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12月5日 げつようび  はれ            (その5)

今度はポンピドゥー通りを引き返す。
この辺りはセネガルの銀座と言われるだけあって、
オシャレな店やビルが建ち並ぶ。
高いものだと20階近くありそうだ。
ショーウィンドウの中で、
大きなシシカバブの肉を切っている人がいる。
う〜ん、おいしそう。
インディペンデンス広場まで戻って、
さてこれからどうしよう?
時計を見ると、まだ17:00を回ったところだった。
夕食を食べるにも、先ほどのアイスクリームが効いているのか、
あまりお腹が空いていない。
とりあえず、ホテルのほうに向かって歩こう。














しばらく歩くと、スーパーのようなお店があった。
ちょっと覗いてみよう。
中に入ると、まず驚いたことにクーラーが効いている。
商品のディスプレーの仕方も日本のスーパーと同じように
いろんな食材や、商品が秩序正しく並べてある。
おお、ワインなんてものがあるぞ〜!
ダカールはやっぱ都会だな〜!
そうだ、今日はここで何か食べ物を買って帰って、
ホテルで夕食を食べるとしよう。
店の一番奥に惣菜のコーナーがあった。
ショーケースの中にサンドイッチのようなものが並べてあり、
ビーフ・サンドとソーセージ・サンドを指差すと、
おじさんが適当な大きさに切り分けてくれた。
あとは、セネガルのビールだと思われる
“フラッグ”という缶ビール、
今夜はこれを飲んで酔った勢いで寝てしまおう。
それから、夜中に喉が渇いたときのための
1リットル入りの水を取ってレジに並ぶ。
支払いの仕方も日本のスーパーと変わりない。
全部で2,910CFA、約600円弱の買い物だった。
クーラーも効いて快適な買い物ではあったけど、
マリでの買い物からすると
何となく味気ない感じだった。














結局そのままホテルに戻った。
初めての地を歩くのはいつも不安になるので、
今日は一日ホテルに
閉じこもっておこうかとも思っていたのに、
実際には朝8:30にホテルを出て、
帰ったのは17:30を回っており、
自分の行動力に我ながら感心してしまった。
今日はおみやげ物を結構買ったので、
荷物を整理しておこう。
マリで買った置物や、ゴレ島で買った小物類は
全て泥染めに包んでジャンベの中に押し込んだ。
いい考えでしょ〜!
ダカールにいるのも明日だけなので、
要らないものは全て片付け、
苦労してバックパックに詰め込んだ。
これでよ〜し!














今日も一日すごく汗をかいたので、
シャワーを浴びに行こう。
汚いシャワー室なのでなんとも落ち着かないけど、
汗を流すとスッキリ爽やかだ。
ホッとした気分でシャワー室を出ると、
そこに日本人らしき男の人が立っていた。














「日本の方ですか?」
何も言わない。
「Are you Japanese?
 (日本の方ですか?)」
一瞬沈黙が流れた。なんだか様子がおかしい。
いったいどうしたんだろう?
うつむき加減だったその人は、
少し戸惑った様子で話し始めた。
「は、はい、日本人ですよ。」
その人の話によると、
仕事でアフリカに来て2年になるのだそうだが、
今まで日本人に話し掛けられても中国人だと言って、
一切話をしなかったのだそうだ。
「じゃあ、話し掛けない方がよかったですね。
 すみません!」
「いえ、いいんですよ。
 あなたがとても誠実そうな人に見えたので、
 つい話してしまいました。ご旅行ですか?」
ちょっと、聞いた? 俺のこと誠実そうだって!!!
「ええ、とは言っても明日日本に帰るんですよ。」
「私は今夜ニューヨーク経由で帰ります。
 この2年のあいだで日本語会話をしたのは
 あなたとだけなんですよ。
 あなたはどこの航空会社を使いましたか?」
「イタリアです。」
「へ〜、そんなルートがあるんですか!」
西アフリカに来るには
フランスを経由してくるのが一般的だが、
このひと、フランス人があまり好きではないらしく、
どうしてもフランス経由で来るのは嫌だったので、
かなり高くつくニューヨーク経由できたのだそうだ。
わざと日本人と話さなかったり、
フランス人は嫌いだったりと、
何かと好き嫌いが激しい人なのかもしれない。














