「のぞみの日記・冬休み」
第4回
9月中旬の金曜日、パパは早めに帰って来るとシャワーを浴びて簡単に夕食を食べ、 昨日用意していたリュックや登山靴などを車に積みました。 「お兄ちゃん、希、気をつけてね」ママや翔、おばあちゃん、お姉ちゃん達に見送ら れて5時過ぎに家を出ると繭子の家に寄りました。典子姉ちゃんの話を聞いて繭ママ も一緒に行く事にしたそうです。繭パパはまだ帰っていませんでした。尚美姉ちゃん 達は早めに行っているそうです。 「の〜の、ママ〜、の〜のパパ〜、気をつけてね」繭子と菜々美、繭子のおばあちゃ んに見送られて出発しました。何時もはの〜のがパパの横に座るんだけど、繭ママは パパの妹なので繭ママがパパの横に座り、の〜のはパパの後ろに座りました。
中国豊中という所から中国縦貫自動車道路に入り、吹田ジャンクションで名神高速道 路に入ったのは6時半くらいでした。この時間は仕事の車や通勤の車で混んでいたけ どスムーズに走れました。 「お兄ちゃん、典ちゃんがの〜のに言った事ってどういう意味なんやろね。パパに逢 えなくなるかも知れないって、何か予測できん事故でも起こるんやろか?」繭ママが パパに言っているのが聞こえました。 「俺にも意味が分からんねん。けど、俺が一緒やったら大丈夫って言ってたらしいけ どどう意味なんやろなぁ・・・」パパも典子姉ちゃんの言った意味が分からないよう でした。途中、多賀のサービスエリアで休憩して小牧ジャンクションという所で中央 自動車道路に入り、もう一度恵那峡サービスエリアで休憩すると長〜いトンルネを通 りました。の〜のはこんなに長いトンネルは初めてです。
トンネルを出ると繭ママが携帯電話で尚美姉ちゃんと話をしています。暫く走り、駒 ヶ根というインターチェンジで高速道路を降りると山の方に行き、聞いていたホテル に着くと尚美姉ちゃん達が迎えてくれました。時計を見ると10時少し前でした。 「の〜の、お疲れさん、啓兄ちゃん、ありがとう」尚美姉ちゃんと一緒にロビーに入 ると、カメラマンの人やロコの大橋さん達が待っていました。スタジオで撮影する時 は女の人のコーディネーターがいるけど、今回は山の上での撮影という事で女の人は いませんでした。もう1人車の運転手という人もいました。ロコの大橋さんとは何度 か会って顔を知っているけどカメラマンの人は初めてです。尚美姉ちゃんの紹介でパ パと一緒に挨拶してロビー奥の喫茶室に入り、の〜のはジュースで他のみんなはコー ヒーを頼みました。
「高村です。話は村瀬さんと太田さんから聞いています。私も大原さんの意見にはま ったく同感です。最近はロープウェーや山岳道路が出来て簡単に3000メートル級 の山に登れるようになり、何の装備もなしに登る人が増えていますからね。天候がひ と荒れすれば命に係わるなんて考えていないんでしょうね。明日は雨は降らないよう ですが雷雲が発生しそうなんですよ。だから朝一番に上がって昼には降りるようにし た方がいいでしょう」カメラマンの人が地図と天気図をテーブルに広げてパパと話し ています。の〜のも横から見たけどさっぱり分かりませんでした。
「明日は土曜で紅葉のシーズンだから始発のバスは30分早く出るそうです」ロコの 大橋さんが言うと、パパとカメラマンの人はバスの時刻表を確認しています。 「30分早いと5時42分のバスで、ロープウェーの時間を入れても6時半過ぎには 千畳敷に着きそうですね。八丁坂から乗越浄土(のっこしじょうど)まで登って少し休 憩して、駒ケ岳まで子供の足でも2時間半あれば大丈夫でしょう。写真を撮るのに1 時間として帰りは2時間みればいいでしょう。12時半にはロープウェー乗り場まで 戻って来れますね」カメラマンの人が地図を見ながらみんなに言いました。 「何事もなければですけどね。どうもこの気圧の谷が嫌な感じで気になりますね」パ パが天気図を指差しながら言うとカメラマンの人も頷いています。
