてくれる。
確かにいい感じだけど、
大きいので持って帰るのは困難だし、
値段も高そうだ。
「もって帰るのが大変だから、
 写真に撮らせてくれる?」
おじさんは店の前で自分の絵を広げて
ポーズを取ってくれた。














欲しかった仮面も買え、
また趣くままに歩く。
道の両サイドにはあちらこちらに絵が並べてあり、
釘や廃材を使って作られた
現代アートのような作品は
結構イケてると思う。
いろんな作品を見ていると、小さめの絵があった。
これなら何とかもって帰れるかもしれない。
値段を交渉して9,000CFAを
5,000CFA(約1,000円)まで
値切って買った。















廃材を使ったアート











昔はここから撃っていたのだろうか?
丘の上の大砲













再び趣くままに歩いていると、
道はだんだん上り坂になり始めた。
どうやらこの道は丘の上に続くようだ。
太陽の日差しがとても明るくて、
気分まで明るくなる。
花が咲き、小鳥のさえずりが聞こえる。
この島ののんびりした雰囲気が本当に心地いい。
丘まで上がると、一番に目に付くのは大きな大砲だ。
とは言っても今では使われていない。
その向こうはどこまでも拡がる大西洋。
今までのオドオドしたアフリカ旅行がうそのようだ。














木陰に座ってしばらく日記を書くことにした。
でも、こんなのんびりした所だと、
書いているうちについついボーっとしてしまって
なかなかはかどらなかったが、
それはそれでまた心地よかったりする。
あれ、どこかから太鼓の音が聞こえてきたぞ〜!
音のする方へ行ってみると、
先ほど俺にマラカスのような楽器を
買わないかと話しかけた青年だった。
その青年はジャンベよりも背の高い
コンガに似た太鼓を叩きながら、
たった一人で誰に聞かせるともなく
声を張り上げて唄っていた。
また何か売りつけられると困ると思い、
見つからないように木陰に隠れて
こっそりとその姿を眺めていた。














のどかな風景の中でただ一人、
誰に訴えるともなく唄われるその歌は
とても力強く、それでいてどこか哀愁を帯びていた。
その歌声を聴いているうちに、
この島から奴隷として送られていった
黒人のことを考えていた。
この島からわずか250年ほど前に
たくさんの黒人が奴隷として、
アメリカに送られていった。
いったい、どんな気持ちだったんだろう?
青年の歌っている歌詞の意味はまったく解らないけど、
黒人の魂の叫びを感じさせる歌声だった。
周りの風景がのどかであればあるほど、
より一層強くそれを感じさせた。
青年は青い空の下でいつまでも
ただ一人歌い続けていた。
ここからはるか彼方へ奴隷船が出港していったんだ・・・
のどかな海






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