「いろんなところを旅行されてるんですか?」
「いや〜、3年前にインドに行って、
今回はマリとセネガルを約2週間です。」
「インドにも行かれたんですか? 
 いや〜尊敬しますね!」
「いえいえ、アフリカに2年いらっしゃるほうが
 大変だと思いますよ。
 2年ぶりに日本へ帰る気分はいかがですか?」
「私もあなたと同じように家族が家で待ってるので、
 楽しみですよ。
 でも、しばらくすると、
 またこっちに来なくちゃいけないんです。
次はイタリア経由もあたってみます。」
「そのほうが安く来れると思いますよ。」
「もう少し早くお会いしてれば、
 お互いいろんな情報交換ができたのに残念ですね。
 今度あなたがこちらを旅行されるときは
 ロンプラを見られると、詳しく載っていますよ。」
ロンプラというのはロンリープラネットの略で、
オーストラリアの出版社が出している旅行ガイドのことだ。
かなり詳しく載っていて、
バックパッカーにはよく知られているのだが、
日本語版は出ていない。
「解りました。今度チェックしてみます。
 お互い気をつけて日本に帰りましょう。」
そう言って握手をして別れた。
日本から遠く離れた地で
たまたま同じ日にたまたま同じホテル、
しかもこんなへんぴなホテルに居合わすなんて、
すごい巡り遭わせだな〜と感心してしまった。
それにしても、2年か〜・・・
平塚さんといい、この人といい、ジャイカの隊員といい、
みんなたくましいな〜!













街灯も灯っているのでそんなには怖くないんだ!
窓の外の風景









部屋に戻って、外の景色を覗いてみた。
日もすっかり暮れて、頬に当たる風が涼しい。
屋台だろうか、ほんのりと明かりが灯り
見ていると和んでくる。
街灯も点いていて、マリの夜よりかなり明るい。
昨夜はホテルもなかなか見つからなくて、
気持ちもあせりオドオドしていたけど、
今見ると、ダカールの街は
あまり危険を感じないから不思議だ。














さ〜てと、ごはんごはん!
ビールは水に濡らしておくと、
気化熱で少しは冷たくなるかと思っていたけど、
全く効果はみられず、ぬるい。
それでも、グビグビ飲むと旨い!
そして、サンドイッチ。
俺はいつも好きなものは後から食べる主義なので、
まずはソーセージ・サンドから・・・
おお、美味いじゃん!
ソーセージの塩味と野菜が絶妙でおいしい。
次は期待のビーフ・サンド・・・
んんっ、うわぁ〜辛い。
妙に塩っ辛くてまずい。
それに肉もパサパサしていて、なんとも食べにくい。
こりゃ判断を誤った。
先にビーフを食べるべきだった。
それに、アルコールを飲んだからか、
異常に暑い。
助けてくれ〜、暑いよ〜!
しかし、どんなに暑くてもマラリアのことを考えると
窓を開ける気にはなれない。
この暑さの中で眠ることができるのだろうか?
ビールがうまく効いてくれるといいんだけどな〜・・・














和むな〜・・・
ほんのりと灯った屋台の明かり























明日はどうしよう?
ダカール市内は何もなさそうだし、
ラックローズは行くのが大変そうだ。
まあ、明日のことは明日考えるとしよう。
では、歯を磨いて寝ます。
                      22:10





〈その日の日記の落書きより〉
 暑い とにかく 暑い!
 明日の夜には日本に出発だ〜
 ちあき〜、まってろよ〜




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