「尚美、お前は登らんでここで待機しときや。俺と智、高村さんと助手、大橋さんで 登るからな。お前、山なんて登った事がないやろし。何か起きたらお前が全部対処し ぃや」パパが言うと尚美姉ちゃんは頷いています。 「明日の朝食は一番のバスやったら食べてる間がないやろ。おにぎりにしてもらって いるから早めに食べてもいいし、バスで食べてもいいから。11時頃には用意出来る と言ってたわ」尚美姉ちゃんがみんなに説明しています。 「尚美、握り飯は2食分ずつ作ってもらってくれよ」パパが言うと尚美姉ちゃんはび っくりした顔をしたけど、直ぐにフロントに行って話しています。
「パパ〜、2食分ずつってそんなに食べるん?」の〜のもびっくりして聞くと繭ママ が笑いながら話してくれました。 「の〜の、山に登るのはエネルギーをたくさん使うからな。朝ご飯のおにぎりを食べ るのが5時か5時半くらいやから、2回目は9時か10時頃に食べるようにせんとバ テるんやで。あと、歩きながら飴を舐めたりチョコレートを食べたりするんやで。パ パも用意してるよ」の〜のは話を聞いてパパを見ると笑いながら頷いています。お話 が済んでお部屋に行くと、の〜のはパパと2人だけのお部屋です。
繭ママは尚美姉ちゃんと一緒だそうです。パパが明日の用意をしています。の〜のは デイパックで、カッパや水筒、コップなどの他に手袋やタオルが入っています。パパ のリュックは少し大きくて何時も六甲山に行く時のリュックです。パパのリュックに はカッパやガスストーブ(コンロ)、クッカー、大きな水筒の他に2リットルの水が入 っています。ピーナッツやチョコレート、インスタントのコーヒーやココアにスー プ、カロリーメイトとバナナも2本入っていました。 「パパ〜、そんなにいっぱい持って行くん?」お昼には降りてくるって言っていたの にあんまり多いんでびっくりしました。
「うん、山では何があるか分からんからな。これでもまだガサガサやで」パパは笑い ながらリュックに入れると、横のベルトを締めて荷物が動かないようにしています。 の〜のは窓から山の方を見たけど真っ暗で何も見えませんでした。 「さてと、そろそろ寝ようか」パパが寝巻きに着替えるとの〜のもスウェットに着替 えました。子供用の寝巻きはなくて、大人用は大き過ぎるのでスウェットを持ってき ていました。パパが腕時計のアラームをセットすると枕元においています。 「パパ〜、そっちで寝ていい?」の〜のが笑いながらうとパパも笑いながら体をずら しました。 「パパ〜、明日は高〜い山に登るんだね。初めてやから楽しみ〜。でも、典子姉ちゃ んが言った事が心配だよ」の〜のはパパの横に寝て言いました。 「うん、でも心配せんでもいいわ。パパが一緒やったら大丈夫って言ったんやろ?そ れよりゆっくり歩くんやで」パパは優しく言うと抱きしめてくれました。
翌日、5時10分前にパパに起され、顔を洗ってから一緒におにぎりを食べました。 窓の外はぼんやりとした明るさです。おにぎりを食べてから山の服に着替え、ロビー に降りると尚美姉ちゃんと繭ママがいました。 「の〜の、お兄ちゃん、おはよう」繭ママが挨拶すると尚美姉ちゃんもおはようと挨 拶しました。表に出て要らない物を車に積んで登山靴に履き替えました。暫くすると カメラマンの人や助手の人、ロコの大橋さん達が出て来ました。みんな登山の格好で 大っきなリュックを背負っています。繭ママはデイパックです。 「啓兄ちゃん、の〜の、智ちゃん、気をつけてね」尚美姉ちゃんは典子姉ちゃんの言 った事が気になっているのか、少し心配そうな顔をしています。
