〜第一章 『その背中を見つめて』〜 第二節

             ホームルーム開始前のチャイムが鳴っている。  少し後片付けに手間取ってしまったが、鳴り終わる前に教室に入れたから良し とする。  もちろん余裕をもって歩いてきたのだ。遅刻しそうだからといって廊下を駆け 回り、慌ててドアを開けることはしない。  『どんな時でも余裕をもって優雅たれ』というのは遠坂家の家訓だから守らな いといけない。  ……以前に士郎相手にそんなコトをしたような気がするがそれは反省済みだし、 朝だけは赦して欲しいと思う娘は親不孝だろうか。 「おはようございます、遠坂さん」 「おはよう、遠坂殿」 「お。リンリン、おはー」  教室に入ると賑やかに迎えられた。 「……おはようございます、三枝さん、氷室さん、蒔寺……さん」  何やら癒されて、清涼感を感じたところで、気分を害するのはここ最近毎朝の こと。  それでもちゃんと挨拶を返すことができたから、わたしは偉いと思う。 「――って! 何が『リンリン』よ? いい加減にその呼び名は改めなさい」 「えー」  そう駄々をこねるのは蒔寺楓。  蒔寺とは二年のクラスの時にいっしょになって、つきあいやすい……つまり必 要以上にベタベタしない関係として始まった交友関係。大悪友と呼んで差し支え ない。  浅黒い肌、キョロキョロとよく動く黒瞳、ボーイッシュな黒髪をした自称“穂 群の黒豹”こと、陸上部のエース・スプリンター。  わたしから言わせれば、“野良猫”でいいじゃない、と思う。 「……リンリン。いいじゃん、可愛いから」  こーゆう無礼者であるから、余計に豹じゃなく、野良猫で充分。 「な、そう思うよな、由紀っち?」  話を振られて困った顔をして、あうあうしているのは、このクラスの癒しであ る三枝さん――三枝由紀香。  穏やかな性格がそのまま顔に表れていて、日本犬特有の上品で人懐っこい子犬 といったところか。  家庭的な印象そのままに陸上部のマネージャーをやっていて、その家事能力は 士郎に勝るとも劣らないとわたしは見ている。  以前ごちそうになった彼女のお弁当のおかずは、手間暇と愛情が込められた絶 品だった。  思わずお家に持って帰りたくなるような子で、そう思っている人は多いと思う。 「……由紀を困らせるでない、蒔」  古風な言い回しでその三枝さんを宥めるように頭を撫でながらフォローに入る のは、氷室さん――氷室鐘なる人物。  蒔寺と同じ陸上部に所属していて、こちらはエース・ジャンパー。蒔寺と二人 で陸上部の双璧と成して、何度か大会の表彰を受けていた。  日本人離れした銀色がかった髪と、灰色の瞳という玲瓏な美貌の持ち主で、ミ ステリアスな雰囲気を漂わす眼鏡美人さんである。  美術の授業で、それはそれは見事な山水の水墨画を描いて美術の先生を唸らせ た武勇伝は有名。  その芸術センスはその佇まいに表れるというか、彼女の所作は流れるように美 しい。  表向き美大の海外留学に行くことになっているわたしとよく話すようになった 間柄でもある。 「……でも、可愛いと思いますっ、リンリン!」  頭を撫でられて落ち着いたのか、三枝さんは何やら必死に自分の意見を主張す る。 「――許す」  不思議だ。三枝さんに言われる分には、ちっとも不快にならない。  ……これも人徳の成せる技かもしれない。 「じゃ、三枝さんは、ユキユキでいいのかしら?」 「え? え、あっと、ハイ。……でも、ユキだけでもいいです」 「じゃ、そう呼ばせてもらおうかな」  思わず和んでしまう、わたし。 「ブー、ブー、由紀っちだけエコヒーキ、エコヒーキ」 「――あら、蒔寺さん。貴女のコト、ク・ロ・デ・ラと呼ばせてくれるのなら、 考えてさしあげてもいいですよ、ク・ロ・デ・ラ」  とても優しい笑顔で諭してあげたら、蒔寺は「――う、わかったわよ」と快く 了承してくれた。  