のぞみの日記・4年生になって

春休み




4日目


          ☆

7時にパパに起こされて朝ご飯に行くと、繭子と繭ママは食べていての〜のと手を
上げました。の〜のもまゆ〜と手を振って隣に座るとパパがお水を出しました。繭
ママの前にもお水が置いてあります。みんなが500CCのペットボトルに水を入
れ替えて持って行きます。パパと一緒にパンとジュース、フルーツやパスタを持っ
てくるとパパはパンを多めに乗せています。

バッグからビニール袋を出してパンを2つ入れると繭子が見ながら笑っています。
この事はパパが言っていてお姉ちゃん達もパンをビニール袋に入れる筈です。直ぐ
にお姉ちゃん達が来て、おはようと言ってパンやコーヒー、ジュースなどを取りに
行き、パンを多めに持って来るとビニール袋に入れてバッグに入れました。

「希、暑いから涼しい格好しぃや」一度お部屋に戻って着替えました。パパは薄い
綿パンに長袖で袖口が大きくなっているだっぽりしたシャツを着ています。の〜の
はキャットハウスの黄色のパンツに半袖の迷彩柄のTシャツ、キャットハウスの白
のパーカーで帽子の代わりに黄色のバンダナを巻きました。

「行こうか」パパがショルダーバッグとカメラを持つと、の〜のも小さいデイパッ
ク持って部屋を出ました。ロビーに降りるとお姉ちゃん達と繭子達が待っていまし
た。他のツアーのお客さん達も集まっています。アデルという人が来て行きましょ
うと声を掛けました。ホテルの前から大きな船に乗ると他のツアーの人達も乗って
きました。

「まゆ〜、上に行こう。パパ〜、お姉ちゃん、上に行こうよ」繭子とみんなに言っ
て上のデッキに上がり、青々としたナイル川を見ていると吸い込まれそうな気がし
ます。パパは椅子に座ってタバコを吸いながらの〜の達を見ています。街側の船着
場に着くとマイクロバスが待っていました。マイクロバスでアスワンの空港に着い
たのは九時少し前です。搭乗券を貰って待合室に行くと大勢の人が待っていました。
同じホテルに泊まっているツアーの人達も来ました。

「希、繭、この飛行機は自由席やから早く飛行機に乗って左側の席を取りや」パパ
が笑いながら言うと繭ママとお姉ちゃん達が変な顔をしています。
「左側って何かあるんですか?」由香里姉ちゃんが聞くと、アブシンベル着陸直前
に左側に神殿が見えるんやで、とパパが笑いながら言うと、繭子が頑張って取るわ
と笑いました。の〜のも頑張って左側を取ろうと思いました。案内があって外に出
ると少し離れた所に飛行機が止まっています。ここでは飛行機まで歩くようです。

繭子と急いで歩き、タラップを上がって機内に入ると左側の席を3列取りました。
この飛行機は小さくて大きな外人さんは天井に頭が着きそうです。みんなが乗ると
直ぐに動き出しました。アブシンベルまでは40分くらいだとパパが言いました。
上空から見ると砂漠の中に1本の道が真っ直ぐ伸びているのが見えます。


時々ナイル川上流のナセル湖を見ながら飛ぶと、エンジンの音が変わって高度が低
くなって来ました。窓から見ているけど神殿は見えません。旋回しながら高度がど
んどん低くなり、ナセル湖に着きそうなくらい低くなるとそろそろやでとパパが言
いました。繭子やお姉ちゃん達も窓から見ています。直ぐに岩山みたいなのが見え
てくると、その岩山に大っきな像が彫ってあるのが見えました。わ〜っと言ってい
る繭子の声が聞こえると直ぐにガタガタっと振動がして着陸しました。

飛行機がターミナルの近くで止まるとタラップを降りてターミナルまで歩きます。
外は焼けつくような暑さで日差しも強そうです。
ターミナルを出るとバスが何台か止まっていました。
「どれでも好きなバスに乗りや」パパが言って繭子と一緒に空いていそうなバスに
乗ると、パパや繭ママ、お姉ちゃん達も乗りました。他のツアーのお客さんも乗っ
て来ました。空港から10分くらい走って駐車場で降り、お土産屋が並んでいる所
を通ると意味の分からない声を掛けてきます。時々変な日本語も聞こえました。