5分くらい歩いて菅の台という駐車場のバス乗り場に行くと30人くらいが並んでい ました。の〜の達の後からも大勢の人が来て並びました。暫く待ってバスが来たけど 全員が乗れなくて、後ろの方に並んでいた人達は次のバスになるそうです。の〜のと 繭ママは座る事が出来たけど、パパ達は立ったままでバスが動き出しました。 山の中の道をくねくね曲がりながら山奥に入っていきます。30分くらい走って止ま るとロープウェー乗り場です。の〜の達が並んでいると大橋さんがロープウェーの切 符を買って来てみんなに渡しています。少し待ってロープウェーに乗ると直ぐに動き 出しました。ロープウェーは山に向かってどんどん高くなっていきます。高い山が直 ぐ側に見えます。どんどん上がっていくと紅葉している木がいっぱい有ります。大阪 ではまだまだ暑いけどこの辺の山はもう秋色の模様です。
ロープウェーが到着した所は千畳敷ホテルという所です。外に出ると空気がひんやり しています。時計を見ると6時半になっていました。直ぐ側に千畳敷カールという看 板がありました。 「パパ〜、そこで写真撮って〜」の〜のが言うと、パパは笑いながらポケットからデ ジカメを出して撮ってくれました。の〜ののデジカメだけどパパが持ってくれていま す。 「の〜の、トイレに行こうか」繭ママが声を掛け、荷物をパパに預けてトイレに行き ました。朝、起きた時にも行っていたけど、パパやママに何度も言われていた事を思 い出しました。 「希、山ではな、トイレは行きたくなってから行くんやくて、行ける時に行くのんが 基本やで。山の中に入ったらトイレなんてないんやからな」と笑いながら言っていま した。
靴紐をしっかり結ぶとパパがデイパックの調整をしてくれました。パパ達の大っきな リュックはパットの入った腰ベルトが付いているけど、の〜のと繭ママのデイパック は細いベルトです。でも、ベルトが付いているとリュックがフラフラしないから歩き やすいです。他にも肩ベルトにチェストストラップというものが付いていて、胸の前 でストラップを止めると肩ベルトがずれなくて体にピッタリフィットします。みんな も靴紐やリュックを調整すると行きましょうか、と声を掛けて歩き出しました。同じ ロープウェーで上がって来た人達が大勢歩いています。
正面には屏風みたいに崖が立ち塞がっています。 「パパ〜、何処から登るん?」 「ほら、正面に少し低くなってる所があるやろ。あそこに登るんやで。この道を真っ 直ぐ行って崖の下からジグザグに登れるようになってんねん」パパが正面を指差しな がら教えてくれました。少し歩くと八丁坂という看板が有って写真を撮りました。こ の辺から少し傾斜がきつくなりました。パパの言うようにゆっくり歩いたからそれほ ど疲れていません。これからがジグザグの登りになります。登山道は大きな石を並べ て金網で止めてあり、登山道の外側には落ちないようにロープが張ってあります。
ゆっくり歩いているのに汗が出てきました。汗を拭きながら半分くらい登ると少し休 憩しようかとパパが言いました。登っている人の邪魔にならないように端の方で少し 休憩をしました。パパがリュックの肩ベルトに付けていた小さな水筒をくれました。 ひと口飲んで渡すとパパも美味しそうに飲んでいます。キャンディを口に入れて歩き 出しました。ジグザグ、ジグザグと登って行くと平坦な所に着きました。ここが乗越 し浄土(のっこしじょうど)という所だそうです。ここで大勢の人が休憩しています。 の〜のたちもリュックを下ろして休憩しました。
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