のぞみの日記・4年生になって

春休み




3日目


          ☆

「希、起きや」パパに起こされて時計を見ると5時でした。急いで顔を洗って着替
えると必要な物だけデイパックに入れ、キャスターバッグを廊下に出して朝ご飯に
行きました。お姉ちゃん達と繭子達のキャスターバッグも廊下に出ています。
「の〜の、おはよう」2階のレストランに行くと繭子が手を振りました。お姉ちゃ
ん達も食べていました。おはよう、の〜のもみんなに声を掛けるとパパと一緒にパ
ンとジュース、フルーツとオムレツを貰って繭子の横に座りました。

ご飯の後ロビーに降りるとパパ達はチェックアウトをしました。6時半にアデルと
いう人が来てパパと話をしています。パパがみんなに声を掛けると表に出てマイク
ロバスに乗り、カイロの空港に着いたのは7時を少し過ぎていました。
マイクロバスの運転手にバイバ〜イと言うと笑って手を振りました。キャスターバ
ッグを押して空港に入るとアデルという人と一緒にキャスターバッグを預けました。

ここで待っているようにと言われて待っていると搭乗券を持って来てみんなに渡し
ながら、飛行機の出発時間は8時だと言いました。セキュリティチェックを受け、
待合室みたいな所で待っていると案内の放送があってみんなが列に並び始めました。
の〜の達も並ぶと搭乗券を確認しています。外には大きなバスが待っていてそれに
乗ると飛行機のところまで運んでくれます。小さい飛行機で2人掛けのシートが2
列だけです。の〜のが窓側に座ると繭子も窓側に座り、シートの間から覗いて笑っ
ています。

8時に飛行機が動き出すと直ぐに飛び上がりました。窓から外を見ると茶色の中に
滑走路が何本も見えます。高度が上がると何処までも茶色の景色が続いています。
アスワンの空港に着いたのは9時半に少し前でした。キャスターバッグを取ってア
デルという人と一緒に行くと空港の外にマイクロバスが待っていました。外はカン
カン照りでサングラスがないと眩しそうです。キャスターバッグをマイクロバスに
積むとアスワンの街に向かいました。途中、小さなダムの上の道を走るとガタガタ
揺れて舌を噛みそうです。そこを過ぎるとナイル川と平行に開けているアスワンの
街です。

いろんな建物やホテル、レストランなどを見ながら走ると川の方に入って止まりま
した。ここは船着場で、今日泊まるホテルはここから船で行くそうです。大きな船
と小さいボートが何艘かいます。アデルという人が船着場の係りの人と話をして大
きい船に乗るように言いました。係りの人がキャスターバッグを船に積むのを見て
乗りました。の〜の達以外にもバスで来た日本人のツアーの人達が乗ってきました。

「パパ〜、上に行こうよ」船が動き出してパパに言うと、みんなも上に行こうと階
段を登ってデッキに上がりました。
デッキにはテントの屋根が付いていて椅子とテーブルが有り、パパは椅子に座って
タバコを吸っています。の〜のと繭子は手摺にもたれて景色を見ていました。
パパがママと来た時の写真を見たけど、ナイル川は青々していて本当にキレイです。
パパがカメラを構えていたので繭子と一緒に手を振ると、笑いながらシャッターを
押しました。暫く走るとキレイなピンク色の建物が見えてきました。

「パパ〜、あれが今日泊まるホテルなん?」パパに聞くと頷きました。船がスピー
ドを落としたので降りる準備をしました。キャスターバッグはホテルの人が運ぶか
らと言われ、手ぶらで降りてホテルに入りました。外はかなり暑いけどホテルの中
は冷房が効いていて涼しいです。エジプトに来る前、暑い所と涼しい所を出たり入
ったりすると体調を崩しやすいから気をつけるようにとパパに言われていました。

アデルという人がチェックインをしている間ロビーで待っていると、ボーイさんが
ジュースを配っています。みんな貰って飲んだけど冷たくて美味しいジュースでし
た。他のツアーの人達も貰っています。
「希、パパの分も飲んだらいいわ」パパが笑いながらグラスを出しました。
「パパも飲んだらいいのに。冷たくて美味しいよ」の〜のが言うと、パパが笑いな
がらこのジュースの事を教えてくれました。横で繭ママやお姉ちゃん達も聞いてい
ます。

