TRIP



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なんだか、たそがれるな〜・・・
再び訪れた海岸線






















12月6日 かようび  はれ            (その5)

街中から外れると物売りも少なくなり、
落ち着いて歩くことができる。
海が見えるところまで来ると
日もだいぶ落ちてきて
空と海がオレンジ色に輝く。
なんとも美しい・・・
遠くに見えるセネガル大統領の家の国旗が
大きくはためいている。
浜辺ではサッカーチームが練習をしており、
海岸線ではジョギングをしている黒人さんがいる。
黒人も健康に気を使ったりするんだな〜・・・
だんだんと沈んでゆく太陽を眺めながら、
しばらく佇んでいた。
あ〜、今日一日よく遊んだな〜・・・
楽しかった・・・ 旅も終わるんだな〜・・・
なんだか今から日本に帰るということが
信じられなかった。
またいつもの日々に戻る。
でもそれ自体今は考えられない。
本当にまた日本に帰るのか〜。
昨日まではあんなに早く
日本に帰りたいと思っていたのに、
こんな気持ちになるのは意外だった。
少し感傷に浸りながら、その場を離れた。














もう一度インディペンデンス広場に向かって歩くと、
また変な奴が寄ってきて、
「プレゼントだ。」と言いながら
何かを握らせようとするけど、
どうせ先ほどの手口と同じに違いないので、
知らん振りをして歩いた。
どいつもこいつも、めんどくせーんだよ!!!














空港に向かう前に何か食べておこう。
当初はバック・パッカーに有名な
Le?1号店か2号店に
行ってみようかとも思っていたのだが、
今朝からその考えは消去されていた。
今朝食べたおばちゃんのところのシュワルマが
この旅の食べ納めにふさわしいと
思っていたからだ。
18:00を回って少し暗くなってきていたけど
おばちゃん達はまだやっていた。
店に入り指を一本立てると
おばちゃんはすぐに理解してくれ、
早速肉を炭火の上に置いた。














やはりこのお店は人気のようで、
こんな時間になっても
たくさんのお客さんが次々やって来る。
今朝と同じように卵も入れてもらい、
シュワルマ食べ納め。
うん、やっぱりうまい!
ピリ辛で肉が硬いのがいい。
噛めば噛むほど味が出る。
おいしいな〜・・・
隣のコーヒー屋はすでに閉めていたので、
ミネラル・ウォーターを飲みながら
ゆっくり時間をかけて食べた。
ミネラル・ウォーターを飲み干し、
マダムの娘さんに「ペットボトルいる?」
と尋ねると「メルスィー。」と言って貰ってくれた。
ここセネガルでも、ペットボトルは
重宝されるようだった。
シュワルマも食べ終わり、すっかり満足して、
知っているフランス語を繋げあわせ、
身振り手振りも加えておばちゃんにお礼を言った。
「今夜飛行機で日本に帰ります。
 とてもおいしく食べました。
 どうもありがとう。さようなら。」
「ダ・コール ダ・コール(解ったよ)。」
そう言って笑顔で送り出してくれた。
少し寂しい気持ちで店を出た。
よ〜し、ホテルに帰ろう。














結局ホテルに戻ったのは
18:30を回ったところだった。
預けていたバック・パックをもらい、
買ってきたマスクを荷物の中に入れ、
出掛ける前にお手洗いを借りた。
そういえば、この時間まで
腹痛が起きなかったということは、
昼に食べたリソースは大丈夫だったようだ。
「どうもありがとう。さようなら。」
フロントのあんちゃんにそう告げて
チップを渡そうとしたけど、
どうしても受け取ってくれなかった。














よ〜〜〜し、いよいよ空港に向かうぞ!
少し大きい通りに出てタクシーを拾った。
トランクに荷物を積み込み、
やはり助手席に座る。
これがセネガル流!
タクシーはインディペンデンス広場を
グルリと回りこむように走り、
ポンピドゥー通りを通る。
「ポンピドゥー?」
運ちゃんに話し掛けると、
「そうだ、よく知ってるじゃないか!」と喜ぶ。
あっ、そうだった。“ウォロフ語⇔日本語”の紙を
持ってきてるんだった。
これを使って会話をしてみよう。
「ノトゥードゥ?(お名前は?)」
「ナカリゲイビ?(儲かりまっか?)」
運ちゃんは日本人の話すウォロフ語に大喜びだった。
おお、コーランが聞こえてくる。
窓の外を見ると、すぐ横にモスクがあった。
日没だからか、たくさんの人々が集っている。
ムスリムは熱心な信者が多いのだろう。
旅の間中、到る所でこの祈りの風景を見てきたが、
この姿もしばらくは見ることができないかもしれない。














タクシーは海岸線に出てきた。
「トレビアン!(すばらしい!)」
太陽はすでに海の向こうに沈んでいたが、
水平線を中心に空へ、海へと
オレンジ色のグラデーションが拡がっていた。
しかし、ここから大渋滞。
とにかく動かない。
運ちゃんはかなりイライラしているらしく、
大きな通りから裏道へ入っていく。
大きな通りから外れると街灯も無くかなり暗い上に、
タクシーのヘッドライトは片方の電球が
切れてしまっているのか、
すごく暗くてほとんど前が見えん。
通りには驚くほどたくさんの黒人が
ぞろぞろと歩いているのだが、
暗闇にいると本当に見えん。
黒っぽい服なんか着てると最悪、
笑うまで絶対解らんと思うのだが、
運ちゃんには見えてんだろうね〜。
飛ばす飛ばす、クラクションを鳴らしながら
どんどんスピードをあげる。














