TRIP



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繁華街なんだ!
ポンピドゥー通りの入り口








12月5日 げつようび  はれ            (その4)

気を取り直して、再び先ほどの道を歩く。
しばらく歩いていくと
少し広くなったところに出てきた。
どうやらここが
インディペンデンス広場(独立記念広場)らしい。
この辺りはセネガルで一番の繁華街で、
結構ビルが建ち並んでいる。
そして、そのビルのあいだに伸びる
“ポンピドゥー通り”が一番の目抜き通りだ。
よし、行ってみよう!














繁華街ということもあって人が多いし、道路は渋滞。
どこの国でも繁華な所の景色は
似たようなものなんだな〜・・・
そして、こういった所に必ずいるのが物売りだ。
手にいろんなものを持って売り歩く
通称“バナバナ”が、
擦れ違うたびにあれを買えだの、
これを買えだのとうるさいが、無視して歩く。
あっ、アイスクリーム食べながら歩いてる人がいる!
アイスっていいよね〜・・・
少し先に大きなガラス張りのきれいなお店があり、
どうやらそこで買えるようだ。
アイスは食べたいけど、
お店に入るのは勇気がいるんだよね〜・・・
よ〜し、行くぞ!
思い切ってお店に入ると中は
アフリカとは思えないきれいな造りで、
ガラス張りのショーウィンドウの前で
三人の日本人の女の子がアイスクリームを買っていた。














「こんにちは!」
日本語で声を掛けると、驚いたように振り向いた。
「こ、こんにちは・・・ご旅行ですか?」
「えぇ、そうですけど・・・」
「へぇ〜、ダカールを旅行してる日本人って珍しいですね。」
「そうですか? 皆さんは旅行じゃないんですか?」
「私たちはジャイカ(JICA)の隊員なんです。」
「へぇ〜!」
今度は俺が驚く番だった。














ジャイカというのはJapan International
 Cooperation Agency の略で、
青年海外協力隊のことだ。
ジャイカの隊員に会ったことにも驚いたが、
こんな若い女の子が日本を遠くはなれて
アフリカの人たちのために
働いているということが衝撃的だった。
「こちらに来られてどれくらいになるんですか?」
「5ヶ月です。」
「こちらの生活は大変でしょう?」
「でも、だいぶん慣れてきました。
 それより、アイスクリーム・・・」
「あ、そうでした。」














ガラスケースに入ったたくさんの種類のアイスクリームから、
バニラとチョコをコーンの上に載せてもらう。
う〜ん、おいしい!
4人でアイスを食べながら話す。
「今朝、ゴレ島に行ってきたんですけど、
 どこか他にセネガルの見所があったら
 教えてもらえませんか?」
「う〜ん、そうですね〜・・・」
三人で話し合ってくれたけど、
これといって無いのだそうだ。
だからダカールを旅行しているのが
不思議に思われたのかもしれない。
「ラック・ローズか、
 サンダカ・マーケットくらいですね。」
ラック・ローズは直訳すると
「バラ色の湖」という意味になるが、
その名のごとくピンク色の水をたたえた塩湖で、
幻想的な風景が見られるのだそうだが、
ダカールからは少し離れているため、
行き方がややこしそうで
なんとなく行く気にならない。
サンダカ・マーケットは
インディペンデンス広場からポンピドゥー通りを
西に歩いて行くとある、
ダカールの一番大きなマーケットだ。
「あとは、夕方、日没の頃に
 海岸線を歩くと気持ちいいですよ。」
三人の中の一番好みのタイプの子が教えてくれた。
『一緒に行ってもらえますか?』と言いたいところだが、
なかなかそうは言えない。
「じゃあ、サンダカ・マーケットに行って
 その後時間があったら海岸線を歩いてみます。」
「これからジャイカの事務所に戻るんですけど、
 一緒に来ます?」
今度は違う子が勧めてくれる。
日本を遠く離れたこのアフリカの地で、
日本人がどんな所で活動しているのか興味があった。
「連れて行ってもらってもいいですか?」
「ええ、じゃあ行きましょう。」
あとのふたりはまだ買い物があるらしく、ここで別れた。














