ま  ち
   「移ろいゆく都市」

  せわしなく流れる 日常の群れ。

  交錯する あらゆる光の結晶体は
              
ばこ
  無秩序な 子供のおもちゃ匣


  喧騒と煩雑な 人々の群像

  漂流する あらゆる素粒子の集合体は

  都市という匣の中で 熱力学第二法則を嘆く

          
サイバネティックニューロン
  縦横に迷走する 無機的神経節と

  膨大な熱を放ち 冷めていく灰褐色のモノリス
               
カレイドスコープ
  補色され 増殖する 偽りの万華鏡は

  虚飾と擬態で覆われた 咎人達


  哀しき欺瞞に満ちた この都市は

  渇望と 癒えることのない 疵を背負い

  但 一つの拠り所を求め

  あてどなく 彷徨う…



   
「還り来る地より〜」
         
  エトランゼ
  波濤にたゆたふ 異邦の夢―

  全ての源たる 粒子共に誘はれ

  彼方 何処よりか 流れ来るものは
              
ゆめ
  或ゐは 渺茫たる群青の 雫。


  「忘るるな」と叫ぶ 悲壮な風に
                
うたかた
  「忘却こそ理」と応へる 白き泡沫

  なれど 往きて また還る場所は

  静謐なる臥し床にて 忘れられたる雫を腕に抱く。

  
  深き淵より 天涯にて

  玉響に木霊するは 雫の聲

  悉く 何れを攫ふは 波に風


  届かぬ望郷に 想ひを馳せば

  沈みたる雫は ゆらゆらと ふるへ

  還り来る地にて 霏霏とつもる。



   
「揺らぎの季節」

  玲瓏たる 蒼天の虚空より

  凍てつくほど鋭く 大気を貫き
           
き ん
  螺旋を描いて降る 黄金の斜光

 
  微かに響く 透明なる旋律は

  うつろひゆく 季節の残響
        
そうもく
  ―あるゐは 草木共の感傷。

         
  ストリングス 
  清澄なる余韻の 独奏が
       
かぎろい
  揺らめく 陽炎の中

  穏やかな 緊張を孕む情景に 調和し


  漂白と 錯綜の宿世は

  侘しき 和音の中
         
オーバチュア
  次なる季節の 前奏曲へと 移調する。

  
  …定まらぬ調べ

  …希釈される 色彩達

  妙なる 揺らぎの迫間で

  但 ひたすらに歩みし者は 何れを求めるか

         
らくよう
  踏みしめたる 落葉の
  

  彼の 心の如き 乾いた音色は
  
 シトリン
  黄水晶の 疎らなる樹海を抜け
     
しじま
  虚空の静寂に 還り往く。



   
「出会いの軌跡」

  黒曜石の瞳は 月光を宿していた。
        
ほ し
  幾万 幾億の星辰の中

  僕だけが気づく 光芒―

  流れ行く 温もり達の 残滓に

  憂いの香りを 纏って

  いつしか 夜の渦に 溶けていく…

  
  気まぐれな 運命の女神が綴る ソナチネ。

  たおやかなる 白い指先が 爪弾き
              
な ら
  埋もれていた 深き音を 共鳴して

  通り過ぎるだけの 法則を振り向かせた


  何気ない出会いの中 たった一つの邂逅

  予感という ありふれた言葉が

  真実になる瞬間―

  僕は 駆け出す

  明滅する 光の先へと


  そこに待つ 未来を目指して…



   
「天翔ける光」

  漆黒の天空にて咆哮する 猛き獅子
             
かりびと
  天穹に集いし 雄々しき狩人

  折々の神話をなぞらう 黄道の住人達。


  広大無辺の宇宙を 思うままに巡り

  開闢と集熄を この目にて…

  叶わぬ身と知れども 一縷の嘱望なれば―


  量

  質

  色

  光…

  それら絶対性への否定?


  幻想かもしれぬ 束縛からの解放を望み
               
かげろう
  銀河を翔ける か細き羽の 蜉蝣は

  儚き命の 尽きて 尚

  見果てぬ夢を 求めるだろう…

  
 す ば る
  六連星の 賛歌を聴き
 
  彗星の 軌跡を準え
  
 ク エ ー サ ー
  恒星状天体の 照明に導かれ
       
うんおう
  荘厳なる 蘊奥の探求に 旅立とう

    
ほむら
  碧き焔の 駆り立てるままに…



   
「大地に在りて」

  (あらゆる色)

  (様々な粒子)

  (もう一つの「原点」と「回帰」の場所―)

      
 ガ イ ア
  豊穣なる大地母神に抱かれ 土と共に生きよう
            
かいな
  厳しさと 優しさを 腕に込めて
  
いのち
  生命の奔流を穿ち

  在るがままの 大地と共に 歩もう


  あらゆる 恵みを受け

  萌芽する 緑の息吹こそ
     
うた
  大地の詩なれば。


  朝焼けと共に目覚め 夕闇と共に眠り就く

  地に根ざすものの 慎ましやかなる輪廻は

  ゆるりと 普遍に廻る


  思い出そう―

  生くるものの源は 此処に在りて
  
すべて
  万物を育む 場所なれば。