「これはカルカデ茶というお茶で、別名ハイビスカスティといってハイビスカスの
花で作ったジュースでビタミンCがたっぷり入ってるんやで。前に来た時もママが
美味しいって飲んでいたんやで」パパが言うと繭ママやお姉ちゃん達が驚いていま
した。売っていたらお土産に買いたいと笑っています。

アデルという人が来てルームキーを渡しながらパパとお話をしています。
「1時半から昼ご飯で2時半からイシスの神殿に行くからな」パパが言って時計を
見ると11時を少し過ぎていました。4階に上がるとお部屋の前にキャスターバッ
グが置いてありました。

「お兄さん、昼ご飯まで2時間以上有るけどどうするんですか」麻衣姉ちゃんが聞
くと、何もする事はないけどコーヒーでも飲もうかと言うとみんな頷きました。
の〜の達の部屋にみんなが来てパパがポットでお湯を沸かしています。お姉ちゃん
達や繭子もクッキーやピーナツ、おかきなどを持って来ました。パパが紙コップに
モンカフェをセットしてお湯を注ぐと部屋中にコーヒーのいい匂いが広がっていま
す。の〜のと繭子には山に行く時に入れてくれるココアです。

窓から見ると中庭向きで綺麗なお花がいっぱい咲いています。遠くの丘の上に白い
建物も見えます。1時半にご飯を食べにレストランに行くとすでに食べている人が
いました。バイキングだったので先にビールとスプライト、水を注文してから料理を
取りに行きました。パパが嬉しそうな顔をしてご飯をいっぱい入れています。の〜
のがよく見るとパパの大好きな豆ご飯でした。

「パパ〜、こんな所で豆ご飯が食べれるんやね」の〜のも豆ご飯は大好きだからお
皿にいっぱい盛りました。お姉ちゃん達や繭子達もいっぱい入れています。他のツ
アーのお客さん達も豆ご飯を食べています。かんぱ〜いとみんながグラスを合わせ
て食事が始まりました。
「有希と来た時も豆ご飯が出たんやで。昼だけやったけどな」
「じゃあ有希ちゃんと来た時もこのホテルやったんですか?」由香里姉ちゃんが聞
きました。

「最初はエレファンティネ島のモーベンピックを聞いたんやけど取れんやってん。
オールドカタラクトは高いからな。このホテルは日本のツアーでけっこう利用され
ているから、食べもんも案外日本人向けに作っているんかもな。まさか今回も豆ご
飯が食べれるとは思わんやったわ」パパがみんなに言いながらビールを飲んでいま
す。ご飯の後ロビーで休憩しているとアデルという人が来て観光に出かけました。

ホテルの前から小さいボートに乗って街の方の船着場迄行き、マイクロバスで暫く
走るとまた船着場みたいな所に着きました。アデルという人の案内でボートに乗る
と外国人の観光客と一緒でした。ゆらゆらと揺られて5分くらい走ると島に遺跡み
たいなものが見えてきました。

桟橋みたいな所にボートが着くと上陸です。アデルという人の説明を聞きながら石
の柱がいっぱい並んでいる所に行きました。この柱の上の方には装飾がしてあって
全部違う装飾です。遺跡の中を回りながらずいぶん写真を撮りました。ここはイシ
スの神殿というそうで、エジプトの神話に出てくる女の神様の神殿だとパパに教え
てもらいました。

再びボートで元の所に戻るとマイクロバスで大っきなダムに行きました。ダムの上
に道路があって観光バスが何台も止まっています。上流は水がいっぱい蓄えてあっ
て下流の方に放水していました。ダムの放水を見ながら、3年生の夏休みに黒部ダ
ムで見た放水を思い出しました。パパとママが来た時の写真で見た青い色のアーチ
の下で繭子と写真を撮りました。

帰る途中に石切り場という所に行ったけど、大して見るものはありませんでした。
大きな石があって切りかけのオベリスクというそうです。パパの写真でみた時は石
の上に乗っていたけど、ママとの時は乗れなくなっていたそうです。マイクロバス
で船着場まで戻り、ボートでホテルに帰ったのは6時を過ぎていました。晩ご飯は
8時からなので、それまでお風呂に入ってのんびりしようと言っていました。