口を尖らせている辺り、まだ懲りていないかもしれないが。 「ふむ……。そんなに悪い呼び名ではないと思うが、どうしても駄目なのか?」 「……どうしても、ね」  意外にも氷室さんが未練がありそうに尋ねてきたので、それを苦笑いで返す。  なぜ、『リンリン』と呼ばれるのは、嫌なのか?  ――――それは、若気の至り。  幼い頃、某公園にて『マジカル・リンリン』とか叫んで、魔法少女ごっこに興 じていたことを思い出す。  ……恥ずかしい。穴があったら、入りたいとはこのこと。  その時のホワイト仮面シローなる人物と遊んだ記憶が甦る。  あの時は、近所のみんなといっしょに公園の陣地を巡って日々争っていた。  ある日からわたしは魔術師の修行が本格化したこともあって、あの公園には行 けなくなった。  それからしばらくして久しぶりに公園に行ったけれど、あの子は来ていなかっ た。  ……あの子は、元気だろうか?  元気一杯で、わたしが張ったワナにもめげずに向かってくるところは誰かさん を彷彿とさせる頑固者は。 「――私の場合は……カネカネ」  わたしは、ぼそりと氷室さんが呟いたのを幻聴と思いたい。  もしかしたら、今のあだ名を呼ぶ仲間に入りたいのかもしれない……のだけれ ど――。 「…………」  この思索にふける、綺麗で真面目な横顔をしたこの人に『カネカネ』と言うの は、冗談でも畏れ多い気がするんだけど。 「仲良いんだな、遠坂」  後ろから士郎の声が聞こえて、慌てて振り返る。  そこには穏やかに微笑を浮かべてこちらを眺めている士郎と、仏頂面というか 驚いているというか複雑で面白い顔を浮かべている柳洞くんがいた。  ……人が悪い。教室に入ってからずっとこちらを見ていたのか。 「あー、ゴホン。世話になったことには間違いないので、礼は言っておく。  ――では、失礼する」 「手伝ってくれてありがとうな、遠坂。また、あとで」 「どういたしまして、柳洞くん。士郎、勉強がんばんなさいよね」  どうやらこちらの話が途切れるところを見計らっていたらしく、わたしに声を かけると二人は自分の席の方に歩いていく。  待っていなくても声をかけてくれればいいのに。本当にこの二人は律儀だ。  その去り際に、あの三人組にも軽く会釈をしていった。  この辺り、柳洞くんならともかく、以前の無骨で無愛想だった士郎では考えら れないところだが。 「ああ、由紀っち、しっかりしろ!」 「はうはう〜」 「……む、朝から刺激が強すぎたか」  そんな会話が聞こえてきたような気がしたが、わたしはその士郎の後姿を何と はなしに見つめていたので気がつかなかった。  士郎はごく自然にクラスメイトに挨拶をしながら自分の席に歩いていく。そこ にあるのは、笑顔。  ――――士郎は、本当に柔らかく笑うようにった。  何と言うのだろうか、自然にクラスに溶けこんでいるような気がするのだ。  自身の幸せを捨てた――それが士郎の心の在り方だった。  誰かのためにという強い強迫観念に捉われて、自分が幸せになることは申し訳 ないとか、そんな資格なんてない、と考えて生きてきたんだ、あの馬鹿は。  ……そう、クラスの中でいっしょにバカ騒ぎをしても一歩手前で線を引いて、 そこから立ち入らないようにしていたのが士郎だ。  それがようやくその線を踏み越えることができているようで、純粋に嬉しかっ た。  その士郎と途中一言二言談笑して、行き違いにこちらにやってきたのは綾子。 「おはよう、遠坂。それと、お疲れさん」 「おはよう、綾子。そちらこそ、お疲れさま」  朝錬の余韻か、額に爽やかな汗を光らせている弓道部の主将――美綴綾子。  綾子とはこの学園の入学当初から続く親友ともライバルとも呼べる関係。  キリリとした眉目秀麗さで、はっとするような迫力を備えた女傑さんである。  