駐車場から少し歩いただけで汗が出てきます。頭にはバンダナを巻いていたけど、
パーカーのフードを被ってサングラスを掛けました。入り口でアデルという人から
入場券を貰い、中に入って奥の方に行くと青々としたナセル湖が見えてきました。
左の方に行くと崖に大っきな石像が4つ有りました。

「わ〜、大っきいね〜」の〜のが叫ぶと繭子も大っき〜ぃと叫んでいます。パパが
ラムセス二世の像だと教えてくれました。デジカメを構えたけど大き過ぎて全部入
りません。少し離れて1つだけ撮りました。中に入ると通路には大きな像が並んで
いて壁にはいろんな絵が彫ってあり、照明に照らされていて金色に輝いています。

アデルという人が神殿での写真撮影が禁止されていると言いました。色んな絵を見
ながら奥の方に行くと至聖所という所に崩れかけた四つの像が有りました。大人の
人がいっぱい居て見えにくかったけど、他のツアーのおばちゃんがこっちにおいで、
と空けてくれて繭子と一緒に一番前で見ました。

他にも横の方のお部屋を覗いてみるといろんな絵が彫ってありました。大きい神殿
を出て隣の小さい方の神殿にも入りました。この神殿はネフェリタリという女の人
の像が彫ってありました。ここも照明で金色に輝いて見えます。大っきい方の神殿
と小さい方の神殿の前で写真を撮りました。2つの神殿を見て端の方に行くと木陰
があり、何人かが休憩していてパパがタバコに火を点けました。

この木陰の所からは2つの神殿が並んで見え、繭子と並んでアデルという人に写真
を撮ってもらいました。
「のぞみちゃんもまゆこちゃんも元気だね」と笑っています。
帰りは大っきい方の神殿の横にあるドアから神殿の中を通りました。中はドームみ
たいになっていて鉄の階段と通路がありました。

駐車場に戻りながらお土産屋を覗くと、色んな商品を手に持って見せながら買えと
言っているようです。マイクロバスに戻ると冷房が効いていて快適です。空港に戻
るとアデルという人が搭乗券を配り、チェックインして待合室に入るとパパがコー
ラを買って来ました。みんなも買っています。お腹が空いてきたのでデイパックか
らパンを出すとお姉ちゃん達も食べています。

コーラを飲みながらパンを食べると、よく冷えたコーラが美味しくて全部飲んでし
まいました。パンを持って来たのは前の日、明日は昼ご飯が遅くなるからパンを持
って行って食べたほうがいいで、とパパが言っていてみんなパンを持ってきていま
した。時計を見ると1時前です。

暫くすると案内があり、飛行機に乗るとアスワンに戻りました。アスワンに着くと
2時になっていました。空港からマイクロバスで街に戻るとナイル川に浮かんでい
る船のレストランに行きました。本当はホテルで食べるのだけど、パパがアデルと
いう人に頼んで特別に手配してもらったそうです。ツアーではこういうレストラン
には行かないそうで人数が少ないから出来ると言っていました。

このレストランは少し高いけど信頼できるレストランだそうです。ナスやピーマン、
鶏肉、豆などを煮たもので、火を通しているから日本人でも大丈夫だよってアデル
という人が笑って説明しました。やっぱりパパ達はビールを飲んでいます。ご飯を
食べ終わると3時を過ぎていました。

街側の船着場に戻るとホテルへ行くボートに乗らずにファルーカという帆船に乗り
ました。30人くらい乗れそうな大きな帆船や5、6人乗りくらいの小さな帆船も
あります。の〜の達が乗ったのは中型で10人くらい乗れる帆船でした。アデルと
いう人も一緒に乗りました。

「わ〜、気持ちいいねぇ」ファルーカという帆船が帆に風をいっぱい受けて走り出
すとお姉ちゃん達が喜んでいます。繭ママもパパと話しながら嬉しそうに景色を見
ています。の〜のは繭子と座って景色を見ていました。ファルーカは上流に行った
り下流に行ったり、大きな岩の横をすり抜けるように走ります。他のファルーカと
すれ違う時はお互いが手を振ります。