再びポンピドゥーを歩き、
路地を左に折れてしばらく行くと、
大きなビルの前に出てきた。
「この中です。事務所は5階と6階なんです。」
「へぇ〜・・・」
建物の入り口には現地の警備員が立っており、
セキュリティーは万全のようだ。
中に入り、奥に進むとエレベーターなんてものがある。
やっぱダカールは都会だわ!!!
エレベーターで6階まで上がると、
ここにも警備員が立っており、
そこから中に入るにはドアの鍵を開けるための
カードを通さなくては開かないようになっていた。














事務所に入ると7人くらいの日本人がいた。
「こんにちは〜!」
俺を見て、みんなが挨拶してくれた。
「紹介します。セネガルを一人旅している
 上野さんです。」
「へぇ〜、セネガルを一人で・・・?」
やはり、ここでも珍しがられた。
事務所はそんなには広くはないけど、
明るくて気持ちのいいところだった。
それは、日差しが明るいということよりも、
ここで働いている人の大らかで、気さくで、
明るい性格によるものが大きいように感じた。
「上野さんにダカールの見所を聞かれたんだけど、
 どっかないかな〜?」
隊員の方みんなで相談してくれたんだけど、
やはりこれといって無いようだ。
「いいですいいです、
 僕はフラフラ歩いているだけで楽しいですから・・・」
「参考にならなくてすみませんね。」
「いや、ここに来れただけで、とてもうれしいです。
 お仕事の邪魔になるので、そろそろ失礼します。」
「気をつけて旅行してください。」
「ありがとうございます!」
お礼を言って事務所を後にした。
こうやって日本から遠く離れた発展途上の国で、
その国の人たちのために働くということは、
それなりの覚悟が必要だったに違いない。
住み慣れた土地を離れ、
アフリカの人たちのために頑張っている
日本人に会うことで、
なんだかたくさんの元気をもらったような気がした。













アフリカでもクリスマスするんだな〜
ダカールのクリスマス・ツリー






再びポンピドゥーの通りまで出ると、
サンダカ・マーケットを目指して歩いた。
おやっ、クリスマス・ツリーが飾ってあるぞ!
サンタクロースもいる。
このクソ暑いのに、長いヒゲをはやして
赤い服を着ている姿は
なんとも暑そうだ。
日本のようにど派手ではないが、
セネガルでもクリスマスを祝うようだ。
西アフリカ各国は基本的にイスラム教徒が多いけど、
中にはクリスチャンもいるのかもしれない。
そういえば、暦はすでに12月になってるんだった。














クリスマスの飾りつけがしてあるお店の斜向かいが、
サンダカ・マーケットだった。
敷地内に入るとすぐに物売りがやって来た。
「このCD、いい曲が入ってるぞ?」
「いらないよ。」
「これは、セネガルのミュージシャンのCDだ。」
「いらないったら・・・」
目も合わさず、早歩きで通り過ぎようとしても、
ずっと付いてくる。
「なぁ、ジャパニー、1枚どうだ?」
も〜、いい加減頭にきた〜!!!
「いらんゆ〜とろうが〜!!!」
広島便で怒鳴ったら、
その物売りは一瞬怯んだけど、
再び話し掛けてくる。
「このCDはセネガルの有名な歌手のCDでな・・・」
ホトホト困ってしまい、
仕方ないので反対の通りに逃げて、
やっと振りほどいた。
こんなしつこい物売りには久しぶりに会った。















サンダカ・マーケット



















気持ちを落ち着けて、マーケットの様子を見る。
ここの市場はケルメルのそれとは違い、
食料というよりは家電製品や
CD、日用雑貨、時計といった類の店が並んでおり、
結構な賑わいを見せているが、
たいして欲しいものもなく
物売りも多いので、
一回りするととっとと出ることにした。




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