TRIP
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奇妙な燈台 |
12月6日 かようび はれ (その4) しばらく歩いていくと背の高い奇妙な建物が見えてきた。 「ケス・ク・セ?(これはなんですか?)」 近くにいた人たちに身振り手振りで聞いたところによると、 燈台だと言っているようだ。 そのことをきっかけに会話が始まった。 「私たちは家族なんだ。 ゴレ島に水を運ぶ仕事をしているんだよ。」 「今朝ゴレ島に行ってきました。いい所でしたよ。」 「そりゃいい。きみ、カメラ持ってるね。 我々家族の写真を撮ってくれないか?」 「もちろん、いいですよ。3・2・1・カシャ!」 「ありがとう。その写真送ってくれる?」 「じゃあ、このメモに住所を書いておいてください。」 「じゃあ、よろしくね!」 「わかりました。さようなら!」 お互いが解る言葉はほとんど無いはずなのに、 ちゃんと会話が成立するんだから自分でも驚いてしまう。 |
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燈台を過ぎると海沿いの道は終わり、 ゴレ島に行く船着場に繋がる。 大きく街を一周したことになる。 途中で道を折れ、しばらく歩くと 今朝シュワルマを食べた屋台のある道だった。 おかみさんは俺を見つけると 「サバ?」と声を掛けてくれ、 この街にもちょっとした知り合いができたようで うれしかった。 またまたインディペンデンス広場に向かい、 ビルの陰に座ってひと休み。 あー、疲れたー! |
木陰で休む家族 |
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インディペンデンス広場周辺 |
カゲロウが立ち昇りそうな舗装された道を人々が通り過ぎ、 ひっきりなしに車が行き交う。 インディペンデンス広場辺りは街の繁華なところなので、 物売りが道行く人々に 必死で何かを売りつけているかと思えば、 木陰には昼間っからたくさんの男が昼寝をし、 あるいは大声で話し込んでいる。 そんな景色をぼんやりと眺めながら、 アフリカの人々のことを考えていた。 “アフリカの人は生きている!” これが俺のアフリカ人から感じたことだ。 まず生きてるんだ!! そして、よりよく生きるために頑張っている。 でも日本人は、まず生きていない・・・ 生きていないのに、よりよくしようとしている。 でも、まず生きていないんだから、 よりよくなるはずがない。 みんな、まず生きようぜ!!! それは、“一生懸命生きる”とかじゃなくて、 アフリカ人みたいに昼からボーッとしていてもいい。 自分が思うようにやることだ。 そして自分が自由であってそれに責任を持つ、 それが生きるってことだと思う。 会社に勤めているから自由にできないとか、 世間体があるから何も出来ないとか、 人のせいじゃなく自分の意思で行動すべきだ。 それが、“一生懸命頑張る”ってことならそれでいいし、 “ボーッと仕方なく生きる”でも、 自分で責任を取っているならそれでいい、 そんな風に思う。 |
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「ねぇ、これ買わない?」 ぼんやりと考え事をしていると、 目の前に小学校高学年か中学生くらいの 女の子が立っていた。 差し出されたものを見てみると おもちゃの時計のようなものだった。 「いや、いらないよ。」 そう言うと、その子は大してしつこく 売りつけることもなく 他の人のところに行ったのだが、 その子の黄色い民族衣装はどういう訳か、 お尻の辺りが薄い生地でできていて、 下着が丸見えだ。 ヒュ〜、セクシー!!! 黒人の女の子はスタイルもいいし、 小さな子でも妙に大人びている。 それにしても、民族衣装だとお尻の位置が よく解らないけど、 すごく足が長いのには驚いてしまった。 |