暫くナイル川を走り、キッチナー島という植物園のある島に着きました。アデルと
いう人が入場券を買っている間、パパは船着場近くの水面をじ〜っと見つめていま
す。パパが見つめている辺りに典子姉ちゃんが居るんだと思いました。ママに船着
場の近くだと聞いていたので、パパの手を握り締めての〜のも見つめました。

「お兄ちゃん、行くで」繭ママが呼んで植物園に入るといろんな花が咲いていて、
通路の両側には椰子の木が並木道のように並んでいます。パパや繭ママ、お姉ちゃん
達と写真を撮り、繭子とも一緒に撮りました。
「パパ〜、ちょっと来て〜」の〜のは入り口から椰子の木の本数を数え、パパの手
を引っ張って椰子の木の向こう側に行くと、薄い緑色の洋服を着た典子姉ちゃんが
立っていました。

典子姉ちゃんがパパに微笑むとパパは驚いた顔で典子と呼びました。典子姉ちゃん
は優しく微笑みながら寄って来るとパパの手を握りました。の〜のは昨日、典子姉
ちゃんがここでパパと逢いたいからと聞いていました。典子姉ちゃんとパパが話を
始めたのでその場を離れました。
「の〜の、あの女の人は誰?の〜のパパの知り合い?」繭子が不思議そうに聞きま
した。繭ママは直ぐに典子姉ちゃんと分かったようで繭子の手を握って黙って見て
います。

の〜の、麻衣姉ちゃんが言い掛けての〜のが頷くと、麻衣姉ちゃんも頷いて黙って
見ています。由香里姉ちゃんも気がついたようです。パパがサングラスを外して涙
を拭いているのが分かりました。典子姉ちゃんは時々頷きながら嬉しそうにパパと
お話をしています。

「もう少し待って」アデルという人がそろそろ行きましょうと言いかけると、繭マ
マが少し待ってくれるように言いました。お姉ちゃん達も黙ってパパと典子姉ちゃ
んを見ています。典子姉ちゃんが繭ママに向かって微笑むと繭ママは黙って頷きま
した。パパが戻って来ての〜のの手を握り締めるとありがとうと優しく言いました。

「希、ありがとう。行こうか」パパが言って歩き出すと典子姉ちゃんの姿は消えて
いました。
「お兄ちゃん・・・」繭ママが言い掛けると、パパはの〜のと手を繋いだまま黙っ
て頷きました。出口の方に行くとファルーカが待っていて、再び帆にいっぱいの風
を受けて滑るように走りました。

「の〜の、さっきの人はママのお姉ちゃんの典子さん?」ファルーカの中で由香里
姉ちゃんが聞いての〜のが頷くと、麻衣姉ちゃんと一緒に優しく頷きました。
「そうか、お姉さんと逢えたんやな。の〜のが遥々逢いに来たんやからお姉さんも
嬉しかったんやろな。いい想い出になったな」麻衣姉ちゃんが島を振り返りながら
うと、の〜のも頷きながら島を振り返りました。船着場に戻って来たのは5時半を
過ぎていました。

「晩ご飯は8時からやから今からスークに行ってみようか。帰りが少しくらい遅く
なってもかまへんやろ」ファルーカを降りてパパが言うとみんなが行きた〜いと笑
っています。アデルという人に、これから個人行動でスークに行くから帰ってもら
っていいですよと言うと一緒に行きましょうと笑いました。

川沿いの歩道を歩いているとタクシーや馬車が声を掛けてきます。の〜のが馬車に
乗ってみた〜いと笑うとアデルという人が馬車の御者と話しています。1人の御者
に怒鳴ると次の馬車の御者と話して3台の馬車を集めました。この馬車は2人乗り
でスーク迄1人2ドルだといいました。アデルという人が先頭の馬車の御者席に上
がり、2人ずつ乗るとのんびり走り出しました。

5分くらいで路地の方に入って突き当たりで止まりました。ここには車止めがあっ
てこれ以上は入れないようです。パパが3台の御者に4ドルずつ払っています。車
止めの横を通っていくとアーケードの商店街みたいな所に出ました。
お鍋やヤカン、タライなどの家庭用品からスカーフや絨毯、石の置物などいろんな
お店が並んでいて外国人の観光客も大勢歩いています。

