TRIP



前へ もくじ 次へ


盛り付けがなんとも都会的だ!
西アフリカ料理“ヤッサ”





















12月5日 げつようび  はれ           (その3)

丘からまっすぐ道を下っていくと、
そのまま港近くの海岸に出る。
海岸には海を見ながら食事ができる
数件のレストランが並んでいるので、
そのうちの一軒で食事をすることにした。
席に案内してもらいメニューを見てみると、
一度食べてみたいと思っていた
“ヤッサ”という料理が載っている。
よし、これにしよう。
出てきた料理は、鶏肉にレモンソースで煮込んだ
野菜か何かが掛けてある。
そして、白いご飯が載っている。
マリで食べてきた料理からすると、
やはり都会な感じの盛り付けがしてある。
そして、お味は? というと、
セ、セ・ボン!!!
レモンソースがとても美味しい。
この風景を見ながらビールが飲めれば
さぞかし美味しいだろうが、
ダカールに戻ったとき酔っていたら
危ない目に遭うかもしれないので、
コーラで我慢することにした。














「どうだ、おいしいか?」
席を案内してくれた青年が話しかけてきた。
「うん、レモンソースがとてもいけてるね!」
「どこから来た?」
「日本だよ。きみはゴレに住んでるの?」
「あぁ、すぐそこが家なんだ。
 俺はピエール。おまえは?」
「トムっていうんだ。
 ねぇ、ところで今日は奴隷の家は開かんのかね〜?」
「今日は月曜だから定休日だ。
 たまに昼から開けることもあるけど、
 今日はどうだか・・・」
「う〜ん、せっかく来たのに残念だな〜・・・」
「そりゃ〜悪かったな〜。
 あっ、そうだ! だったら今日は俺の家に泊まって、
 明日見学しなよ!」
「えぇ?」
ピエールはよさそうな奴だが、いくらなんでも
たった今会ったばかりのアフリカ人の家に
泊まらせてもらうなんて危険すぎる。














とっても南国チックなんだ!
浜辺のレストラン




















ちょうどそこへドレッドヘアーの男の人が現れた。
「トム、紹介しよう、俺の兄貴だ。
 兄貴はミュージシャンなんだよ。」
ピエールがお兄さんに、事の成り行きを話す。
「それなら是非泊まっていきなよ。」
お兄さんがミュージシャンということは、
アフリカの音楽についていろいろ
教えてもらえるかもしれないけど、
ここはやっぱり断った方がよさそうだ。
「気持ちはうれしいけど、
 今日のホテルはすでに決めてあるんだ。」
「どこに泊まってるの?」
「ダカールのホテル・マルシェ。」
「あ〜ぁ、マルシェか、
 あそこは体格のいい女がたくさんいるだろう?」
どうやらホテルに住み込みで働いている
娼婦のことを言っている様だ。
「今からホテルに帰ってキャンセルすれば
 ホテル代も浮くじゃないか。
 荷物を持って、また船でくればいい。」
う〜ん、困った、なんて言って断ろうか?
こんなに熱心に誘ってくれるということは、
やはり家に連れ込んで
金品を巻き上げられる可能性が高い。
「まあ、気が向いたらそうするよ。あ、ありがとう。」
お金を払っていそいそと店を出た。
アフリカ人に限らず、旅先では原住民を
どこまで信用していいのか解らないので困ってしまう。














何とか振り切って14:00の船で
ダカールに戻ることにした。
船に乗るとそのまま2階のデッキのイスに座った。
天気が良くて潮風がとても気持ちいいけど、
日差しが強いから暑い。
少し離れたところにスペイン人らしき親子が乗っており、
お母さんが8歳くらいの女の子を溺愛していた。
抱きしめてはチューチューとキスをしている姿は
日本人からすると、
ちょっとどうなんじゃろうと思ってしまう。
女の子は金髪で青い目をしており、
確かにとてもかわいいんだけど、
半そでのT−シャツから覗いている腕が
毛むくじゃらなのを見て見てゾッとしてしまった。