再びメインロードに出てきたけど、
ここもまだすごくたくさんの車が並んでいる。
運ちゃんは何か叫ぶと、
イライラしながらまたUターンして、裏道へ・・・
そんな運ちゃんを見て
「アクナマタタ(問題ないよ)」
と声を掛けると運ちゃんは笑っていた。
裏道の傍には市場があるらしく、
開けっ放しの窓から魚か何かの臭いが漂ってくる。
「くせー!」
運ちゃんは鼻を鳴らしながら
スピードをあげてグルリと回り込み、
またまたメインロードに戻ってきた。
うわ〜、スゴイ並んどる!!!
今度は運ちゃん、急にガソリンスタンドに入り
車を停めると、従業員が来る前に
自分でガソリンを注ぎ始めた。
もー、落ち着かない人だな〜。
そして、支払いを終えると、
再びエンジンを掛けるために
鍵をシーリングに差し込むが、
考えてみりゃあもともとエンジンは切れていない。
鍵抜いとったのに、なんで?
「ところでお前、ちゃんと金払ってくれるんだろうな?」
急にどうしたんだろうと思いお金を見せると、
「セ・ボン、セ・ボン、
 今ガソリン入れて俺の金は無くなったんだ。」
大丈夫、ちゃんと払いますって!!
再びメインロードの列に戻り、
今度は素直に車の流れに乗る。
「毎日こんなに渋滞するの?」
「あぁ、ここはいつもこうなんだよ。
 でも、日曜だけは快適だ。
 この先に交差点があって、そこを過ぎると
 渋滞は終わるんだけど・・・」
運ちゃんの言うとおり、
その交差点とやらを抜けると
本当にスムーズに流れ始めた。














海岸沿いの道は両サイドに
現代風な建物があるかと思えば、
粗末な家もある。
あっ、ブルーノート
(ジャズの演奏を聞ける高級ライヴハウス)がある。
アフリカにもあるんだね〜・・・
きらびやかなネオンに照らされた
空港ホテルなんてものもある。
セネガルはやはり都会だな〜!
タクシーの中でこの旅のことを思い出そうとしても、
なんか頭の中が飽和状態でうまく考えられなかった。
それくらい大変な旅だったと思う。
結局一時間近く掛かってダカール空港に到着!
「ジュルジュフ、マンギデム
(ありがとう、さようなら)」
そういって車を降りた。














空港入り口にいる警官に航空チケットを見せて建物に入る。
おお、ここじゃ〜!!!
ここは紛れも無く約二週間前に
マリへ行く飛行機を待つためオドオドしながら
夜を明かしたら場所だった。
今考えてみると、あんなにびびる必要は何も無かった。
セネガル人は基本的にみんな親切だった。
14日前と同じベンチに座り、
日記を書きながら飛行機のチェック・インを待つ。
このベンチにまた戻ってこれたことが
凄いことのように思えたし、
14日間は本当に長かったとも思えた。
それにしても暑い!
汗がダーダーと流れ、汗まみれだ。
何とかT−シャツだけでも着がえたいのだが、
いくらアフリカの空港とは言え国際空港のロビーで
裸になるのは気が引ける。
でも、汗が止まらない。
よし、着がえてしまえ!
思い切って着がえてみたものの、
当然のことながらやはり汗は止まらないのでありました。
もう一本ミネラル・ウォーターを買っておけばよかった。
でも、日本は今頃寒いんだろうな〜・・・














長い旅だった・・・
戻ってきたダカールの空港

























あっ、荷物をラップしてくれる所がある。
俺もジャンベをラップしてもらっておこう。
そのほうが安心だ。
1,500CFA(約300円)で
しっかり包んでもらい、
後はチェック・インを待つばかりだ。
夜も深けてだいぶん涼しくなってきた。
どうしても窓際の席がよかったので、
23:00過ぎに早めに
チェック・インの列に並んだ。
えぇかげん長いこと待って
23:40頃チェック・インが始まった。
「窓際の席をお願いします。」
「はい、荷物はどうされますか?」
「ジャンベをお願いします。」
「そちらのバッグも預かれますが・・・」
「いえ、これは機内持ち込みにしたいのですが・・・」
「解りました。では、これが航空チケット、
 セネガルからミラノ、ミラノから関西空港、
 どちらも窓際をお取りしています。」
俺の乗る飛行機はイタリアのミラノで乗り換え、
その後関西空港へと向かう。
「預けた荷物はミラノでもらうのですか?」
「いいえ、関西空港で受け取ってください。
 これがクレーム・タグです。」
「ありがとう。」
よし、窓際の席もとれたしバッチリじゃ!
出国審査を受ける前に
もう一度入り口から外の景色を眺めた。
たくさんの黒人の姿が見える。
そしてセネガルの匂いを含んだ風が
頬に吹き付けて、なんとも気持ちがいい。
アフリカか〜・・・
また来ることがあるかな〜、死ぬまでに・・・
「よ〜し!」
掛け声を掛けて出国審査に望んだ




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