「いや〜、面白そうやん。今まで何度か海外に行ったけど、こんなんは初めてやわ」
由香里姉ちゃんが珍しそうにキョロキョロしています。麻衣姉ちゃんもいろんなお
店を覗きながら楽しそうです。繭子は繭ママと、の〜のはパパと手を繋いで歩きま
した。時々お店の人が社長〜、おし〜んと呼びながら手を振っています。

細いアーケードの通りを抜けると少し広い通りに出ました。道路に屋台を出してい
ろんな物を売っています。Tシャツやカラフルな色のお線香、お花や野菜、赤や黄
色の香辛料のお店や見た事もないような果物などのお店が並んでいて、観光客以外
にも黒いスカーフを被った女の人が買い物をしています。

お線香を売っているお店の前でお線香を焚いていていい匂いがします。パパがお店
の人に話し掛けました。お店の人が何か聞くとまたパパが何か言っています。の〜
のには何を言っているのか分かりません。お姉ちゃん達はお線香の匂いを嗅いでア
ロマセラピーみたいだねって笑っています。お店の人が奥から何やら持って来ると
パパが何か聞いています。お店の人がサーティというのは分かりました。

多分値段を言ったのだ思いました。暫くやりとりしてパパが頷くと、ビニールの袋
に入った石みたいな物を持って来ました。お線香を焚いていた香炉に石みたいな物
を入れると煙が出てきました。パパが匂いを嗅いで頷くとの〜のも嗅いでみました。

この匂いには覚えがあります。去年の夏にパパが焚いていた石みたいなもので、マ
マがお店の方でも焚いていたものです。ビニールの袋に半分くらい貰って20ポン
ド払っていました。お姉ちゃん達もお線香のような物を買っています。由香里姉ち
ゃんが英語で話すと、お店の人も片言の英語で答えていました。何度か値段の言い
合いをして値切って買うと、アデルという人が笑いながら見ていました。

「パパ〜、喉が渇いたね。水は温くなってんねん」の〜のがパパに言うと、繭子も
冷たいもんが飲みたいと繭ママを見ています。パパが周りを見渡し、コーラやスプ
ライトを売っているお店を見つけてみんなで行きました。

パパがお店の人にコーラ何とかと言いました。コーラは分かったけどあとの言葉は
分かりません。お店の人が返事をすると、またパパが言ってお金を出しました。
「希、繭、コーラとスプライト、どっちがいいんや」パパが聞いての〜のと繭子は
スプライトを貰いました。みんなはコーラを貰っています。
「アデルさん、はい」パパから受け取って渡しました。

「のぞみちゃん、アデルって呼んでいいよ」アデルという人にコーラを渡すと、笑
いながら言ってありがとうと飲んでいます。Tシャツ屋さんに寄り、翔やお店のお
姉ちゃん達のお土産に買いました。
繭子やお姉ちゃん達も買っています。シンプルな刺繍のしてあるTシャツをの〜の
が5枚買い、繭子が5枚買うとパパも6枚買いました。お姉ちゃん達の分もいれて
全部で30枚くらい買ったので、パパが値切ってかなり安くなりました。

「そろそろ帰ろうか」パパが時計を見て最初のアーケードの方へ行き、路地を曲が
って車止めの所に戻ると乗って来た馬車がいました。アデルという人が話をして来
る時と同じ値段で船着場まで乗りました。暗くなって7時半くらいになっていたの
で涼しくて気持よかったです。船着場には小さなボートしかなくてそれに乗ると直
ぐに動き出しました。真っ暗なナイル川をライトで照らしながら進んでいます。ま
るで自転車でライトを点けて走っているみたいです。

ボートを操縦している人は毎日走っているから、何処に岩があるのか分かっている
みたいで、巧みに避けながら操縦してホテルの桟橋に着きました。8時を少し過ぎ
ていたのでそのままレストランに行ってご飯にしました。ご飯を食べながらアデル
という人が明日の予定を言いました。明日は9時の飛行機でルクソールという街に
行きます。ホテルを7時くらいに出発するから朝ご飯はそれまでに食べるようにと
言いました。

お部屋に戻ってパパと一緒に風呂に入り、今日はパパのベッドで一緒に寝ました。
「希、今日はありがとう。昨日の晩に逢っていたんやな。典子も喜んでいたわ」パ
パが優しく言うとの〜のも嬉しくなりました。昨夜の典子姉ちゃんとの約束が果た
せたと思いました。



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