この綾子も、聖杯戦争の被害者なのだが、本人は既に克服しているようだ。  体調を回復させて入院から約一ヶ月の後の終業式に出席した時は、さすがに出 にくそうではあったが元気そうだった。  綾子は、あれはあれで女の子なのだ。体調よりも精神的なものが大きかったの だろう。  女の子としては不名誉な噂が流れていたのを恐れたからだし、その整理と勇気 がついて登校してきた綾子は立派だった。  あの時はライダーの結界による大量入院事件があったし、先生が失踪したり、 この学校の優男――間桐慎二が入院したことで、変な噂はそんなに広まらなかっ た。  それでも新学期が始まって平和な日常になると余裕が出てくるもので、過去を 振り返ってしまうのが人間心理、人の不幸は何とやら、というわけである。  ――――でも結局のところ、その変な噂は消えてしまった。  噂は、より大きな噂に打ち消される。  すなわち、わたしと士郎の関係が話の種になっていたからだ。 「遠坂、何がショックかって、あたしはお前と衛宮ができていたことの方がショ ックだ」  その当人が言うくらいである。  ……そんなにショックなことだろうか、わたしと士郎がつきあうというのは。  それと、もっと確実に噂を打ちのめしたのはクラスで言い放たれた言葉であろ う。 「美綴がそんなコト、するわけないだろ」  絶対の信頼のこもった静かで強い言葉。  わたしは思わず拍手してしまいましたとも。  その反応を見せたのはクラス全員というのだから、すごい。  それを言った本人は、クラス中のみんなが感嘆の拍手をしているのをイマイチ わかっていなさそうに小首を傾げる正義の味方を目指す朴念仁。  ……ともあれ、綾子が元気になったのは良いことだ。  わたしと綾子の間には、ひとつ賭けをしていた。  その賭けとは――三年になる前までに、彼氏をつくること。 「遠坂、このカリは必ず返すからね!」  当然、賭けに勝ったのだから、綾子と伴って士郎といっしょに一日デートにつ き合わせる勝利の権利を行使したのは、本当に楽しかった。  ……いやまあ、後半で綾子は逆ギレして、士郎に色目を使って絡んできたのは 焦ったのだけれど。  その綾子は心境の変化か、髪は肩ぐらいのところで切りそろえて、これくらい でちょうど良いとしていたのだが、最近では髪が伸ばすようになってぐぐっと大 人の女性ぽくなった。  冗談めかして「恋のせい?」と問い詰めても、相手は誰とは言わない。 「――もしかして、衛宮くんじゃないでしょうね?」 「……え? いや、ハハハハ」  赤くなってごまかす綾子は大層怪しかった。  柳洞くんに続いて、ゆめゆめ油断ならない相手が、この美綴綾子という私のラ イバルである。 「藤村先生に聞いたけど、調子良さそうじゃない」 「ああ、うん。そうかな? 今年で最期だからどうしても気合が入るから、かな。 桜もがんばってるからねー。主将としては負けられないところだよ。  ま、それよりそちらの文化祭や体育大会の準備はどうなのさ。あたしは、大い に期待してるんだけど」  挨拶ついでにお疲れさんなどと言われたのは、彼女の言うとおり私が柳洞くん と士郎といっしょに生徒会の手伝いをしていたためだ。  わたしは高校に上がってからは、家庭の事情で忙しいからと部活動や生徒会に は参加していなかった。  ――――わたしが、魔術師だから。  魔術を極めるならば、学校の部活動に参加するのも楽しそうであるが、わたし にとって魔術は生涯をかけて極めていくものであって、あれやこれやと手を出し て本業をおろそかにするほどわたしは魔術を甘く見ていない。 「当然、わたしが関っていて滞るわけないでしょ。期待してなさい、最高に盛り 上げてやるんだから」 「うんうん、本当に期待通りで、あたしゃ嬉しいぞ」  任せた、とバンバン背中を叩く綾子。  