私は彼らにつっけんどんに聞いてみる。
「何か仕事をしているの」
私のこの問いに真剣に答えない。妙にニヤニヤしているだけである。しかし、しばらく
してぼつぼつ話をするのがいる。どこかの仕事を少しやってはみるが、すぐ止めてしまう
という。なぜ止めるのか、どうして仕事をしないのか、その本当の理由をはっきりいわな
い。ニタニタしているだけである。
彼らは一日仕事をしない。ただその辺をぷらぷらしているだけである。実に見るに耐え
ない、哀れむべき、情けない、人生の破綻者、強固な意志と確固たる信念を持たない、人
間として最も恥ずべき可哀相な人達である。私はこの人間として誇りも恥も知らない人達
に、まあ、気の毒といえば気の毒だなあと思った。
しかし、彼らは私に切り返してきた。
「あんたは何してるの」
私はこの問いに
「現代的絵を描いているんだ」
と胸を張って答えた。いや、外側だけは胸を張っていて実は内心それほど堂々としてい
るわけではない。
私のこの返答に彼らはますますニタニタ笑いを拡大してきたのである。客観状況を冷静
に、リアリズムで迫ってみる。私自身、私の姿、形、これと質問をあびせかけているおか
しな連中と比較検討して見ると彼らの方がいくぶん私より良い、いや相当良い装束をして
いる。私の方が物がよくはないだろうか、いや、そんな事はない。物も彼らの方が有利で
ある。どうも、このニタニタ笑いの実証性は拡大の一途である。
現代絵画を描く事を私は仕事としている。日本で現代絵画を描いて、それを売って仕事
としている人はいるだろうか。まったくいないわけでもないだろうが、現代絵画を手がけ
ている人を集合させた時、売れている人は、ものすごくわずかで、多数を1として見た時
売れている人は0と考えてよい。彼らはこのように絵が売れない事をよく知っているので
ある。