「パパ〜、一緒に入ろう」の〜のが笑うとパパも笑いながバスタブにお湯を入れて
います。お湯が半分くらい溜ってソープを入れてかき回すとみるみる泡だらけにな
ってきました。パパと一緒にゆっくり入ると昼間の暑さが引いていきます。
シャワーで頭を洗って出ると長袖のTシャツと黄色の綿パンに着替えました。

パパはバスローブで出てきました。窓側の椅子に座ってタバコに火を点けると窓を
少し開けています。8時10分くらい前に下に降りると、由香里姉ちゃんと麻衣姉
ちゃんがロビーに居ました。
お姉ちゃん達もワンピースやスカートに着替えていました。少し待っていると繭子
と繭ママが来ました。2人もワンピースに着替えています。他のツアーのお客さん
たちも降りて来てレストランに向かっています。

パパ達は相変わらずビールを頼んでいます。の〜のと繭子は今回はファンタを頼み
ました。パパが空気が乾燥しているからあんまり汗を掻かないけど、思っている以
上に水分が蒸発しているから小まめに水分を取るんやで、と言っていた事を思い出
して観光の時もレモンのキャンディやビタミンCの飴を舐めて水を飲んでいました。

パパ達が昼ご飯の時と晩ご飯の時にビールを飲むのもそのためかなぁと思いました。
晩ご飯が終わる頃にアデルという人が来て明日の確認をしています。明日は8時に
出発でアブシンベル神殿を見に行きます。朝ご飯は7時頃に食べれば間に合いそう
です。アブシンベルから帰って昼ご飯、その後はフリータイムだけど、パパが頼ん
でいてファルーカという船に乗ってナイル川を走るそうです。

お部屋に戻ると粉末の野菜ジュースを水で溶いて飲みました。エジプトでは生野菜
が食べられないからとママが買ってくれたジュースです。あんまり美味しくないけ
ど、野菜不足が解消されると言っていました。パパも一緒に飲んでいます。お姉ち
ゃん達や繭子達も持って来ていると言っていました。

          ★

「の〜の、の〜の」囁くような声での〜のを呼びました。の〜のが目を開けると典
子姉ちゃんがベッドに腰掛けて優しく微笑んでいました。
「典子姉ちゃん・・・」思わず叫びそうになって口を押さえると典子姉ちゃんが笑
いました。パパは隣のベッドで気持ち良さそうに眠っています。
「お姉ちゃん、久しぶりだね〜。長い事逢えなかったから淋しかったんだよ」の〜
のが小さな声で言うと典子姉ちゃんは頷いています。

「お姉ちゃんもそうだよ。長い事逢えなかったから淋しかったんだよ。でもね、去
年の春頃にの〜のをエジプトに連れて行きたいって話をしたやろ。パパは難しそう
な顔をしていたけど、きっと来るって信じていたんだよ。
最初はの〜のとパパと2人の予定やったけど、繭子のママや繭子、由香里ちゃんや
麻衣ちゃんも一緒で、の〜のも楽しそうで喜んでいるんだよ。

麻衣ちゃんも由香里ちゃんもの〜のが赤ちゃんの頃から可愛がってくれてたもんね」
典子姉ちゃんは優しく話しながらの〜のの手を握りしめました。の〜のもお姉ちゃ
んの手を握りしめました。
「の〜のにお願いがあるんやけどな」典子姉ちゃんが言うとの〜のはびっくりしま
した。今まではの〜のがお願いばっかりしていて、お姉ちゃんは願いを叶えてくれ
たけどお願いされるのは初めてです。の〜のに出来るのか心配でした。

典子姉ちゃんはそんなの〜のの気持ちを察したのか、優しく微笑みながら簡単な事
だよと言いました。の〜のが頷くと耳元で囁きました。の〜のはお姉ちゃんが囁い
た事が嬉しくて頷くと、お姉ちゃんは優しく微笑んでいます。
「お姉ちゃん、そろそろ行くからな。の〜の、頼むね」典子姉ちゃんが優しく言っ
ての〜のの手を握りしめました。の〜のは頷きながら眠くなり、お姉ちゃんの言っ
た事を思いながら眠りにつきました。



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