少し痛いんだけど、綾子。 「……」  わたしが恨めしそうに綾子を見るとその手は止まったが、代わりに嬉しそうに わたしを観察するように見ている。 「? 何、わたし変かな?」  制服にゴミでもついているのかしら、と思って自身を慌てて見回してみる。  ……異常は見当たらないのだが、はて? 「……遠坂、なじんできたなって思っただけだよ。ふむ、男ができるとこうまで 変わるものかと驚いているところ」 「…………ま、まあね」  綾子に言われて、やはりそうだろうと認めてしまう。  ――――わたしは、士郎にとことんつきあうことにしたのだ。  士郎には強引さが必要だった。  人の輪に入ることをためらう士郎を無理矢理にでも入れようと思ったら、その 中からその手を引いてやる必要があったのだ。  そうなるとわたし自身もその輪に入らなくてはならなかったので、わたしも変 わる必要があったのだ。  わたし本人は、あまり変わったという思いはしない。ただ単に本性を見せてい るだけで、その本質は変わっていない。  それでも今までわたしの本性を知らなかった人から見れば、変わったのだろう。  それで見る目が変わって、わたしから離れていく人もあれば、逆に近づいてく る人もいる。  以前よりも気安い関係となっている先程の三人組がいい例。  むしろ、交友関係は広まりつつある。  そういったことで関係が広がって深まれば、秘密を重んじる魔術師であるわた しは大変なのだが、それはそれでいろいろと苦労すればいいだけの話。  楽をすれば、楽しいというわけではない。苦労して大変な思いをするのも存外、 楽しいものだ。 「……変かな?」  それでも多少は気になるので、以前のわたしを知る綾子に訊いてみた。 「いや、前より良い女になったよ」  綾子は男前に笑って答えてくれた。  その答えは……褒めすぎではないだろうか。 「こらー、みんな席につきなさーい」  ちょうどその時、藤村先生がホームルームに入ってきた。  ガヤガヤと席を立っていたクラスメイトは席に着き始める。 「残念だなー。今の遠坂なら、あたしが男だったら絶対に放っておかないって」  去り際に綾子は片目を瞑って悪戯っぽく、顔を赤くしたわたしにそう言って自 分の席に歩いていった。 「バカ、綾子」  その後姿に、小声でわたしは文句を言っておいた。  ――――綾子は、ライバルであると同時に大親友である。 「――タイガーって言うなーっ!!!」  わたしのクラス、三年B組は見事なカオスぶりである。  それは担任が藤村先生である時点でそれは極まっていると言っていい。  見渡せば二年の時のA組のクラスのメンバーが多いのは、きっと葛木先生が急 に失踪したことに関係があるのだろう。  あの頃はいろいろな事件が起きてみんな強いストレス下に置かれていたし、加 えて担任の葛木先生がいなくなったことで進路を左右する大事な時期だったため に不安を覚えた生徒も多かっただろう。  そのことを考慮して、藤村先生という大器に任せたのだろうと思われる。  本来であれば、成績によって他のクラスと平均になるようにならされるところ を、ストレスを抱えたであろう問題のある生徒と先生を一つに集めて、生徒会長 とわたしで重しをつけようとする学園側の魂胆を思わず勘ぐってしまったり。  大人の事情とは嫌なものだとつくづく感じてしまう。  それこそ嫌な役を押し付けられた藤村先生の方がいい面の皮ではないかと思う。  もっとも、そんなこと気にしないのが藤村先生が、藤村先生である所以である みたい。  底抜けに明るい藤村先生といっしょなら、たいがいの悩みとは無縁になれるだ ろうから。  ――――気にするべきは、きっと……生か死だけ。 「落ち着けって、藤ねぇ……じゃなかった……藤村先生」  士郎は藤村先生にスリーパーホールドを極められている後藤くんの救助に向か っている。  