ダカールの港には15:00前に着いた。
人の流れに沿ってゾロゾロと歩いていると、
港出口辺りにちょっとしたマーケットがあった。
ちょっと見ていこう!
敷地内に入ると強烈な臭いが鼻を突く。
海の近くのマーケットだからか、
炎天下の中、たくさんの魚が置いてあり、
干し魚もある。
この暑さの中、そんなん売って大丈夫なん?
取れたての魚をこうして置いておくと、
そのまま干し魚になるとか? まさかね〜・・・
この辺りに住んでいる人たちは本当にこれを買って
食べるんだろうか?
他には香辛料や野菜、くだもの、
あっ、オクラなんてものもあるぞ。
ソーリーと飲んだダ・ブリニー(赤いお茶)の葉がある。
こっちでは、ほうきを作っている。
細い木の枝を束ねてくくり、
自家製ほうきを売っているようだ。
このマーケットはジェンネの月曜市に比べると、
まったくといっていいほど活気がなく、
売っている人たちも元気が無い。
炎天下の中、影に入って
の〜んびりと時間が経つのを待っている、
そんな感じだった。
この人たちはこれで本当に暮らしていけるんだろうか?
まあ、俺が心配することじゃないか。














市場を出て、今度はホテル近くの
ケルメル・マーケットに行ってみることにした。
このマーケットは地元の人が生活に利用する
マーケットだと聞いていたので
セネガルの人々の暮らしぶりを
垣間見ることができるかもしれない。
恐る恐る建物に入ると、また魚の臭いだ。
入ってすぐの所に陳列台があり、
大きなイカやエビが並べてあるが、
すでに15:00を回っているからか、
場内はあまり活気が無く
商品もあまり並んでいない。
旅行者の俺にも、
「安いよ〜、これは料理に最適だよ〜!」
と言っているかどうかは解らないけど声が掛かる。
魚の向こう側はお肉屋さんだ。
あ〜、ヤギか羊か解らないけど、
動物の頭が転がっている。
気色わり〜ぃ!
足早にそこを通り抜けると何かが降ってきて、
俺の首の周りを這いまわっているような感触があった。
あわてて払い除けると、それはゴキブリだった。
ギョエ!
お肉屋の向こうには野菜コーナーがあるが、
その手前から脱出。
あ〜、参った参った・・・














外にはお土産屋さんが軒を連ね、
内部よりも賑わっている。
マリのジェンネで見たような仮面も売ってるぞ〜!
いいのがあったらどこかで買おう。
マーケットの建物に沿って歩いていくと、
運動会のときに建てるようなテントの中に、
たくさんの食べ物屋さんがある。
たくさんの人で賑わっている様子を見ると、
市場の周辺はどこの国にも
おいしい食べ物屋さんがあるに違いない、
と思ってしまう。
マーケットの敷地から出ても、
お土産屋さんが並んでいるので、
のんびり眺めながら歩く。















なんとなく俺に似た仮面




















そのうち、一軒のお店にいい感じの
仮面が置いてあるのが目に付いた。
見た感じ、マリの仮面のようで、
目が細く長細い顔、ヌボーとした感じが
どことなく俺に似ている。
店のおっちゃんは俺を見つけて話し掛けてきた。
「○◇※▼△■◎!」
「ノー・フランセー。」
「オー、ノー・ランセー。」
おっちゃんは英語が話せないらしく、
知っている単語を並べて説明してくれた。
「マリ・マスク、アンティーク。」
やはりマリの仮面のようだ。
「コンビアン?(いくらですか?)」
何か言ってくれたけどまったく解らないので、
メモ帳を取り出しそこに値段を書いてもらった。
『125,000CFA(約2万5千円)』
「ワ〜オ!」
とても買えるような値段じゃないので、
そう言ってその場を立ち去ろうとした。
「アッタン、アッタン!」
ちょっと待ってくれという意味の言葉なのかどうかは
解らないけど、おっちゃんが言うその言葉が
妙にかわいくて面白い。














そして、おっちゃんは今一度メモ帳に値段を書く。
『50,000CFA(約1万円)』
うぉいうぉい、そのいきなりの値下げは何なん?
再びいらないそぶりを見せて、
その場を離れるしぐさをした。
「アッタン、アッタン!」
おっちゃんは俺の腕をひっ捕まえて呼び戻す。
そんなことが数回繰り返えされた後、
ラストプライスが出された。
『1,5000CFA(約3,000円)』
まあ、三千円くらいなら買ってもいいかな。














おっちゃんと握手を交わし、
財布からお金を出そうとして愕然とした。
なんと、残金がほとんど無くなっていた。
いつの間にこんなに使ってしまったんだろう。
お昼にゴレ島でいろいろお土産を買ったからな〜・・・
どう計算しても、この仮面を買ってしまうと、
明日からの旅行に支障が出る。
おっちゃんには身振り手振りで、
お金がないからやっぱり買えないことを説明して、
その場を離れた。
「アッタン、アッタン!」
いつまでもおっちゃんの声が
後ろから聞こえてきたが、
振り向かずそのまま歩き去った。
ごめんよ、おっちゃん。
俺本当にそのマスク欲しかったんだよ・・・




前へ もくじ 次へ