追いついた。
 車道を強引に横切ったりとかなり無謀な真似をしたけど、こんな処で琥珀さ
んと離れ離れになりたくない。

 あと少し。
 

「琥珀さん」

 叫んだ。
 少し声がかすれたけど、充分耳に届いたはず。
 こっちを向いてよ。

 琥珀さん?

 反応すらしない。
 琥珀さんはゆっくりと歩み去る。
 違うのか?
 人違いだと?

 でも、あの着物。
 あの後姿。
 歩き方。
 間違いなく琥珀さんの筈。

 どうして、行ってしまうんだ。

「琥珀さん!」

 さっきより大声を張り上げた。
 周りの人がこちらを向く。

 なのに、琥珀さんは振り向いてもくれない。

 急にどっと疲れを感じた。
 よろめきつつ足を動かす。

 琥珀さん……?

 疑念。
 あれは、本当に琥珀さんなのか?
 
 琥珀さんならなんで無視するんだ。


 そもそも、なんで琥珀さんは一人でいるんだ。
 一人で何処に行こうというんだ。

 俺を置いて。
 それは、
 おかしくはないだろうか。


 本当に、俺は見間違いをしているだけで、あれは別人?

 馬鹿な。
 否定して、もう一度呼びかけようとして……。

 出来なかった。

 今度も、振り向いてくれなかったら。
 そう思うと躊躇してしまう。

 
 と、琥珀さんの足がぴたりと止まった。
 そして、振り向く。
 緊張し、唾を呑み込んだ。

 ……。
 琥珀さんだ。
 間違いなく、琥珀さん。


 え?
 なんだろう、この違和感は。
 何かが頭に引っ掛かる。

 でも、その姿は、確かに。

 どうだろう。
 この琥珀さんは?


     1.なんだか雰囲気が違うような……、翡翠?

     2.琥珀さん……、だよね?

  

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