がんばれ、士郎。  その後藤くんは、既に青くなっている。  彼はキレる人間なのだが、いかんせん何とかは紙一重というヤツなのでこうし たうっかりさんでもある。  前のドラマの影響を受けて――憑依する人物によって落差の激しいキャラクタ ー性なのでわたしでも彼のことを未だに捉えかねている。  ちなみに今日の彼の憑依キャラクターは、士郎曰く『うっかり八兵衛』とのこ と。本当にうっかり口をすべらしたらしい。  わたしはよくわからないけれど、士郎は「きっと遠坂が見たら共感できるんじ ゃないかな」と言っていた。  …………どういう意味なのか判断しかねるけれど、セイバー曰く「――素晴ら しい。上に立つ者の見本であるべきです」なんて番組を評していた。  少し興味が湧いたので、今度セイバーに録画を頼んでおこう。  しばらく士郎と藤村先生の無言の睨み合いが続くも、藤村先生は後藤くんを無 造作に解放する。  後藤くんは、ごすっ、と小気味の良い音を立てて床にくずれ落ちた。  いや、既に後藤くんの意識は落ちていたようだが、痙攣しながらも「パトラッ シュ……パトラッシュ……」と呻いているので取り敢えずは生きているみたい。  後藤くんは、あれはあれでかつての二年C組の猛者だから、多分大丈夫。 「……藤村先生、わかってくれたか」  威嚇する野良猫に愛想良くにじり寄る風情で、士郎の必死な説得が功を奏した のだろう。  クラスにはあからさまに安堵の溜息が満ちる。 「……む? いや、その? 藤村先生……教壇から竹刀なんか取り出して、どう してそこにあるコト自体不思議なんだけど……、それで一体どうしようと言うの か」  再び教室に戦慄が走る。 「うわわぁぁあん、士郎までお姉ちゃんを虐めるんだー!」  藤村先生の暴走は、止まらずその標的にされる士郎。  誰もが流血騒ぎを覚悟して目を閉じ、再びその目が開けられた時――。  ――――「おお」、とクラスがどよめく。 「……むむ、士郎、いつの間にそんな高度な技を」 「藤ねぇ、いいから落ち着こう、落ち着こう、な。……頼むから」  セイバーの特訓の成果が出ているらしく、士郎の両手には干将・莫耶よろしく 英語辞典と定規が握られ、藤村先生の初太刀を凌いでいる。  すごいわ、士郎。剣道五段の藤村先生の初太刀を凌げるなんて。  ……と、言うより士郎、必死だ。 「士郎! どこまで強くなったか、お姉ちゃんが確かめてあげる」 「――趣旨、違ってきてるし!」  あまりに不条理さに士郎が嘆く。  その気持ち、わからなくもない。  個人的には士郎と藤村先生の死力を尽くした試合は見てみたいが、今は授業中。  その試合の行方は衛宮邸の道場で決すればいいのだし。  それに、教室のドアの前でこめかみを引きつらせている校長先生の血圧のため にもこの騒ぎは早急に収めるべきだろう。  ……となると、またわたしが藤村先生を抑えなくていけないのか?  ふと教室を見渡せば、いつの間にかこのクラスの良識派である柳洞くんを筆頭 に、綾子、氷室さん、三枝さんが何やらわたしを期待に満ちた目で見ている。  ――――わかりました。わかりましたとも。  器用に机を避けながら二人の打ち合いは続いている。  藤村先生の示現流もかくやの打ち下ろしに伴う踏み込みは学校を揺るがしかね ないところに来ているし、士郎はあまりの必死さに覚醒状態に入って剣の丘目指 しているようだし。  さて、先程黒板のところから入手した、このチョーク。  わたしは狙いを定める。  ……喧嘩両成敗。  覚悟してね、二人とも――。  ――――これが、わたしのクラス、三年B組の日常風景である。   次頁へ

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