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今度はコーヒー売りのおっちゃんが来た。 頼んでみるとするか! おっちゃんが持って歩いている大きな釜の中に コーヒーが入っていて、 その釜の下には炭が入れられるようになっているので、 いつでも熱々のコーヒーが入れられるようになっている。 プラスチックのコップに半分くらい砂糖を入れ、 大きい釜からすくい取ったコーヒーを高い位置から流し込み、 砂糖を溶かしながら入れる。 100CFA、約20円だった。 う〜ん、さすがに甘い。 それに単に甘いだけではなくて、 ショウガか何かの香料が入っているようだ。 疲れていたので甘いコーヒーも悪くない。 この激甘コーヒーもそろそろ飲み納めだな〜・・・ |
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♪パフ・パフ〜 パフ・パフ〜♪ 今度は乳母車のような小さな台車を押しながら おじさんがやってきた。 どうやらアイスクリームのようだ。 小さな子供たちに混じって俺も注文すると、 小さなコーンに台車の中のアイスクリームを3段重ね、 これでやはり100CFAだった。 う〜ん、このアイスクリームも甘い! 道行く物売りからもいろんな物が買えるようになり、 満足して広場の片隅に座っていると、 横におっさんが座った。 「カフェ、カフェ。」と言いながら、 広場内に建ててある簡易テントを指差す。 行ってみろと言っているみたいだ。 おおっ、紙コップに入れたコーヒーを ネスカフェが無料配布していて、 長い行列ができている。 俺も並んでみるか! たくさんのアフリカ人に混じって並んでいると 先ほどのおっさんは列に並んでいる俺を見つけて 親指を立てて笑っていた。 またまた激甘コーヒーをもらい木陰に座って飲む。 なんだか、“のんびりしたアフリカでのひととき” って感じでいい感じだった。 |
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「オオ、ジャポネ!」 「・・・」 またおっさんが話しかけてくが、 今度はなんだか怪しい・・・。 「ジャポネ、ダカールはどうだ?」 「いいところですね・・・」 あまり相手にしたくないけど、 おっさんは横に座って本格的に話し始めた。 「サッカーの中田、知ってるか?」 「へぇ〜、おじさん中田を知ってんの?」 「あ〜、有名な選手だ。 セネガルはサッカーが盛んだからな。 ダカールには何日いる?」 「今夜日本に帰るんですよ。」 「そうか〜、だったらお前の奥さんに これを持って帰ってやってくれ。」 そう言っておじさんは俺の手に 小さな箱の入った白い包み紙を握らせた。 「いやいやおじさん、こんなもの貰えんよ!」 「いいんだよ、最近子供が生まれてな〜、 ムスリムはそういった時には周りの人々に 贈り物をするんだよ。 お前の奥さんにお土産だ、な!」 包み紙を開けてみると、中には金色の指輪が入っている。 「いや、やっぱり貰えないから・・・」 「なんでだ? ムスリムは嘘つかない!」 おじさんは中指に地面の砂をつけて額に擦りながら言う。 「じゃあ俺は子供の命名パーティーの用意があるから、 そろそろ行くよ! 気をつけて日本に帰りな。」 この人本当にムスリムの敬虔な信者なのかもしれない。 ムスリムからの贈り物を 有り難く頂くべきなんだろうか・・・ |
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「ところでフレンド!」 ほ〜ら、来た来た。やっぱりなんかあるぞ〜! 「俺の子供のために少しミルク代をくれないか?」 でーたーーー!!! やっぱりそれが目当てだったんだな〜! 「俺、そんなん嫌いじゃけ〜!」 そう言って指輪を渡そうとしても受け取ってくれない。 「いいじゃないか、 ミルク代のほうが全然安いんだし、な!」 も〜、たまらんぜ!!! 手渡されていた指輪をその場において歩き去った。 確かにミルク代よりも指輪の方が高げなけ〜、 そりゃ〜それでムスリムの掟を守っとるんかもしれんけど、 どうしてもそのやり方が気に入らなかった。 それならそれで最初に言ってくれればいいじゃん。 そんなのずるいよ〜! しかし、さほど気分を害したわけでもなく、 とりあえずそのまま海岸線目指して歩いた。 日が暮れる頃に昼間に歩いた海岸線の所まで もう一度行ってみたいと思っていたからだ。 |
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