今でも一瞬、鏡を見たような感覚に陥る事がある。
自由行動を許されたので、まだ話し込むという羽鳥を残し城を見て回っている最中、肖像画をみつけた。 柔い笑みを浮かべるそれを飛鳥と見る者は少なかろうが、なまじ活力に満ちた彼をよく知っているだけに、絵から受ける無機質さには違和感が強い。
いや、違和感と言うなら。
―――――「ローレシアの王子は、お主にとって信頼の足る相手のようだ」 ―――――――「この世の誰よりも信じてるよ。あ、これ父さんへの不敬罪になる?」 ―――――「なると言えば撤回するか?」 ―――――――「しない。すべて捧げる覚悟だから」
去り際に聞こえた会話。 くだけた親子の会話に偽りはないだろう。
(仕えたい人がいる のじゃなかったのか) 俺に捧げてどうする。口先だけかお前は。 そう心で罵倒するも、彼にこういった覚悟を向けられるのは、初めてではない気がする。 言葉ではなく、行動で示されている気がするのだ。
(言ってただろうが、昔からずっと願ってたって)
「昔、から……」 視線を移すと少し離れたい位置にもう一枚、現状態のちょーこよりはいくらか上といった、幼い彼が描かれている。 にこやかな所は違うが、これもやはりローレシアに飾られた飛鳥の幼き頃と酷似している。 なるほど、双方を知る者達が下賎な噂を流したがるのも無理はない。
もっとも、そんな心無い噂のために、飛鳥は己の顔を見たくなくて城中の鏡という鏡から逃げ回ったりした訳で、この頃にもし会ったとしても同じ顔だと気付かなかったかもしれないが。
鏡は嫌いだった。 そうだった。隠していたつもりでも、指摘されたこともあるのだ。
大笑いして、「君、あんまり鏡とか見ないでしょ?」と。
………ちょっと待て。 (誰に?) 使用人と思い込んでいたが、一国の王子に対してその態度はないだろう。 (誰だ?) 大人ではなかった。同じくらいの身の丈の、子供。 (誰だった?)
「あ………」 もう一度、正面から絵を眺める。
(あれは) あれは、この顔をしていた。
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次、もういっちょう回想入ります。プレイ日記でなく完全にオリジ展開に行ってますねぇ。困ったものだ(他人事のように)。
早く冒険行けって。